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今はスポーツカーを楽しむラストチャンス? 値頃感のある初代86&BRZに注目!

高根英幸自動車ジャーナリスト
筆者が購入した後期型スバルBRZ。購入後ホイールを交換した。(筆者撮影)

100万円台前半から狙える先代の86&BRZ

半導体やその他部品の供給不足により新車の生産が思うように進まない現在、クルマの価格は全体的に上昇している。そのため、今クルマを手に入れようとしている人は、色々と苦労しているのではないだろうか。

かくいう筆者も先日、1台のクルマを手に入れた。それはスバルBRZ。ただし現行モデルではなく、先代のBRZだ。それというのも、クルマを購入するに至った理由と目指す方向を考えた時、先代のBRZとトヨタ86が、最も相応しいクルマであったからである。

そもそも、クルマを買おうと思ったのは現在乗っているクルマ、フィアット・ムルティプラの車幅が大きくて、普通免許を取得したばかりの長男には運転が難しいことが理由。運転は免許を取得した頃に継続して練習しなければ、上達の速度は低下してしまう。ペーパードライバーになってしまうと、運転の感覚を取り戻すだけでも時間を費やさねばならず、当然上達には時間がかかることになる。

そこで長男の運転の練習とクルマいじり趣味、スポーツドライビングを楽しむためのクルマを購入することにしたのである。といっても初心者マークのドライバーに新車は贅沢過ぎるし、納期だっていつになるやら…。

ということで購入にあたっての条件は3つ

・エンジンはNA(運転の練習のためには、リニアなトルク特性が大事)

・駆動方式は2WD(4WDはクルマが高性能&高安定性すぎて練習用には不向き)

・変速機はMT(運転は難しくて面倒臭いほど、成功した時の達成感が高い!)

さらに長男の方からはZ世代らしく購入後の値落ちが少ないこと、比較的新しいクルマで故障の心配が少ないことを条件に挙げてきた。さらにエンジン排気量についても2L以下で自動車税が高くないことも。最近の若者はしっかりしている…。

本当はFFのスポーティなハッチバックを購入しようかとも思っていたのだが、それで運転に慣れてもすぐに買い換えるようでは無駄遣いになってしまう。しかも長男はレーシングシム(レーシングゲームでよりリアルなシミュレーター)でドイツのニュルブルクリンクやサルテサーキット(ル・マン24時間レースが行われるコース)を走っており、普通免許(AT限定ではなく)も1時限のオーバーもなく卒業して免許を取得してきただけに、初心者ながらそこそこ上手いのだから、すぐにでもステップアップしてしまいそうだ。

そこで200万円の予算で購入できて、十分にコンディションが良く、3つの条件をクリアしつつ、長男が欲しいクルマということでスバルBRZの先代後期モデルに白羽の矢を立てたのである。

トヨタ86&スバルBRZは、トヨタが久しぶりに発売したFRスポーツとして人気を博し、またスバル初のFRスポーツとは思えないほど出来のいいシャーシということもあって、幅広いユーザー層に受け入れられたクルマとなった。

発売は2012年と今から10年前となるが、2020年まで販売されていたことから中古車の価格帯も幅広く、100万前後から探すことができるのは、FRのMTとしては非常に手頃だと言える。

当初は150万円前後の前期モデルの購入を検討していたが、8年から10年落ちのクルマあたりでは外観のヤレも気になるし、走行距離が進んでいるのでちょっと敬遠したくなった。それに2016年以降の後期モデルはかなり大掛かりに手が加えられているため、クルマの完成度がより高い。そこで予算を増やして後期モデルをターゲットとしたのである。

中古車としてはトヨタ86の方がずっとタマ数は多いのだが、バンパーのデザインと足回り(といっても後期モデルでは86との差はほとんどなくなった)が親子の好みとあったのでBRZに絞り込んだ。そしてネットで在庫をチェックして中古車店を何軒か回り、2016年式で走行2.7万kmの個体を購入することに決めたのだった。

購入後に発覚した問題点、だがそれもDIYなら格安で解決

こうして念願のBRZを手に入れたのだが、中古車は手放す時にお金をかけるオーナーなどいないためか、走行距離の割にコンディションが悪い部分も見つかった。それはMTのシフトフィールが渋く、リアのブレーキローターだけやけに摩耗している(これには悪意が感じられる)ことなどだ。

これらは購入時にも試乗などができなかったことと、ギアオイルは6年間交換された形跡がないことや、ノーマルのスチールホイールでは外からブレーキローターが見えなかったことが原因(中古車店での法定点検で何も言われなかったのも不思議だが)だ。

こうした中古車店では有料で保証制度などを設けているため、それに加入することを勧めてくる。それに入っていれば、こうした問題は解消されたのだろうが、筆者は自分でメンテナンスするのが好きなのでメンテナンスパックや保証制度の必要性は感じていなかったのだ。

実際、納車されてすぐに自分でMTのギアオイルとデフオイルを交換し、シフトフィールは劇的に改善された。リアのディスクローターも自分で交換するなら、部品代は2万円程度で収まる。高いメンテナンスパックや保証を選択する必要は無かったと現時点でも思っている。

これから先は、公道のどこを走っても楽しめるクルマへと、このBRZを仕上げていきたい。サーキットで速さを追求するのではないのだから、いたずらにパワーアップさせたり足回りを硬めにする必要はない。

Rカスタマイズパッケージという、必要最低限の装備しか備わっていない軽量なモデルを選んだのだから、それを活かして軽量で上質な乗り味のクルマに仕立てることが、今の環境ではベストな方向性だと思う。

アフターパーツも豊富で安く、内容によってはフリマアプリで中古品をさらに安く手に入れることもできる。最低限の実用性も備わっているから、久しぶりにクルマ趣味を楽しむには、まさに理想的な1台と言えるのだ。

これからじっくりと、長男の運転練習に付き合いながら、BRZをより上質なクルマへと仕立ててみたい。軽自動車でも購入費用200万円が珍しくない今、スポーツカーを手頃な価格で楽しめる環境は、このあたりがそろそろ末期ではないかと思う。

そう、従来型のクルマ趣味を存分に楽しむのは、今がラストチャンス。燃料代高騰も趣味と考えればある程度は受け入れられる。どうせ出ていく出費ならば、楽しめるものに費やしたいではないか。移動ではなく、運転を楽しみたいヒトにとっては、この差は大きい。

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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