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光化学オキシダントの高濃度時の注意点

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
(写真:アフロ)

今日2019年5月24日も、昨日に引き続き、九州地方などの西日本で光化学オキシダント注意報が発令されました。昨日の記事「越境大気汚染の状況変化か?」にて、光化学オキシダントが高濃度になっている原因について解説しましたが、今日は生活上の注意点についてまとめてみます。

光化学オキシダントが高濃度になると?

目や喉の痛みが多くの人に症状として表れます。また、症状が重くなってくると、頭痛や呼吸の異常として表れる場合があります。PM2.5は粒子状の物質なのでマスクの着用は効果的ですが、光化学オキシダントは気体なので、マスクの効果は望めません。基本的には、屋外での活動を控えて、外気が入ってこない状況の室内にいるようにしましょう。

光化学オキシダント注意報とは?

光化学オキシダントは、各地方自治体が、1時間ごとに多くの観測地点で濃度を測定しています。注意報の基準は大気汚染防止法に定められており、観測値が0.12ppm以上となり、その状況が2〜3時間以上継続しそうな場合に、光化学オキシダント注意報が発令されます。ppmは、part per millionの略で、100万個の気体分子のうち1個を占める物質の濃度が1ppmです。

注意報の基準が法的にきちんと定められている弊害もあると考えられます。例えば、測定値が0.119ppmであれば注意報は発令されませんが、0.120ppmであれば発令されます。しかし、この0.001ppmでの健康影響の差はほとんどないでしょう。九州・中国・四国地方では、光化学オキシダントやPM2.5の高濃度の要因は、ほとんどが中国大陸からの流入ですので、高濃度時には広範囲で影響を受けます。したがって、例えば、福岡市東部や中部で光化学オキシダント注意報が発令されていて、西部で発令されていなくても、当然西部でも健康に影響が及ぶ程度の高濃度になっていると認識しなければなりません。つまり、ご自身が住んでいる地域のみの注意報発令状況だけではなく、県全体のどこかで注意報が発令されていれば、注意する必要があります。

明日5月25日は、福岡市内など、多くの小学校で運動会が予定さています。明日も、昨日・今日と比べて気象状況に大きな変化はなく、異常な高温と光化学オキシダントの高濃度が予測されています。保護者の方々や先生方は、いつも以上に子供たちの様子を常時しっかりと観察して、体調を崩していないかを確認してください。

追記:もし可能なのであれば、子供たちのことを考えて、運動会を来週末に延期するという英断をお勧めしたいところです。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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