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違法な海外ネットカジノに国内初摘発

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

2011年には「海外拠点のネットカジノでも国内から接続すれば違法」という政府の公式見解を引き出し、また先月も現在急拡大しているネットカジノのアフィリエイトビジネスに対して「日本社会に忍び寄る、違法ネットカジノ」という警告のエントリ記事を書くなど、これまで国内のネットカジノ推進勢力と散々対決をしてきた私ではありますが、やっとここまで至りました。以下、NHKからの転載。

ネット利用のカジノ 利益10億円余か 2人逮捕

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160215/k10010410071000.html

インターネットを利用したカジノゲームを使って客に賭博をさせていたとして千葉県警察本部は、さいたま市の会社役員ら2人を逮捕し、およそ3年間に10億円余りの利益をあげていたとみて詳しく調べています。2人は容疑を否認しているということです。

逮捕されたのは、さいたま市の会社役員、益田伸二容疑者(50)と埼玉県蓮田市の自称・会社員、島田賢一容疑者(43)の2人です。2人は、去年10月までのおよそ3年間、インターネットを利用したカジノゲームを使って不特定多数の客に賭博をさせていたとして常習賭博の疑いが持たれています。

「海外で運営されているネットカジノに接続させ、賭博をさせた容疑」での摘発というのは、これまでインターネットカフェ形式で店舗を構え、ネットカジノ店の運営を行っていた業者には適用されてきたものでありますが、それが家庭用PCにまで及んだのは今回が初めてのこと。

また、今回の男らの摘発によって、海外を拠点にして日本に向けてサービスを行っているネットカジノ事業者、および国内に設置されたPCから海外カジノへ接続して賭博を行っていたユーザー側の実態に関しても解明が進むことが期待され、違法なネット賭博の撲滅において非常に重要なターニングポイントとなる事案であるといえます。

ただし、先の報道にると今回逮捕された容疑者は「賭け金の決算はしていたが、賭博行為はしていない」などと主張し、あくまで自らは決済代行を行っていただけであるとして、容疑の否認をしているとのこと。裁判においては、彼らが国内で行っていた決済行為が海外から提供されているネットカジノと一体のものとして扱われるのかどうかが争点となることが予想されますが、もしそれが認定されればその先に今度は「アフィリエイト」と称して海外ネットカジノのマーケティング代行をおこなっている者への摘発など様々な類似する業態への摘発へと繋がるものと思われます。

これまでも散々申し上げてきたことではありますが、例え海外にサーバーを置いているネットカジノであっても、国内からそこにアクセスして賭博を行うこと(行わせること)は違法です。これまで「カフェが胴元となり日本国内で客と金銭のやり取りをするといった明らかに違法なアングラカジノは論外として、現在のところ国内で海外のオンラインカジノでゲームをすることに対し、有効な法規制はない」などとして、その違法性を包み隠しながら賭博の推奨を行っている主体がネット上には散見されてきましたが(参照)、そのような主体には近づかないこと。その点は、皆さんにも繰り返しご確認頂きたいところであります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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