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欧州全域でガチャ規制論議が幕開け

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

いよいよ始まってしまいました。以下、英国ギャンブリング委員会によるプレスリリースからの転載。

Declaration of gambling regulators on their concerns related to the blurring of lines between gambling and gaming

https://www.gamblingcommission.gov.uk/PDF/International-gaming-and-gambling-declaration-2018.pdf

Our authorities are committed to the objectives of their public policies with regard to consumer protection, prevention of problem gambling and ensuring the safety of underage persons. While each regulator has distinct duties and powers within our own national gambling frameworks, we share a number of common principles including the need for gambling to be regulated to ensure high standards of integrity, fairness and consumer protection, in particular in relation to children.

Given these shared principles, we are increasingly concerned with the risks being posed by the blurring of lines between gambling and other forms of digital entertainment such as video gaming. Concerns in this area have manifested themselves in controversies relating to skin betting, loot boxes, social casino gaming and the use of gambling themed content within video games available to children.

Regulators identify in such emerging gaming products and services similar characteristics to those that led our respective legal frameworks and authorities to provide for the regulation of online gambling.

【邦訳】

ギャンブル規制当局、ギャンブルとゲームの境界線の「曖昧さ」に関する懸念を宣言

我々規制当局は、消費者保護、ギャンブル依存防止および未成年者保護に関する規制方針に従事するものである。各当局は、それぞれの地域におけるギャンブル規制に関する権限と義務を保持しており、我々は「清廉性、公平性、および消費者保護(特に未成年者に対する)の観点からギャンブルは高い基準で統制されなければならない」という点において共通原理を共有している。

そのような共有される原理の元で、我々はギャンブルとビデオゲームに代表されるその他のデジタルエンターテイメントとの境界があいまいになって来ている点に非常に高いリスクを認知している。中でも特に、未成年が接する事の出来るビデオゲーム内においてスキンベッティング、ルートボックス、ソーシャルカジノ、さらにはギャンブルをテーマとしたコンテンツに関連する論争に関心が集まっている。

規制当局は、このように提供されるゲーミング製品やサービスに対して、各規制当局が提供する法規制の枠組みと同様の性質を認知しており、各規制当局はオンラインギャンブルと同様の規制を提供する予定である。

9月17日に発信されたばかりのこの宣言には、ラトビア、チェコ、マン島、フランス、スペイン、マルタ、ジャージー、ジブラルタル、アイルランド、ポルトガル、ノルウェー、オランダ、イギリス、ポーランド、オーストリアの欧州各国のギャンブル規制当局は元より、なぜか米国ワシントン州の規制当局まで加わって行なわれたもの。本問題に関しては今年4月のコラムでも言及したとおり、欧州内でルートボックス規制論を先行して進めていたオランダおよびベルギーの規制当局が「欧州全域の共有規制にまで論議を広げるつもりである」とコメントしていたものであり、彼等の思惑通りの展開になっておる模様です。

【参照】ベルギー当局、「ガチャ」を賭博認定

https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20180426-00084460/

また、各規制当局による本宣言は「あくまで建設的な論議による幕開けに過ぎない」とされており、今後、各当局間で方針共有が為されながら、しかも、そこに欧州各国のみならず米国ワシントン州も加わり各国規制の強化が進められてゆくものと思われます。ゲーム業界にとっては、非常に大きな業界トレンドの変換とならざるを得ないでしょう。

翻って、そもそもルートボックスは我が国においては一般的に「ガチャ」と呼称され、欧米圏に先行する形でゲーム業界のビジネスモデルとして定着し、また未だ我が国は世界でもトップクラスの市場を形成してきました。にもかかわらず、こういう論議が我が国からは起こらず、後発のハズの海外から発信されてくる辺りに我が国のゲーム産業の特殊性といいますか、いわゆる「ガラパゴス」な現状が現れているのかな、とも思うところ。

今のところ我が国には欧州と同様の規制論議は起こってはいませんが、今年7月に可決したIR整備法によって来年度より、各国でいうところの「ギャンブル規制当局」にあたる組織が発足するわけで、今後の論議の展開次第では日本も世界のトレンドに追随する形となっても全く不思議ではない。ゲーム業界にとっては引き続き注視が必要な案件となっておるところです。私自身も適時、続報をお届けするつもりです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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