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来季のBリーグ・レギュレーション。そのベースは”やってみなければわからない”

青木崇Basketball Writer
将来のレギュレーション変更の可能性を否定しなかった大河チェアマン(写真:アフロスポーツ)

バスケットボール、スポーツに限らず、何事も”やってみなければわからない”という視点は必要である。

Bリーグにとっての1年目は、観客動員数や知名度アップからすれば、成功したと言えよう。改善の必要性を感じる要素が多々あったものの、2年目の来季に向けた競技レギュレーションは、同地区内の対戦がすべて6試合となり、他地区との対戦が6試合増える以外、大きな変化がなかった。大河正明チェアマンは次のように説明する。

「1年ごとに3地区、2地区、1地区にしたりというのはよくないということと、60試合前提で、会場の抑えが昨年の夏くらいですので、Bリーグ始まる前から抑えていることもあり、何年かは同じことを続けたうえで検証しないと、今年1年の全体もまだ見えてきたばかりなので、こんな形で考えています。少しチームからも意見が出たところをマイナーチェンジしています。自地区での戦い、交流戦の試合数を少し変更しています。チャピオンシップ、プレイオフ(B2)の出場クラブが、各地区の順位をベースにまず1位2位が出るということを決めていますので、降格の話も合わせて考えると、地区内の試合数を平等にすることのほうがいいんじゃないか? という意見が多かったということから変更しました。今は同じ地区でも6試合と8試合の対戦と2通りあるんですけど、6試合に統一するということであります。8試合戦っているチームが3チームあるので、その3チーム分の6試合が交流戦のほうに回ることになります。結果的に自地区で30試合、交流戦で30試合ということになります」

多くのファンやメディアが懸念する要素としては、強豪チームが東地区に集結したことだろう。B1初代王者の栃木ブレックス、準優勝の川崎ブレイブサンダース、セミファイナリストのアルバルク東京、オールジャパンを制した千葉ジェッツの5強と言われたうちの4チームが東地区に入った。また、クォーターファイナルに進んだサンロッカーズ渋谷も入ったため、チャンピオンシップに進んだ8チーム中5チームが在籍。地区2位までが自動的にチャンピオンシップ進出となった場合、中地区や西地区の2位よりも断然いい成績ながら、ワイルドカードから漏れる可能性を秘めていることは否定できない。

筆者はチャンピオンシップへ自動的に進出できるのは地区優勝だけに限定し、残りの5枠を成績のいいチーム順に出場権を与えたらいいのでは? と考えを持っていた。その理由は、現時点でのチーム力を考慮すると、競争レベルがあまりにもアンバランスと思えて仕方なかったからである。そんな筆者の問いに対し、8日に行われたメディア・ブリーフィングで大河チェアマンは、「(理事会の)中で議論がなかったわけではないです。先ほども言いましたが、まだ1シーズンをやっただけですし、たまたま琉球だけが5割を切って出たり、千葉が3位で非常に強かったというのがあるのだけど、そこはもう1年様子を見るほうがいいし、逆にそのレギュレーション自体は極端に言うと、今からでも変えられないわけではない。(地区の)組み分けは決めないとカーディングができませんから、今日発表させてもらったわけですけど、その意見はまったくないわけではないという話です」と説明した。

もう1年様子を見るということは、”やってみなければわからない”ということを意味する。15-16シーズンのNBLを振り返ってみれば、千葉は名古屋ダイヤモンドドルフィンズやレバンガ北海道よりも成績が悪かった。しかし、質の高い選手を取れるだけの資金を作るなど、経営努力によってチーム力を上げることに成功したのは事実。このオフにおける移籍市場や外国籍選手の補強次第で、チーム力を上げることは十分可能であり、経営者とチーム作りで重責を担うジェネラル・マネジャーの力が試されるのだ。大河チェアマンによれば、「前のシーズンの成績だけを見て”だからこうだ”ということを言い出したらキリがない」という意見が理事会で多かったのだそうだ。

セミファイナルとクォーターファイナルのゲーム3を5分ハーフで決着つける方式については、「2位チームの扱い、ゲーム3の扱い、来シーズン変えることはほぼないけど決勝の一発勝負の問題、その辺の意識はあります。来シーズンからか再来シーズンからかわからないけど、変える変えないも含めて、この夏までで議論したいと思っています。決勝は我々の露出を拡大して、テレビで映してほしい、要はどこで決勝が来るかわからないと、今の我々の実力だと放送がつきづらいという選択肢であったことは否めない」という答えが返ってきた。すぐにというわけでないにせよ、将来的に変更の可能性があることは否定していない。

東地区を制しての1000万円と、他地区を制しての1000万円の価値が違うと感じるファンの意見については、筆者もすごく理解できる。もし、現時点で実力的に劣ると見られても仕方ない西地区の1位が勝率5割以下という事態になれば、1000万円の賞金を与えることは問題視されて当然。しかし、経営努力、GMの選手を見る目、コーチング次第で、チーム力を上げられる可能性が残されている。だから、”やってみないとわからない”という視点だけは、失わないほうがいいだろう。うまく行かなかったと認識した時、Bリーグとチームのオーナーが変化を恐れない勇気を持っていればいいのだから…。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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