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ウクライナ情勢も影響? ガソリン価格高騰の今、ドライバーにできる節約術とは

高根英幸自動車ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

今は本当に21世紀なのだろうか? これだけ世界経済が成熟し情報化社会となって、理性が世界を包み込んでいるハズなのに、戦争が起こってしまった。

湾岸戦争も9.11も、まるで映画を見ているように現実感がなかったけれど、ロシアによるウクライナ侵攻は情報量の多さ、深さが段違いに大きく、凄惨さを伝えてくる。

そんな訳でウクライナ情勢が気になって仕方ないのは筆者も同じなのだが、だからと言って何ができる訳でもなく、一刻も早く終息してくれることを願うしかない。そして我々の生活にもこれから様々な影響が出ることへの覚悟と準備が必要だ。

具体的には原油価格が上昇しているが、これからますます高騰するのは想像に難くない。筆者のような自動車ジャーナリストが提供できるのは、少しでもクルマの維持に関して負担増を抑えるための方法を提供することくらいなので、それをお伝えしたい。

燃費を高める術が盛り込み尽くされた、最近のクルマ

燃料価格がこう高くなると、クルマの燃費を改善して燃料代を節約しようと思うのがドライバーの性というものだ。だが、貴方が乗っているクルマが10年以上前のクルマでも無い限り、乗り方などを工夫しても燃費が大幅に向上するようなことはない。

クルマの使い方や道路環境は、そのオーナーの利用環境によって決まってくる。それが燃費を大きく上下させる要因だから、それを変えることができない以上、燃費も自ずと決まってくるのだ。

それくらい、最近のクルマは燃費を高める工夫が満載されている。例えばEGR(排気ガス再循環装置)は、軽負荷時にもスロットルバルブを大きく開いて吸気抵抗を減らすことにより、エンジンが回り続ける時の損失を軽減してくれる。

ドライバーがアクセルペダルを少ししか踏んでいなくても、クルマの方は空気を吸い込む量を減らしながら(その分、排気ガスを多く吸い込んで)、スロットルバルブを大きく開いて吸気抵抗を減らすことでエンジンの回転抵抗を抑えるのだ。

アクセルペダルの動きに応じて吸気量を調整するそのスロットルバルブもドライバーの意思通りではなく、燃費とスムーズな走りのためにECU(エンジンコントロールユニット=コンピュータ)が開き具合を調整している。

ATもドライバーのアクセルペダルの踏み方に応じて、変速パターンを調整する学習機能が盛り込まれている。これはつまり、そのドライバーの日常的な走り方に合わせてクルマが最適化してくれる、ということだ。

だから「ふんわりアクセル」などの作法も効果がないとは言わないが、昔と比べれば燃費への影響はずっと少なくなっている(それでも発進時はタイヤが一転がりするまでアクセルを踏まない方が、燃費は良くなる)。

ハイブリッド車はそんな工夫の最たるもので、発進時の負荷を効率の良いモーターが担うことでエンジンの無駄な燃料消費を抑えて、減速時には電力として回収して再び発進時に利用するのだ。

ただしエンジン車のアイドリングストップはバッテリーの負担が大きく、寿命を縮めたりするのでクルマの維持費全体を考えると、必ずしも節約やエコには結び付かないこともある。特に直噴エンジンのガソリン車はエンジン始動時にPM2.5を排出するので、燃費への貢献はあるかもしれないが、維持費や環境への影響を考えると微妙なところ。

それにエコドライブも心がけたいところだが、あまりに燃費ばかり気にして走っていると、周囲の環境に対する注意が疎かになってしまう危険性も高まる。交通事故やあおり運転などの交通トラブルが起こってしまったら、燃料を節約しても後悔することになるから気を付けよう。

クルマ自体の燃費向上策を理解して、それをキッチリと利用する、あるいは利用しない選択をすることが、自分に合った節約術になるのだ。

ガソリン代を抑える方法あれこれ

燃料代を削減するには、ガソリン代の単価を下げる工夫も欠かせない。よくある手段が石油元売り系のクレジットカードを作ること。これで毎回会員価格で給油できるので、年間では数千円規模の節約にはなるだろう。

最近はアプリやLINEのお友達登録でガソリンクーポンがもらえるものもある。

車検をガソリンスタンドに任せてガソリンの割引クーポンを手に入れる、という方法もある。さらに最近は、次回車検まで○円引きというサービスを提示するところまで現れている。

会員制スーパー、コストコの会員専用ガソリンスタンドは周囲の他店よりリッターあたり10円は安いようだ。しかしよほど近くに住んでいるか、コストコに月に何度もクルマで買い物に行く人はメリットとなるだろうが、そこまで行くための時間と燃料を考えると、多くの方にとっては節約になるかは微妙なところだ。

トータルでの維持費を節約することで負担を軽減

燃料代が増加するのは避けられないのであれば、他のクルマ関連の出費を減らすことでトータルコストの上昇を抑えることも考えよう。

自動車保険の見直しで保険料を安くすることが出来るユーザーは少なくない。ディーラーや整備工場を介して自動車保険に加入している人は、代理店型の自動車保険に加入しているハズなので、インターネットで加入できる通販型に乗り換えることで保険料を節約することが可能だ。

手続きは自分で行なう必要があるものの、交通事故の際の示談サービスなどは通販型でも代理店型でも変わらないので、こういう機会に見直しをしてみることをお勧めする。

最近のクルマはメンテナンスフリー化が進んでいるが、EVでなければエンジンオイルの定期的な交換は必要だ。ディーラーやカー用品店でもキャンペーンで安くオイル交換してくれるが、Yahoo!ショッピングなどのネット通販でオイルを購入して自分でオイル交換するなら、同じ予算でより高性能なオイルを利用することができる。

さらに高級オイルも20Lのペール缶でまとめ買いすれば大幅に安くなる。オイル交換作業は、ポンプを使って上抜き作業すれば難しくないし、廃油は処理剤に吸わせて燃えるゴミとして回収してもらえばいいし、オイル缶に戻して行きつけのガソリンスタンドや整備工場などに引き取ってもらう手もある。

オイルフィルターの交換も、上抜きでオイルを抜いた後に、フィルター形状に合わせたフィルターレンチで緩めて、新しいフィルターと交換すればいいだけだが、クルマをリフトアップさせないと作業が難しいなら、フィルター交換時のオイル交換だけディーラーやカー用品店に依頼してもいい。

冬季は降雪時に備えてスタッドレスタイヤを用意しているが「ほとんど雪道で使っていない」というのであれば、次のタイヤ交換からはオールシーズンタイヤを利用するのも節約になる。

保管していてもタイヤは劣化していく。オールシーズンタイヤであれば、1年中履いているので使わずに劣化していくことがない。冬季前に溝が浅くなっていれば、早めに新品に履き替えるだけだ。

もちろん氷雪路でのグリップ性能はスタッドレスに敵う訳ではないが、その分ゆっくり用心して走ればいい。スタックする心配は少ないから、冬季の予期せぬ降雪に備えるには十分とも言える性能だ。

そして出来る限りクルマを使わない生活へのシフトも考えるべきだろう。コロナ禍で公共機関を使うことに抵抗があるなら、自転車を使うようにしたり、通販や配送サービスを利用することで、燃料の節約だけでなく移動を限定して効率良く行なうようにしていくことが必要なのだ。

最後に、燃料価格が上昇したことによるメリットもあることをお伝えしよう。それは「街の空気がキレイになった!」ということ。

例えば慶応大学近くの国道1号線から東京タワーを眺めた時、そして浅草から隅田川越しにスカイツリーを眺めた時、これまでと鮮明度が段違いで夜景がクッキリ、鮮やかになった(あくまで筆者の主観である)。これは、副産物とはいえ、道路の交通量が減ると環境は確実に改善されることが証明された印象だった。

中国では大気汚染が問題になることもあるが、日本も特に首都圏は想像以上に大気が汚れている。クルマを使う機会を減らすと、確実に空気はキレイになる。EVが増えていけば、ますますこの傾向は強まっていくだろう。

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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