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緊急事態宣言、営業支援の表明は東京だけ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:REX/アフロ)

政府による緊急事態宣言が、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県において1カ月の期間をもって発動されました。以下、NHKからの転載。

安倍首相が緊急事態宣言 7都府県対象 効力5月6日まで

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200407/k10012373011000.html

新型コロナウイルスの感染が都市部で急速に拡大している事態を受けて、安倍総理大臣は、政府の対策本部で、東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を行いました。宣言の効力は来月6日までで、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡が対象となります。

この国が発令した緊急事態宣言にあたって、東京都は都下の特定営業種に対して休業要請を合わせて行うとのこと。4月10日に対象となる営業種リストを発表し、11日から発令とのことであります。以下、日経新聞からの転載。

休業を求める業種や施設「10日に発表」 小池都知事

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57776370X00C20A4CC1000/

政府が緊急事態宣言を発令したことに伴い、東京都の小池百合子知事は7日夜、都庁内で記者会見を開き、都が休業要請をする対象業種について、「10日に発表し、11日から実施したい。感染拡大の状況を鑑みて、スピード感が重要だ」と話した。

この休業要請に関連して、実は東京都は4月3日に行った会見において「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて時短営業や休業している店舗に対し、独自に支援する制度」の検討を発表しておりまして、一応、東京都は各営業者が求めていた「自粛と給付はセットだろ」を形なりにも実現しようとしている様です(彼女の場合、実行力の方が問題なので、どこまでちゃんとやり切るかは今のところ不明ですが)。以下、日経新聞より転載。

東京都、営業縮小のバー・クラブなどに支援金給付へ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57596090S0A400C2000000/

東京都は2日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて時短営業や休業している店舗に対し、独自に支援する制度を創設する方針を固めた。バーやカラオケなどでクラスター(感染者集団)が発生している疑いが強まり、利用自粛の呼び掛けで客数が減少している店舗が相次いでいる。自粛に協力する店舗を経営面から支え、感染防止策の実効性も高める。

ところが驚いたのが、東京都以外の6府県の対応です。あれだけ強く国に対する緊急事態宣言の発令を求めて居たわりには、東京都以外の府県は営業者に対して休業要請すら出さず、一方で消費者サイドには「生活に必要な外出以外」に関して強力な自粛要請をかける模様。以下、朝日新聞からの転載。

宣言の休業要請、6府県見送り

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/212330

新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を受け、対象の7都府県が7日、対応を公表した。埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の各府県は、現段階で民間施設に対し休業要請しない方針を示した。

今回の休業要請の見送りにあたって、神奈川県の黒岩知事に至っては以下の様なコメントを出しているそうでして。。以下、日経新聞より転載。

神奈川県、新型コロナで休業要請せず

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57792980X00C20A4000000/

黒岩知事は「休業要請をするなら、補償とセットでなければなかなか理解をもらえない」と述べた。「この1カ月間は人と接しないことを徹底してもらえれば、特別に要請する必要もなくなるのではないか」との見方も示した。

いや、黒岩知事の仰る「休業要請をするのなら補償とセットでなければ…」はもちろん仰る通りなのですけども、逆に「この1カ月間は人と接しないことを徹底してもらえれば、特別に要請する必要もなくなる」というのは、実質的に域内の営業者に対して何の補償もないまま「兵糧攻め」をするのと同義なんですが?

この事業者への休業要請をしないまま消費者にだけ強力な自粛をかけてゆく(しかも国の権限を借りて)という方針は、大阪も含めて東京以外の緊急事態宣言のかかった他府県は皆、同じだそうでして、東京都民としてはまさか百合子の方がマトモに見えて来る日が来るとは思いもしなかった、というのが感想です。

東京都は、今年の7月に東京都知事選を控えております。我々都民としては、百合子に対して「一旦、口に出した営業支援金はしっかりやれよ。じゃないと次の都知事選はエライことになるぞ」とプレッシャーをかけつつ、東京都の次のアクションを見守りたいところ。

また、それ以外の緊急事態宣言の対象となった府県の営業者様におかれましては、ご愁傷様としか申し上げようがない。。府県側があれだけ明確に営業支援金を否定してしまった現在においては、国側のアクションに期待するしかないのでしょうかね。。(最低でも)1カ月に亘るであろう兵糧攻めに、どれだけの営業者の皆様が耐えきれるのでしょうか。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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