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会場不足の解消へ 音楽界の地方創生への新たな取り組み【後編】

武井保之ライター, 編集者
ECSAの川淵三郎代表(左)と中西健夫副代表(提供:ECSAプレスリリース)

 コロナを経て新たなビジネスモデルを構築すべく動き出しているライブ・エンタテインメント業界。アフターコロナに向けて、世の中がオンライン一辺倒からリアルのつながりを求めるようになっていくなか、音楽とスポーツのスタジアム作りにおける地方創生など業界の新たな取り組みを音楽界の重鎮・中西健夫氏に聞いた(前編から続く)。

■スタジアムを核にした街づくりが地方活性化のモデルケースへ

 コロナによって大きな損失を被っているライブ・エンタテインメント業界だが、一方でこれまでになかった異業種とのネットワークが広がった一面もある。中西氏は「プロ野球やJリーグでは感染対策連絡会議が隔週で行われていますが、そこにオブザーバーとして参加したり、映画館や演劇場などと興行界全体として動いたこともあります。今まではあまりなかった接点が急に増えました」と語る。

 また、音楽とスポーツを地域経済の活性化に活用することを目的とした新団体・ECSA(注)を川淵三郎会長とともに2019年に設立し、副会長を務めている中西氏は、コロナ後に向けてその活動をより積極的に推進している。

「ECSAでは音楽界とスポーツ界が連携し、最初の企画構想段階から関わって理想的なスタジアムやアリーナを建設してもらうよう活動をしています」

「昨今では、JリーグやBリーグ、Tリーグなどビジネス化したプロスポーツに音楽は必須です。会場には音楽などエンタテインメントにも対応できるものを作ってほしい。そういったアリーナ・スタジアム建設はいまや街づくりも兼ねています。人が集まるその場所を中心に商業施設などが作られ、街ができていけば、過疎化、高齢化が進む地方都市活性化のひとつのモデルケースになります」

 すでに動き出している事例もある。長崎では、ジャパネットホールディングスが長崎スタジアムシティプロジェクトとして、スタジアムを核としたアリーナ、オフィス、商業施設、ホテルなどの周辺施設を民間主導ですベて構築、運営しようとしている。また、元サッカー日本代表監督の岡田武史氏が会長を務めるFC今治では、サッカースタジアムを核に地域と人をつなぐ文化交流拠点を設ける里山スタジアムプロジェクトが進められている。

「そういう発想をどんどん進化させていくことが今後の地方創生のポイントになり、そこでは音楽とスポーツが重要な要素になってきますので、スタート時点から自治体や地元企業と一緒に動くことが必要だと思います」

■エンタテインメントと街づくりの一体化における留意点

 ぴあと三菱地所は昨年、エンタテインメントと街づくりの一体化を掲げた業務資本提携を発表した。エンタテインメントを核とすることをあれだけ強く打ち出したのは不動産業界で初めてと言っていい。こうした動きはこれから全国に広がっていくことだろう。その一方で中西氏は留意すべき点もあると指摘する。

「エンタテインメントを取り込んだときのコンテンツ作りを同時にやらないといけない。ただ作っただけで使われなければ意味がありません。企画の段階から我々が参加することで使われるスタジアムやアリーナを作り、そこをベースに街づくりを進めていくのが大事です。それは音楽界にとっても課題となっているアリーナ不足の解消につながります」

 コロナを経て、人々の価値観や生き方、働き方が一変していく新たな生活様式において、その動きは大都市圏以外にも広く波及していくに違いない。そのなかで、スポーツ以外にも音楽と一緒に取り組むことで地域と業界それぞれにメリットをもたらす新たな事業展開を模索する。

「これまでは首都圏および大都市で進んでいたのが、コロナがあって状況が変わっていくと思います。そうしたなかでそれぞれのエリアが魅力的なものを作っていかないといけない。音楽とスポーツは高齢化社会に向けても重要なコンテンツになりますが、スポーツ以外でもそうしたものを一緒に作り上げていくことは、いろいろな業種においてCSRにもつながるのではないでしょうか。興味を持っていただけたらぜひ協力してやっていきたいです」

◆【前編】回復への道のり険しいライブ業界 コロナ後に待ち構える大問題

注:一般社団法人Entertainment Committee for STADIUM・ARENAの略称(ECSA/エクサ)。ライブ・エンタテインメント界とスポーツ界がスタジアム・アリーナの建設と運営に関してノウハウを蓄積し、競技力やコンテンツ価値の向上と地域経済の活性化に貢献していくことを目指して2019年3月に設立

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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