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第23エンド「世界選手権2日目。オランダに勝ち、スコットランドに敗れ、通算成績2勝1敗で2位タイ」

竹田聡一郎スポーツライター
世界ランク4位スコットランドのスキップ・マードック(中央)。彫りの深いイケメン。

カナダ・エドモントンで開催中の男子カーリング世界選手権「Ford World Men's Curling Championship 2017」は2日目を終えた。

1位は3戦全勝のカナダ。ホームの利を存分に活かし、会場を沸かすパフォーマンスを持続した。特にスキップのグシュー(Brad Gushue)はドロー3のロシア戦で100%のショット率を記録すると、続くドロー5、スウェーデンとの世界ランキング1位2位対決でも93%というハイアベレージを叩き出す。ごく控え目に言わせてもらっても、カーリングモンスターである。今は「まだ当たらなくて良かった」と胸をなで下ろす他ない。

日本代表のSC軽井沢クラブはドロー3でオランダを9-6で退けるも、ドロー5、ソチ五輪銀メダリストの“氷上のベン・アフレック”とも呼ばれる(嘘です。僕が勝手につけた)マードック(David Murdoch)率いるスコットランド代表に、4-7で敗退。通算2勝1敗で2位タイという順位となった。

スコットランド戦では初黒星を喫したが、ハウス付近で大きく曲がる独特のアイスにも「だいぶ慣れてきた」とリードの両角公佑が語り、「予選は11試合あるからそこまで気にしていない。前の2戦よりショットは上がってきた」とセカンドの山口剛史も手応えを口にした通り、敗戦のショックはさほど見受けられない。

それでも彼らが目指すクオリファイ(決勝トーナメント進出)や世界の舞台でのメダル獲得は、このスコットランドのような格上から星を奪わない限り、実現できない。日本とほぼ同格とされる中国やロシアやドイツらにしっかり競り勝ち、上に並ぶノルウェイやアメリカやスイスを倒し、前述のような世界トップのカナダやスウェーデンとも互角の戦いを求められる厳しい道だ。

ラウンドロビンの中盤以降に残された対戦チームについて「より難しい相手ばかりになってくるが、とにかく相手に難しいショットを投げさせ続けないといけない」と清水徹郎は言う。スキップの両角友佑もマードック戦を振り返り「このレベルではやはり石半分のズレや、フリーズが少し開いただけでで付け込まれる。ショットの調子は上がっているのであとはさらに高い精度を求めていく」と列強を警戒しながらも前向きだ。

その両角佑にナイトプラクティスの前に、グシューのパフォーマンスについて質問してみると「すごいですよね。ブライアー(カナダ選手権)はもっとすごかったですけどね」と苦笑いを浮かべた。ああいう変態ショットを見ると対戦するの嫌にならないの? と追求してみる。

「嫌になりますよ。でも楽しみな部分もありますし、(世界で結果を出すには)やらなきゃならないですからね」と彼は再び苦笑いを浮かべつつも、どこか楽しそうだったのが印象的だった。

本日のキーショットはオランダ戦で大量4点を奪った第8エンド、後攻の日本、スキップ両角友の1投目だ。

両角公、山口からしっかりとセットアップに成功し、清水もBプランかもしれないが、チップロールとダブルでチャンスを広げる。対してオランダのスキップJaap VAN DORPは日本の赤石2つをキャッチャーに使うドローをボタンに沈め、強いナンバー1を作ることに成功する。

ここで両角のキーショットなのだが、彼はアウトターンで相手のナンバー1を押すことを選択。シューターでナンバー1を奪回しつつ、キャッチャーになっていた石の一つを出し、相手のナンバー2ストーンを弾きやすいような形を作った。「相手がテイクできない角度で置けました」と両角友も納得のショットだった。

10年後の野比のび太、といった感じのオランダのJaap VAN DORPは新たなナンバー1に黄色をつけ、ナンバー1の赤を挟んで1点を取らせるように食い下がるが、両角にはダブルのアングルが残っていた。「1投目のほうが絶対に難しかった」と2投目でしっかりと相手の黄色だけを弾くダブルを決め、今大会初のビッグエンドに仕上げた。まさに石半分、わずかなアングルの差を制して得た4点となった。このような世界レベルの精緻なショットを以降も期待したい。

大会3日目、日本はスウェーデン、ドイツと2試合を戦う。特に、現地時間4月3日14時(日本時間4日早朝5時)からのドロー7は必見だ。

14年ソチ五輪銀メダル、15年世界王者、16年欧州王者、スウェーデン代表のNiklas Edinに挑む。勝ったら間違いなく頂点を狙えるだろう。試金石となる大一番だ。

NHK-BSでは5時からライブ中継、7時からは録画放送をする模様だ。石半個の精度を意識して、まずは世界2位に挑む、SC軽井沢クラブの戦いをぜひ応援して欲しい。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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