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高齢者の為の自粛に苦しみ、高齢者に金をバラまくコロナ対策

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

なんだそれという報道がなされました。以下、日経新聞より転載。

外食・旅行消費に助成 売り上げ急減で重点支援 緊急経済対策

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57075100R20C20A3MM8000/

助成の仕組みは、政府が各店舗や宿泊施設などで割引となるクーポンを発行したり、インターネット上のホテルや飲食店などの予約サービスを使って支払いをした際に、一部をポイントで還元したりする案がある。高齢者はお金と時間に余裕がある人も多く、高齢者に限って通常より高い補助率を設定して、消費を一段と促すことも想定している。

ずっと求めて来た外食・旅行消費への助成が現実的に語られ始めたのは良しとして、なんなんすか、太字部分は。私、twitter側では吠えて来ましたけど、ずっと安倍政権の発するメッセージの有り方に大きな不満があったんですよ。

そもそも、新型コロナの重篤化率というのは基礎疾患を持っている方以外、圧倒的に現役世代では低いワケで、新型コロナによってイタリアで死亡した人の平均年齢は78.5歳、中国国内では50歳以下の感染者の死亡率は1%未満。一方で80歳以上の場合は15%近いなどというデータも示されている(出所)。

要は、子供たちが全国一斉休校をくらって学校に行けなかったのも、大学生たちが卒業式に参加できなかったのも、多くの現役世代が経済活動の自粛で自宅待機状態になって現在、生活不安に陥っているのも、レジャー・観光産業全体が青息吐息ですでに瀕死状態になっているのも、全ては高齢者に新型コロナを移さない為なのであって、我々は彼らを護る為にそれぞれがシンドイ思いをしているわけです。

にも関わらず、世の中では何故か高齢者が「誰の為に社会がこんな状況になっているのか」も理解せずに、「我が物」顔で表をウロついてる。質の悪いゴシップでトイレットペーパーが売切れになった時、買い占めの中心となったのは高齢者でありました。毎朝ヒマに任せて薬局の前で長蛇の列を作りマスクや消毒液を買い占めるのも高齢者で我々現役世代の手元には一切届いてきません。おそらくそういう高齢者は「孫や子供の為に頑張ってるんだ」なんて主張をするのでしょうが、逆だ逆。オマエラ高齢者の為にオマエの孫は学校に行けなくなり、お前の子供は雇い控えを受けて生活困窮してんだ。肝心のオマエラが、のこのこ外をほっつき歩いて積極的にウィルス貰いに行ってどうすんだ。

この様なことが起こっているのは全て現在の政権が発するメッセージが原因です。政府専門家会議は高齢者や基礎疾患のある人の重篤化率が高いことはちゃんと示していて、そういう方々はリスクが高いので不要不急な外出は控えるべきと提言を行っています。一方で、それを受けて政策を決定する側にいる政権からは一切、その様なメッセージが出てこない。

安倍総理はこれまで新型コロナ対策に関して2月29日と3月14日と国民に向けたメッセージを発していますが、高齢者に関して「重篤化するリスクが高い」「こうした皆さんの感染予防に取り組む」とは表明はしても、彼らに対して「自粛」は一切求めない。政権が求めるのは「若者は軽症で済んでも高齢者に移すと重篤化するから」という理由で行う全国一斉休校であったり、勤労世代全体に対する不要不急の外出や、集まりの自粛。結果的に、若年層や勤労世代はそれぞれ不自由な生活を強いられているにも関わらず、なぜか高齢者が平気で表をほっつき歩く、と。昨日もウチのオフィスの近所で見かけましたよ、皆で同じユニフォームを着てガヤガヤと数十人で神社を訪れてる老人集団が。

今、社会全体の経済活動の自粛によって瀕死の状態にある我々レジャー・観光産業からすれば、一体、何のためにみんなが苦しんでるのかがホント判んない状態であります。

で、今回出て来たのが高齢者を優遇するバラまきですよ。確かに、これから新型コロナ被害が明けて「ポスト・コロナ」の経済対策が発動する頃にはちょうど次の総選挙が念頭にチラついてくる頃でしょうよ。とはいってもこの局面で、散々高齢者の為に自粛を強いられ苦しい思いをして来た現役世代を差し置いて、高齢者に向けたバラまきですか?冗談は顔だけにしろって話ですよ。

シルバー・ポリティクスの弊害が叫ばれる様になって久しいですが、高齢者に自粛を呼びかける前に現役世代に自粛を強いる今の新型コロナ対策も、高齢者を優遇したバラまきをしてさも当然かの様に検討が進むポスト・コロナの経済対策も、本当に全てが全てオカシナことになっている。政治がいつまでもこんな事を続けるのなら、現役世代は本気で世代間闘争を前提に主張を始める必要があるのではないかと思えてきます。

何度でも言いますが、今政府が求めているあらゆる社会活動の自粛で困窮するのは、安定した年金収入が保証されている高齢世代ではなく、働かなければ収入が絶たれる現役世代です。別にだからといって、ポスト・コロナの経済対策で現役世代を優遇しろなどという主張をする気は毛頭ないですが、選挙対策とはいえ「高齢者を優遇してバラまく」なんて政策を臆面もなく出してくるのは最早狂ってるとしか言いようがないと言えましょう。

【追記】先ほどtwitter上で #boomerremover というタグが海外でトレンドになっているという情報を頂きました。日本もこんな事を続けてたら、まさに同じようになるでしょう。

※boomerremover: 新型コロナが高齢者世代にのみ重篤化率が高いことを前提に、日本で言う「団塊の世代」(ベビーブーマー)を排除する装置だとして評する表現。日本風に言い換えるのなら「姥捨て」装置とでもいうべきか。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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