Yahoo!ニュース

サンフレ新スタジアム、ふるさと納税寄付額が1億円突破

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、広島で現在計画されている新サッカースタジアム構想への寄付金(※ふるさと納税制度利用)が1億円を突破したようです。以下、サンフレッチェからの公式リリース。

「サッカースタジアム建設寄附募集」の進捗と御礼について(10月28日現在)

https://www.sanfrecce.co.jp/news/hometown/2197

サンフレッチェ広島(以下、当クラブ)は、2024年開業予定の新スタジアムを、J1リーグに相応しいサッカースタジアムとして、最新の機能を備え、お客様に最高の観戦環境を提供するとともに、スタジアムのスタンド下に賑わい機能を導入するなど多機能化・複合化を図り、幅広い世代が楽しめる施設とすることを目指しております。

現在、10月1日(火)から募集しております「ふるさと納税制度」を用いた『サッカースタジアム建設寄附募集』には、10月28日の時点で、2,126件、100,320,595円 のご賛同、お申し出をいただきました。(※1) 短期間にこれほど多くのご寄付が得られましたことは、「まちなかスタジアム」へのご賛同、ご期待の大きさを示すものと、改めて、感謝申し上げます。

広島のサッカースタジアムの移転問題に関しては、その移転先の区域を巡って当初より大きなすったもんだがありましたが、何とか多くのファンが希望する中心市街地近隣の遊休地に計画が落ち着いたのが今年の2月のことでありました。その辺りに関するゴタゴタに関しては以下リンク先あたりを参照。

【広島スタジアム問題】なぜ候補地が中央公園自由・芝生広場になったのかをできる限りわかりやすく解説します

https://note.mu/chottu_lb/n/nff3859301582

ということで、設置場所に関しては何とか良い方向にまとまったワケですが、次なる問題として噴出したのがその建設費を巡る論議。総事業費190億円ともいわれる資金を「誰が」負担するかという問題でありますが、現在までのところ国から補助がなされる社会資本総合交付金toto助成金35億円(訂正:2019/10/29 15:57)にあわせ、大部分は地元財界および個人からの寄付金で調達し、不足分は市債発行で調達するとのこと。但し、この市債調達分もサンフレッチェのクラブチーム自身が市から施設全体の管理者指定を受けることで、施設運用収益の中から生まれる納付金で市債償還分を補填するというスキームで、実質的には税投入はない開発を目指しているそうです。

この様な税投入なきスタジアム建設を実現する為に必要となるのが寄付金でありますが、今回冒頭でご紹介したリリースは、当該プロジェクトへの個人からの寄付金の収集手段として10月冒頭に発表されたばかりの「ふるさと納税制度」を利用した寄付によって、なんとかその総額が1億円を超えましたというニュースです。

今回、新スタジアム建設支援に利用されているふるさと納税制度でありますが、同制度を巡っては全国自治体の間で寄付金の獲得を狙って豪華な返礼品合戦が起こり、様々なトラブルを生じている事でも記憶に新しいです。ふるさと納税制度は、一部界隈においていつの間にか豪華返礼品を目的とした「財テク」みたいな扱いの制度となってしまいましたが、本来は返礼品を目的としたものではなく、特定自治体の活動を応援する制度。そういう意味では今回広島市が行っている様に寄付金の使途を明確に定め、その施策を応援する人々からの寄付を広く内外から募る形式で行われる手法は、最も制度主旨に合致した利用の在り方であるといえましょう。

もっと言うのならば、私自身は世の自治体が行う「経済効果」だとか「観光振興」だとかを謳った施設開発計画に関しては、総事業費の一定比率をふるさと納税で調達することを制度上義務付けるなり、国からの補助金審査の評点にそういった募金の収集状況などを加えても良いくらいだと思うんですよね。各自治体はこの種の施設開発にあたって、しばしば経済効果だの観光振興だのを持ち出し、同時に事業の自己採算性などを謳うワケですが、そういう予測値が当たった試しがありません。そもそも、それらが本当に経済的に意義があり、また自己採算が取れる様な計画なら、まずもって民間企業がお金を出すでしょうし、企業活動としての利益は出ぬとも、本当にそれが行政の「独りよがり」ではない市民から支持を受ける企画であるのなら、寄付金などが一定程度集まって然るべきだと思うのです。

今後、政府におかれましては、ふるさと納税制度による寄付の収集を、この種の各種プロジェクト開発の市場(市民)からの支持を測るための一つの手段として有効に利用して頂きたいなと思う次第であります。

最後に、今回の広島市のスタジアム移転計画に関しては、なんとか1億円と言う大台に乗ったもののまだまだその資金は不足しております。同様の民間寄付金による出資スキームにて2016年に開発された大阪吹田市の吹田スタジアムでは、個人募金で6億2千万円超の資金を集めていますから、本件においても同等の寄付金額を目標としなければなりません。そういう意味では、今回集まった1億円という寄付額は、まだまだ道半ばの「一里塚」程度のものでしかないと言えるでしょう。

もし本投稿の読者の方で、広島のスタジアム建設を支援しても良いとお考えになった方は、以下の記事がふるさと納税による寄付に関して詳しく解説を行っております。ぜひご一読を頂き、ご支援を頂ければ幸いです。

広島の新スタジアム寄附に関するすべてが分かるスペシャルガイドを作ったので読んでください

https://note.mu/chottu_lb/n/n69d54130905d

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事