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昨日より今日の方が危険!? 大雪時に気を付けたいクルマの運転

高根英幸自動車ジャーナリスト
4年ぶりの大雪で首都圏の交通網は大きな影響を受けた。(写真AdobeStock)

新年から、本格的な降雪が首都圏を襲っている。4年ぶりの大雪警報で東京は交通網に大きな影響が出ただけでなく、首都高速ではスリップによる交通事故が多発した。

ほとんど毎年積雪があるような地域のドライバーは冬道の走り方は準備も含めて手慣れたものだろうが、首都圏の都市部に住んでいるのなら、夏タイヤのまま冬を越えている人が大半である。雪が少しでも積もったら、夏タイヤでの走行は危険であることは言うまでもないだろう。

すでにスタッドレスタイヤに履き替えているのであれば、路面に凍結している部分がないか気を付けるだけで、全体的に速度を控えめにして走れば何とかなる。しかし降雪当日に慌てて雪用の滑り止めを用意するのは、ちょっと大変であるし、「次はいつ降るか分からないので余計な出費は控えたい」そう思うドライバーも少なくないハズだ。

そうであるなら、まず出来る限りクルマを使わないことだ。出掛ける用事は先延ばしに出来るのであれば延ばして、自宅に篭っているのが一番だ。正月休み明けで休みを取り難い雰囲気かもしれないが、有休を使えるのなら使うべきだし、リモートワークに切り替えられるなら切り替えよう。

東日本大震災の教訓を活かして食料など備蓄している家庭も多いだろう。この機会に備蓄分を消費して、備蓄品を新しくするのもいい。

雪道に不慣れなドライバーが注意すること

それでも、どうしてもクルマを使わなくてはいけない状況になることもある。しかし昨日よりも危ないのが今日だ。

昨日の雪がシャーベット状になって残り、夜間の気温低下で凍ってしまっているため、運転には細心の注意を払う必要がある。ちょっと駅まで家族を迎えにいくだけだから、と安易に夏タイヤのまま行くのは非常に危険だ。

雪は止んだが路面に残った雪は凍っている首都圏。この撮影の十数分後に中型トラックがスリップして、右側バス停付近の縁石に衝突していた。(筆者撮影)
雪は止んだが路面に残った雪は凍っている首都圏。この撮影の十数分後に中型トラックがスリップして、右側バス停付近の縁石に衝突していた。(筆者撮影)

タイヤチェーンなど滑り止め用品を持っているなら使うべき。しかし、ほとんど舗装面が出ている状況では金属チェーンでは路面を傷めてしまうだけでなく、チェーンの摩耗も早くなってチェーン切れによりボディにダメージが及んでしまうこともあるため、着脱を後回しにして後悔することのないようにしたい。

樹脂製のタイヤチェーンでも金属製のスパイクピンが付いているので、ドライ路面での走行はピンの摩耗や脱落を招く。やはり雪がほとんどなくなった状態と判断出来るなら、迷惑のかからない危険ではない場所にクルマを止めてタイヤチェーンを外すべきだろう。

こういう作業を煩わしいと思うドライバーにはオールシーズンタイヤ、それも氷雪性能が強いスノーフレークマーク入り(冬タイヤ規制でも通行できる)のオールシーズンタイヤを1年中履いておくことをお勧めする。筆者は過去にオールシーズンタイヤを利用していたことがあったが、突然の大雪でもそのまま走行することが出来て、大いに助かったことがある。

氷雪路での性能はスタッドレスタイヤには及ばないが、走行不能に陥ることは少ないし、スピードを控えめにすれば首都圏での雪道にはほぼ対応できる。これとタイヤチェーンを備えれば、1年の天候はほぼカバーできる。年間の走行距離が少ない(年間5000km程度)のであれば、夏タイヤとスタッドレスタイヤを使い分けるより経済的だ。

急な大雪で、とりあえず乗降出来るようにするだけ除雪して、ルーフの上に積もった雪をそのままに走行しているクルマも多いが、この雪載せ車は危険であることも覚えておきたい。何かのきっかけで路面に雪の塊を落とすことで、所々にスリップの原因を作ることになる。

またドライな路面で強くブレーキをかける必要が生じた時に、自車の前方に落下してスリップし、制動距離が伸びてしまうと危険だ。ルーフから雪が滑り落ちてきてワイパーを傷めてしまう可能性もある。雪下ろしなど準備作業も必要なので、いつもより時間に余裕をもって、視界をしっかりと確保してから出発するようにしたい。

エアコンの冷媒が抜けかかっているなど、除湿の能力が低下している場合は、走行中にウインドウが曇ってしまう場合もある。そのまま見える範囲だけで走行を続けるのも危険なので、デフロスター(フロントウインドウに空調を集中させて曇りを除去する)を利用するだけでなく、着込んで暖房を控えめにするなどウインドウの曇りを抑えるようにしたい。

いつものルートが危険なことも。どう選ぶ?

自宅周辺の状態だけで判断して、クルマで出掛けると出先で困ることになり兼ねない。駐車場からクルマを出せれば、後は他のクルマも走っているから大丈夫だろうと考えるのは危険だ。

坂道や日陰、高架など雪が残りやすいところ、残っていると危ないところへ差し掛かってから、この道は走るべきではなかったと気付くのでは遅い。走るルートで橋やアンダーパス、急坂、陸橋、高架などがあれば、出来る限り避けるルートを選ぶべきだ。

交差点を曲がった途端、路面に雪がたくさん残っているようなケースもある。いつも走っている道でも、大雪の翌日は状況が一変していることも珍しくないので、用心して走行することだ。そういった意味ではなるべく交通量が多い道路を選んで走行した方が安全だ。

自分のクルマは4WDだから少々の雪でも大丈夫、と思って出発される方もいるだろうが、4WD車が優れているのは走破性だけだ。つまりあらゆる路面状態でも走り抜ける能力は高いが、ブレーキ性能は2WDと変わらない。FF車だって四輪にブレーキが備わっているのだから、当然だ。

走り方としては速度を控えめにするのと、いつも以上に急のつく操作は避けることだ。車間距離も十分に空けて走行するだけでなく、停車時も車間距離を空けておくこと。万一、後続車から追突された場合、そのまま前走車に追突してしまうと自分も加害者になってしまう危険性があるからだ。

自分のクルマのことだけを考えていればいい訳ではない。歩行者や自転車(積雪時でも自転車に乗る時点で、無謀な人だろう)が転倒して、自車に近付くこともある。

スタッドレスタイヤを履いていても、用心するのは忘れないことだ。路面の滑りやすさは時間や場所でコロコロ変わる。そうした危険も想定して、それでも必要だと判断してクルマを走らせるべきだし、やはりクルマの運転を控え外出もなるべく止めておくべきだろう。

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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