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横浜がB1残留を成し遂げるうえで大きな意味を持っていた月瑠の存在

青木崇Basketball Writer
センターとしては小さくても、フィジカルの強さを武器にタフに戦い続けた月瑠(写真:田村翔/アフロスポーツ)

広島ドラゴンフライズとの入れ替え戦、横浜ビー・コルセアーズの得点源である川村卓也は、富山グラウジーズ戦に続いてシュートがなかなか決まらなかった。しかし、秋田ノーザンハピネッツ戦のブザービーターがなければ、横浜のB1残留はありえなかったし、川村の不調はチーム全体でカバー。ジェイソン・ウォッシュバーンは自身の故障により、離脱中にチームが低迷する要因となってしまったことを悔しさを晴らすかのように、この試合で27点、13リバウンドを記録し、勝利の原動力になった。

ヘッドコーチがシーズン後半で交代するなど、今季の横浜はチーム崩壊の危機に直面していた。それでも最後の入れ替え戦でB1残留を決めることができたのは、ファイ・パプ月瑠のハードワークと人間性を抜きに語れない。200cmという身長はセンターとして小さいが、帰化選手というだけでも横浜にとって重要な存在。決して器用な選手ではないが、ディフェンス、リバウンド、ハッスルプレイでチームに活気を与えられる。

月瑠による得点シーンが増えると、横浜ファンの盛り上がりは熱さを増す。それを象徴するような試合が、昨年11月26日の三遠ネオフェニックス戦。32対28で迎えた3Qの10分間で、インサイドで強烈な存在感を示して11点を奪い、リードを15点に広げる要因となっていた。

「プロになって5年目だけど、本当にインサイドの5番でしか戦えない。スモールフォワードとなかなかマッチアップできないから、そことマッチアップできるように練習もしている。5番で負けないよう一生懸命やってきているけど、足りていない部分もある。大学が日本だけど、それは関係ない。どんな選手が出てきても戦えるようになりたい」

こう語る月瑠は今季、残留プレイオフを含めて17回2ケタのリバウンド数を記録。得点とのダブルダブルも9回を数える。秋田との残留プレイオフ1回戦、ゲーム1で記録した15点は横浜にとって大きな意味があった。富山グラウジーズとの残留プレイオフ2回戦でも、オフェンス・リバウンドだけで9本をゲット。数字に出ないダーティーワークを献身的にやり続けたことが、試合開始早々につけられた15点差を3Q終盤で一度逆転する要因になった。7点、7リバウンドを記録した広島戦後、月瑠はファンへの感謝の意を込めながら、次のようなコメントを残している。

「秋田戦にしても富山戦にしてもそうですけど、本当にここまで大変でした。でも、気持が切れないようみんなが一つになったし、僕もここまでプレイできてうれしいです。60何試合が終わって笑えるチームができ、みんなの顔が幸せだから、この終わり方でよかったかなと思います。本当に横浜(のファン)はすばらしいし、熱いです。どこに行っても応援してくれたし、悪い時でも(ひどいことを)言わないし、それでチームがよくなるチャンスができたと思うし、モチベーションを高めるような雰囲気も作ってくれる。今日も応援に来てくれて、またファンが笑ってくれるのは、自分にとってすごくうれしい」

尺野将太コーチを筆頭に、メンバーの多くがB1残留に「ホッとした」という言葉を残した横浜ビー・コルセアーズ。月瑠も仲間と同じ心境を持っていると同時に、生まれ故郷であるセネガルで1年間会えなかった家族との再会を心待ちにしているという。「お母さんの料理が恋しい?」と話しかけると、笑顔を見せながら大きく頷く。故郷でのリフレッシュ後、月瑠は来季での飛躍を目指し、再びハードワークの日々を過ごすつもりだ。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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