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5人に1人が有料オンラインライブ視聴 「配信でも観たい」コロナ禍で高まるエンタメ需要

武井保之ライター, 編集者
ぴあ総研「有料型オンラインライブ市場規模:2020年」

 コロナ禍によるコンサートやイベントの延期や中止、定員制限などで深刻なダメージを受けたライブエンタテイメント業界。2020年の年間市場規模は、前年比8割減の1306億円(音楽ライブは前年比83.1%減の714億円)という低水準となる厳しい1年であったが、そんななかで明るい話題になっていたのが、有料オンラインライブ配信の隆盛だ。

 リアルライブが開催できないなか、続々とメジャーシーンの人気アーティストたちが有料チケット制のオンラインライブを実施。苦境にあったどん底の音楽シーンを盛り上げるとともにその市場規模は急拡大した。ぴあ総研は、2020年の有料型オンラインライブの市場規模が推計448億円に上ると発表している。

 ビフォアコロナにおいてもインディーズシーンのアーティストやさまざまな企画イベントにおけるオンラインライブや、リアルと配信を組み合わせたハイブリッド型のライブ配信は行われていたが、昨年5月頃からの音楽シーンの大勢が無観客ライブ配信へと動き出したその市場規模は、それまでと比較にならないほど大きくなり、短期間で急拡大を遂げている。

 今年に入ってもいまだ従来通りの形でのライブ再開の目途がたっていないなか、有料型オンラインライブはアーティストや音楽関係者にとっての新たなビジネスモデルとしてより進化を遂げ、市場規模はさらに拡大していくことが予想される。

■18~29歳女性では39.8%が視聴経験あり

ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」
ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」

 ぴあ総研では「有料オンラインライブ視聴に関する実態調査」を実施し、急拡大する同市場におけるユーザー動向を明らかにした。それによると、有料型オンラインライブを視聴したことがあるのは全体のおよそ5人に1人にあたる18.8%。視聴経験者の比率は若年層になるほど高くなる傾向があり、なかでも18~29歳女性では39.8%と非情に高い割合で視聴経験があることがわかった。

 18.8%という数字をどう見るかは意見の分かれるところかもしれないが、意外に多いという印象を受ける。平時にライブやコンサートを積極的に楽しんでいる層の多くがオンラインでも参加していると考えられる。

 もちろん彼らがリアルを求めるニーズは変わらないだろう。しかし、それがかなわないなか、オンラインであっても好きなアーティストや音楽に触れたい、つながりたい、活動をサポートしたいという熱い意思の表れであり、この視聴経験者の高い割合からはリアルエンタテインメントへの欲求がより高まっていることが見て取れるのではないだろうか。

 それと同時にエンタテインメントが日常における不可欠な要素になっていることも示されていると言えるだろう。コロナ禍において不要不急とされたエンタテインメントだが、それは誰もが生きていくなかで人生のどこかで必要としているものであるのだ。

■チケット代に費やした金額は「3000~5000円未満」が最多

ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」
ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」

 ぴあ総研の有料型オンラインライブ視聴に関する調査結果の詳細を見ていく。ユーザーがオンラインライブを視聴した分野(ジャンル)では、「音楽」(16.5%)が「ステージ」(5.4%)を大きく上回っている。さらにジャンルを分けると、「音楽」では「邦楽ロック・ポップス」(8.2%)と「アイドル」(5.3%)、「ステージ」では「お笑い」(2.1%)と「国内ミュージカル」(1.7%)が多く、やはりリアルライブでも人気のジャンルの視聴が多くなった。

 1人あたり年間平均視聴回数は、「音楽」で2.7回、「ステージ」で2.5回。「音楽」では、2020年内に「2~3回」が30.5%ともっとも多く、次いで「1回」(28.7%)となった。一方、「ステージ」では、「1回」が31.0%ともっとも多く、次いで「2~3回」(23.2%)。「音楽」の視聴経験者1人あたり年間平均視聴回数は2.7回となり、「ステージ」の2.5回をやや上回る結果となった。

ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」
ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」

 オンラインライブを視聴する際に購入したチケット代の年間合計金額は、「音楽」では「3000~5000円未満」が21.4%ともっとも多く、「1000~3000円未満」(11.4%)、「1000円未満」(11.2%)と続く。「ステージ」でも「3000~5000円未満」が20.6%ともっとも多く、次いで「1000~3000円未満」(13.7%)、「1000円未満」(10.4%)。また、「音楽」の視聴経験者1人あたり年間平均チケット購入額は6936円で、「ステージ」の6539円を上回っている。

ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」
ぴあ総研「オンラインライブ視聴に関する実態調査」

 オンラインライブ視聴経験者のうち、視聴した際に有料アイテムを購入したことがある人は「音楽」で40.0%、「ステージ」で45.3%。「ステージ」の購入者1人あたり年間平均購入額は7642円となり、「音楽」の5739円を上回った。購入額にはばらつきがあり、「500円未満」が「音楽」では7.2%、「ステージ」では6.5%。一方、「1万円以上」が「音楽」で5.4%、「ステージ」で7.2%となる。少数ながら「10万円以上」もあり、チケット代を大幅に上回る金額を有料アイテム購入に費やすコアファンがオンラインライブにおいても存在することがわかった。

【関連リンク】

■2020年の有料型オンラインライブ市場は448億円に急成長 /ぴあ総研

■有料型オンラインライブ、5人に1人が視聴 /ぴあ総研

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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