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夜の街が風評被害:「バーやナイトクラブなど接待伴う飲食店」で

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

もうムチャクチャですわ。以下、NHKからの転載。

接待伴う飲食店などで感染か 当面行かないよう都が呼びかけ

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200331/k10012358881000.html

30日夜、小池知事が緊急の記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、カラオケやライブハウスのほか、バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店などに行くことは当面自粛するよう呼びかけました。

昨日の小池東京都知事の記者会見以降、各マスメディアによって「バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店の自粛」という表現があらゆる場所で拡散されております。一方、今回の東京都による会見において、都内のコロナウィルスの拡散状況の調査責任者として発表を行った北海道大の西浦博教授による発表を見ると、コロナウィルスの拡散の場として指摘されているのはあくまで風営法に定められる以下の業種;

1. 風営1号営業(接待等飲食店営業):キャバクラ、ナイトクラブなど

2. 特定遊興飲食店:ダンスクラブ等

3. 深夜酒類提供飲食店:深夜0時に酒類を提供する飲食店(除く:主食を提供する飲食店)

の3つです。一方、都知事も含めて多くのマスメディアが使用している「バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店」という表現ですが、そもそもバーは風営法上、接待を伴う飲食店(接待等飲食店営業)には「含まれない」業種であり、この表現は完全に間違い。かつ、深夜0時以降に酒類を提供しないお店は深夜酒類提供飲食店にも当たらないわけで「バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店」の自粛という表現は、今回東京都で行われた調査によって「感染が広がっている可能性」を指摘された業態を大きく超えて自粛を要請するものとなっています。

もっというのならば、風営法の定める深夜酒類提供飲食店というのは、実はバーテンダーがシェイカーを振る様な、皆さんが「バー」と言われてまず思い浮かべる様な業態から、一方で一般的に「スナック」などと俗称されている業態までが広く含まれています。今、コロナ対策にあたって避けるべきとされている3密(密閉・密集・密接)を前提に考えると、リスクが高いとされているのは前者にあたるいわゆる「バー」というよりは、後者の「スナック」にあたる業態のことを言っていると思うのですが、既出の「バーの中には接待飲食にも深夜酒類提供にもあたらない業態がある」という事実も含めて特定の業態に対する自粛を呼びかける場合にはもっと厳密な発表を行って頂きたい。

今回の東京都による「バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店」への自粛呼びかけは、完全に巻き込まれ事故で風評被害を受ける営業者が大量に生じる結果となっています。一体、どう責任取るつもりなんでしょうかね。ホンマにムチャクチャですわ。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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