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“カラダを張る芸”の実験的ステージも 2年後の成功へ向けて高まる機運

武井保之ライター, 編集者
SDGsネタを披露するエルフの荒川、はる(写真提供:チーム関西)

 2025年大阪・関西万博まで2年を切るなか、万博の認知拡大や機運の醸成を目的に大型イベント「Warai Mirai Fes 2023 Road to EXPO2025」(チーム関西主催)が8月25日から27日の3日間、COOL JAPAN PARK OSAKAほか大阪城公園内各所にて開催された。

 同万博のテーマでもあるSDGsの達成を旗印に、お笑い芸人、アイドル、スポーツ選手、文化人らが参加し、文化、エンターテインメント、スポーツに関するステージやワークショップ、シンポジウムなど多彩なプログラムを実施。大勢の家族連れや若い世代を楽しませた。

笑いと音楽のナイトエンターテインメントも

 初日に開催されたのは、音楽、ダンス、お笑いを楽しめる屋外ナイトエンターテインメントショー「Warai Mirai ナイト&ライト~未来へ繋ぐエンターテイメントショー~」。世界中から観客が集まる万博に照準を合わせるのと同時に、本格回復しつつある来日観光客に向けたコンテンツになる。

屋外ナイトエンターテインメントショー「Warai Mirai ナイト&ライト~未来へ繋ぐエンターテイメントショー~」に出演したベリーグッドマン(画像提供:チーム関西)
屋外ナイトエンターテインメントショー「Warai Mirai ナイト&ライト~未来へ繋ぐエンターテイメントショー~」に出演したベリーグッドマン(画像提供:チーム関西)

 大阪城公園の木々に囲まれた大阪城音楽堂で開催され、ダイアン、ニューヨーク、ベリーグッドマン、MASKED SHOWMANらが登場。雷雨のため後半の一部が中止になったものの、音楽、ダンス、ノンバーバルパフォーマンス、お笑いのショーが初日の夜を華やかに彩った。

 2日目のメインは、ウォーキングをしながらSDGsを学べる「SDGsウォーク 2023 in Warai Mirai Fes」。次長課長・河本準一、福本愛菜、マヂカルラブリー、インポッシブル、鬼越トマホーク、ZAZY、エルフ、松浦景子、田津原理音、NMB48の坂田心咲、新澤菜央ら多数の芸人やアイドルが参加。

SDGsと笑いを融合する取り組みは日本だけ

 3キロと5キロのコースが設けられ、参加者と芸人・アイドルがチームになって一緒にウォーキング。コース内では、ニューヨーク、マヂカルラブリー、見取り図ら応援芸人がそれぞれのチェックポイントで待ち受け、参加者への給水を手伝いながら、ポイントカードを配布。真夏日の猛暑のなか、汗をかきながら笑顔で言葉を交わして参加者を激励した。

インポッシブルとSDGsを学びながらウォーキングを楽しむ参加者たち(画像提供:チーム関西)
インポッシブルとSDGsを学びながらウォーキングを楽しむ参加者たち(画像提供:チーム関西)

 インポッシブルと歩きたくて参加したという大阪市在住の女性2人組(30代)は、「ふだんの環境を意識した取り組みは、ゴミの分別やエコバッグを使うことくらい。SDGsの知識を得るいい機会になった」と話す。オープニングの芸人たちが集合したステージで大笑いし、休日のイベントを楽しんでいた様子。

 次長課長・河本は「SDGsとお笑いを融合させて発信しているのは、世界でも日本だけ。国連でも評価されているそうです。日本のお笑いができることをやっていきます」と意気込み、「僕もCO2をできるだけ出さないように今日のステージではスベりました」。SDGsが提唱する地球環境保護へのふだんからの実践を芸人たちも報告した。

高校生6チームのピッチコンテストは寸劇も

 3日目の目玉は、高齢化社会に向けて大阪府が掲げる「10歳若返り」プロジェクトに高校生が取り組むピッチコンテスト「ガチ探究 in Warai Mirai Fes 2023」。健康寿命を延ばし、より豊かな人生を送るために、プロジェクトをどう実現させるか。高校生6チームが課題解決に向けたアイデアを競いあった。

高校生6チームが参加したピッチコンテスト「ガチ探究 in Warai Mirai Fes 2023」(画像提供:チーム関西)
高校生6チームが参加したピッチコンテスト「ガチ探究 in Warai Mirai Fes 2023」(画像提供:チーム関西)

 審査員には、チーム関西の幅広い業種の会員企業から事業責任者や専門家が出揃ったが、プレゼンでは寸劇などその方法も内容も柔軟な発想を持つ高校生ならではのアイデアが次々に飛び出し、彼らの着目点に感心したり、意外性のある発想に驚いたり、興味津々。

 優勝は、兵庫・灘高校の男子高校生チーム・アロッジオによる献血ルームをフィットネスからお笑いまでさまざまな体験ができてくつろげる憩いの場(ヘルスケア・ステーション)にするアイデア。

 総評として審査員からは「どのチームもよく研究していて説得力があった。あとひとひねりすればビジネスになりそう」と各チームの健闘を讃え、それぞれのアイデアの実践に向けたさらなるブラッシュアップを期待した。

 MCの3時のヒロイン・福田麻貴は「6チームとも日本の未来をどうよくしていくか真正面から向き合って考えたすばらしいアイデアだった」と振り返り、お笑いを絡めた事業プランもいくつか出ていたことから「将来の自分の仕事で実現させてほしい。そのときは私たちを起用して」と力を込めた。

歴代チャンピオンのSDGsネタが集結

EXITも登場した「SDGs-1 グランプリ THE BEST SELECTION SDGsでネタ祭り」(画像提供:チーム関西)
EXITも登場した「SDGs-1 グランプリ THE BEST SELECTION SDGsでネタ祭り」(画像提供:チーム関西)

 7年目を迎えた「SDGs-1 グランプリ」は、これまでのベストネタ祭りとして「SDGs-1 グランプリ THE BEST SELECTION SDGsでネタ祭り」を開催。祇園、見取り図、ロングコートダディ、男性ブランコ、ミキ、オズワルド、EXIT、エルフらがSDGsを絡めた選りすぐりの漫才、コント、落語、ダンスまで幅広いネタを披露。

 EXITは「イベントを通じてSDGsに詳しくなった」とし、男性ブランコはSDGsを学ぶ冠番組「おしえてブランコ」(BSよしもと)をスタートしたことを報告。ふだんの生活で実践しているSDGsの取り組みへのトークが弾んだ。

万博に向けた国境を越える笑いへの挑戦

 万博へ向けた取り組みのひとつでもあり、いままさにプロジェクトを立ち上げて日本のお笑いの世界進出に本格的に向き合う吉本興業は、本フェスでも外国人に楽しんでもらえるイベントとして、ふたつのステージを開催した。

「OTOGEI~関西から世界へ」MVPに選ばれたエグスプロージョン(画像提供:チーム関西)
「OTOGEI~関西から世界へ」MVPに選ばれたエグスプロージョン(画像提供:チーム関西)

 ひとつが、人気リズムネタ芸人から新時代を担う次世代の音ネタまで、音、歌、ダンスのジャンルを超えた選ばれし芸人たちが登場した「OTOGEI~関西から世界へ」。レイザーラモンRG、ジョイマン、プラス・マイナス、守谷日和、エグスプロージョン、ZAZY、ラニーノーズ、Everybodyらが出演し、世界に通用する日本のお笑いジャンルのひとつとしての“音ネタ”のポテンシャルを示した。

 そのなかから、MVPに選ばれたのはエグスプロージョン。彼らの知名度を一気に広めた「本能寺の変」と、吉本新喜劇の「乳首ドリル」をダンスエディットで披露した。

 もうひとつは、すでに実験的なステージとして動き出している「TATSUJIN Fantastic Comedy SHOW」。本来は「ことばを使わない公演」として半年前にスタートしたが、この日は「ちょっとだけしゃべっていい」をルールにし、くまだまさし、ハイキングウォーキング、もりやすバンバンビガロ、市川こいくち、ウエスP、ヨネダ2000、チャド・マレーン、バタハリらノンバーバル系のネタを持つ芸人たちが参戦。

「TATSUJIN Fantastic Comedy SHOW」でカラーコーン大道芸を披露したバタハリ(画像提供:チーム関西)
「TATSUJIN Fantastic Comedy SHOW」でカラーコーン大道芸を披露したバタハリ(画像提供:チーム関西)

 それぞれの芸人が、いつものコンビのほか、チームを組んだユニットとしても登場。外国人も詰めかけた会場をあの手この手で楽しませることに挑み、試行錯誤しながらの新時代に向けたエンターテインメントステージとなった。

 ステージ後にヨネダ2000は「最終目標は全人類を笑わせること。今日はそこを目指して一歩前進できました。うんちネタは世界共通です」と自信をにじませ、チャド・マレーンはそんな彼女たちを「世界に媚びずに日本の笑いをぶつけている」と評価した。

楽しいだけではなく学びがあるイベント

 本イベントを主催したチーム関西は、関西経済を盛り上げるべく在阪大手企業・団体が集結した一般社団法人。昨年に続いて2回目となった今回のフェスは、チーム関西各社のリソースを掛け合わせて多彩なプログラムを組むことで、子どもたちを含めた幅広い世代の観客を楽しませるための内容も充実。なかでも、万博へ向けたさまざまな体験ができるチーム関西企業のブースが揃ったイベント会場は、夏休み最後の週末を楽しむ子どもたちの笑顔であふれていた。

夏休み最後の週末に大勢の家族連れなどでにぎわった「Warai Mirai Fes 2023 Road to EXPO2025」(画像提供:チーム関西)
夏休み最後の週末に大勢の家族連れなどでにぎわった「Warai Mirai Fes 2023 Road to EXPO2025」(画像提供:チーム関西)

 万博開催に向けては、会場の施設建設の遅れや予算問題、認知度の低さなどがネガティブなニュースとして流れたりもしている。しかし一方で、こうしたイベントを通して子どもたちが万博とはどういうものかを肌で感じ、期待を膨らませていることが実感できた。

 万博で体験すること、学ぶことは、彼らのその先の人生の糧になり、それが日本の未来につながっていく。本イベントは、ただ楽しいだけではなく、そうした学びが万博にあることを伝えている。そういった熱量のあるイベントだから、参加する子どもたちにも自然に熱が入るのだろう。

 次なる時代への大阪および関西経済の振興、発展への起爆剤として期待されている同万博。その開催を2年後に控えた地元大阪では、経済界の熱量こそ高いものの、まだまだ一般的な関心の高まりはこれからのようだ。

 開幕が間近に迫れば自然に盛り上がっていくことが予想されるが、こうしたイベントで早くから機運を高めていくことが、万博のより大きな成功につながるだろう。チーム関西のこの先の動向に注目していきたい。

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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