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コンサドーレ札幌がカーリングに参入。北京五輪を目指しながら、男子カーリングのモデルケースとなるか。

竹田聡一郎スポーツライター
左から相田晃輔、新加入の清水徹郎、阿部晋也、谷田康真、松村雄太

 7月22日、J1第17節を前に北海道コンサドーレ札幌は厚別公園競技場内で記者会見を開き、8月1日にカーリングチームを発足することを正式に発表した。

 阿部晋也、松村雄太、谷田康真、相田晃輔らチーム北海道(4REAL)として2月の日本選手権準優勝を果たしたメンバーに、SC軽井沢クラブの一員として平昌五輪に出場した清水徹郎が加わったチームとなり、新たなスタートを切る。

 サッカー好きで、このオフも何度かスタジアムに足を運んだ清水は「カーリングを通して大好きなサッカーに繋がったのは本当にありがたいし光栄。それに応えるようにしっかり結果で返していきたい。長中期の目標はこれからミーティングをして具体的にしていきますが、僕の意見としては全日本(日本選手権)を獲って、五輪にまた行きたいと思っている」と、抱負を口にした。

 Jクラブとカーリング界の連携は史上初の有意義な試みで、地域性が強く出るカーリングという競技と、「北海道とともに、世界へ」というスローガンを掲げるコンサドーレの思惑が一致した格好だ。新しいステージに向かう記念すべき一歩と言っても大袈裟ではないかもしれない。

 その一方で、「発足」というよりは、チームごと「移管」といった部分も存在する。

 主将の阿部こそ勤務先はコンサドーレ北海道スポーツクラブだが、松村は永山運送(本社・東京都多摩市)、谷田は北海道クボタ(同札幌市)、相田は北見工大の現役大学生、新加入の清水はシズナイロゴス(同札幌市)と、所属先が異なる。それぞれ勤務あるいは通学しながらトレーニングを重ね、合宿や遠征は職場や学校に理解を求めて敢行する。まずはチームが足並みを揃えるために調整が必要だ。

 もちろん、彼らだけではなく、ほとんどのカーリングチームはそうして地道な強化を続けてきた。そういう意味では例年と同じシーズンとも言えるだろう。

 というのも、健闘した平昌五輪の影響で、男子カーリングを取り巻く劇的な環境の変化が期待されたが、露出は増えこそしたものの、それが競技力の向上に直結したかといえば、定かではないからだ。女子の北海道銀行や中部電力、富士急のような実業団や冠スポンサーは未だ名乗りを上げていない。

 むしろ平昌の代表チームだったSC軽井沢クラブの新シーズンの体制が不透明な点、メンバーの所属企業が未定な部分などを鑑みると「20年ぶりの五輪を経て順調に発展」と総括はできないだろう。

 だからこそ、今回のコンサドーレのカーリング参入は大きな意味を持つ。

 主将の阿部もその点に関して「長らくカーリングに携わってきたけれど、また新しいことをやっている実感は強い。(コンサドーレという)大きな看板を背負っていくプレッシャーはあると思うが、それ以上に今は楽しみでもある。プレッシャーを受けてプレーすることでチームが成長するきっかけにしたい。新体制を言い訳にしたくないので、結果にこだわっていきます」、そう決意を語る。

 先日、今季開幕戦となったアドヴィックス杯を準優勝で終えた彼らは、8月2日から開催される「どうぎんカーリングクラシック2018」に出場する。そこがコンサドーレカーリングチームとしての初戦の舞台だ。清水もここからチームのメンバーとしてアイスに乗る。

 今季、一定の結果が出て露出が増えれば、全国に散らばる57のJクラブのモデルケースとなるかもしれない。そのスポンサーや関連企業を合わせれば可能性は飛躍的にアップする。最低4人というカーリングチームは、食指を動かしやすい小編成だ。その側面も有利に働くだろう。

 北京五輪のために。Jリーグとカーリング界の未来のために。重要な試金石となるシーズンが幕を開けた。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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