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<ガンバ大阪・定期便83>2024シーズンを牽引する3人のリーダー。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
沖縄キャンプでは昨年とは違うフレッシュな空気が漂った。写真提供/ガンバ大阪

■ポヤトス監督が指名した3人のリーダー。キャプテンは昨年に引き続き、宇佐美貴史。

 2月1日、今シーズンのキャプテンと副キャプテン2名が発表された。彼らを指名したポヤトス監督によれば3人には大きく分けて2つの役割を託したという。

「彼らに任せたいのはロッカールームでのマネージメントと、僕が理想とするサッカー、プレーの植え付けです。国籍、年齢、これまで何をやってきたかに関係なく、みんなの意見をまとめたり、そうした話し合いの場を彼らが中心になって作っていくといった役割をシーズンを通して託していきたいと考えています(ポヤトス監督)」

 キャプテンに指名したのは昨年に引き続き、宇佐美貴史だ。遠藤保仁コーチとも話をし「意見が合致した」そうだ。

「ヤットさん(遠藤コーチ)も僕も、今年も貴史にキャプテンをしてほしい、するべきだと思っています。これまでも話してきたように、貴史(宇佐美)はJリーグの顔ともいえる選手の一人です。その彼がチームの顔としてベストなバージョンを取り戻すことはガンバの進化にもつながると考えています。彼にはすでにその思いを伝えましたし、彼自身もガンバの先頭に立つ責任、自覚をしっかり持っていると確認しています(ポヤトス監督)」

 実際、宇佐美も、始動日の翌日に監督に呼ばれた際に、オフシーズンに洗い出した自身の思いを伝えていたと明かす。

「僕が感じているガンバでプレーする責任、重みは変わらないということを前提に、ダニ(ポヤトス監督)には、仮にキャプテンでなくなれば自分自身にフォーカスしてシーズンを過ごせるというポジティブな面があるということ。逆に引き続きキャプテンを預かるとなれば、昨年の経験をもとに確実にいいキャプテンになれる自信があると伝えました。昨シーズン、キャプテンとしてできた部分、できなかった部分を洗い出していた中で、単純にこういう働きかけをすべきだった、もっとこうすればよかったと思う部分を実行に移せば、それは今年のチームにプラスに働くと思ったからです。その時は別にダニ(ポヤトス監督)から結論を言われたわけではなかったですが、結果的に沖縄キャンプの終盤に今年もキャプテンを任せたいと伝えられました(宇佐美)」

 そういえば、今年の沖縄キャンプでは、選手の顔ぶれが大きく変わった中で、外国籍選手をはじめとするさまざまな選手とコミュニケーションを図る宇佐美の姿が目に留まったが、それも「もっとこうすればよかった」に紐づく働きかけの1つだったのだろうか。

「もちろん、ピッチでの得点やアシストをはじめ、強度を上げる、守備の貢献を増やすといった姿でチームを引っ張るのは大前提ですけど、オン・ザ・ピッチでの仕事は、最終的にメンバーを含めてダニがどう戦うかを決めた上での話でもあるので。僕としてはそれ以前のところで、チームとしてどんな空気を作ればチームがよりスムーズに、いい方向に進んでいけるのかを考えながら働きかけていこうとは思っていました。これはある意味、昨年の『できなかったこと』の1つだと受け止めています。本来なら、キャプテンの僕がもっと音頭をとって二人の副キャプテンと話をする機会を作り、自分の目だけではなく常に3つの視点から見えたことを擦り合わせてチームを動かしていくべきだったのに正直、その部分は全く足りていなかった。チーム全体で見ても選手同士のコミュニケーションは少なかったですしね。それによって例えば、ミスに対するお互いの要求が、いい意味での叱咤激励とか刺激にはならずに、単なる文句になってしまっていることも多かった。だからこそ、そうした働きかけはキャプテンを任されることが決まった中でも続けていきたいし、副キャプテンの二人にも力を貸してもらいながらよりコミュニケーションが増えるような雰囲気づくりを心掛けていきたいです(宇佐美)」

昨年から『7』とキャプテンを担う宇佐美貴史。絶対的エースの覚醒はガンバの進化とイコールだ。
昨年から『7』とキャプテンを担う宇佐美貴史。絶対的エースの覚醒はガンバの進化とイコールだ。

■「いいことも悪いことも自分が引き受ける」と話す宇佐美に遠藤保仁コーチからの金言も。

 その部分に関しては始動から1ヶ月近い時間を過ごす中で手応えを得られているという。

「新しい選手がそれぞれにいい風を吹かせてくれているのもあってチーム内の風通しがすごくいいというか。既存の選手を含めてチーム全体でコミュニケーションがとれているし、昨年とはまた違った雰囲気で一枚岩になって進めている感覚もあります。もちろん、まだ公式戦を戦っていない、シーズン前の今の時期だからということもあるにせよ、この雰囲気が今年のチームカラーとして定着していけば、チームの結果にも直結していくんじゃないかな(宇佐美)」

 一方、昨年から宇佐美が意図的に心掛けてきたことの1つである「チーム内の誰よりも矢面に立つ」ことへの覚悟も、変わらずに持ち合わせている。その重みもまた「たくさんのサポーターの皆さんに期待してもらっている責任」だと言葉を続けた。

「昨年、ヤットさん(遠藤)の7番を受け継いで、キャプテンを担った時から、いいことも悪いことも自分が引き受ける覚悟はあったので。実際、自分が先発でピッチに立っていなくても…仮に0-3で負けている状況で僕がラスト15分間だけ出場してそのまま負けたとしても、サポーターの皆さんからの怒号を一番浴びせられるのは自分であるべきだと思っていましたしね。それを浴びせられる立場にいることが…変な言い方ですけど、僕にしかない武器だとも考えていました。そんなふうにチーム内の誰よりも矢面に立つことでクラブやチーム、チームメイトのメンタリティを守れるのならそれでいい、と。それに、結果が振るわなければ、サポーターの皆さんが僕らに厳しい声をかけるのは当たり前というか、お金を払ってスタジアムに足を運び、応援してくれている彼らには堂々とそれを口にする権利がありますから。SNSなど目に見えない場所で罵詈雑言を浴びせてくる人たちよりよほど健全だし、信頼もしている。もっとも、サポーターの皆さんもそういう声を浴びせたくてスタジアムに足を運んでいるわけではないと思うので。今年は一緒に喜び合える時間を数多く作れるようにしていきたいと思っています(宇佐美)」

 そんな彼の言葉をそのまま遠藤コーチにぶつけてみる。宇佐美をキャプテンに据えることに賛同した彼は今、再びガンバで仕事をする中で宇佐美にどんな期待を寄せるのか。

「僕みたいな性格なら『キャプテンなんてマークを巻いているだけでしょ』って思えるけど、貴史と僕とでは、このクラブとの結びつきや歴史も違うから。小さい頃からガンバで育てられて、海外に行って戻ってきて、という自分を支えてもらった恩も感じているはずですしね。そうしたバックボーンを考えても貴史がこのクラブの現状を変えたい、自分が変えなければいけないと思うのも、サポーターの皆さんが貴史に期待を寄せるのも、ある意味、自然なことだと思う。ただ、昨年の成績とか、彼自身が感じている不甲斐なさみたいなものを一人で背負う必要はないというか。副キャプテンの二人はもちろん、経験豊富なヒガシ(東口順昭)や秋(倉田)もいるわけで、何でもかんでも自分が、と思う必要はない。ピッチでもピッチ外でもそうやって役割を分担できるのが、個人競技ではない『サッカー』の良さでもありますしね。それに、もともとの貴史はヤンチャな奴だから。プレーの時は、その貴史のままプレーすればいいと思うし、ヤンチャな貴史でいることが自然とチームを引っ張る姿にもなっていく気もする。だからこそ、ありのままの姿でキャプテンをしたらいいんじゃないかと思うけど…それもキャプテンを任された貴史が自分で決めればいいこと。僕はただ頑張れーって思っています(笑)(遠藤)」

■副キャプテン・中谷進之介。「それぞれのプレーの特徴や思いを1つにしていく声を」。

 そんな宇佐美を支えるべく、副キャプテンを預かるのは中谷進之介とファン・アラーノだ。沖縄キャンプでは「もう少し選手を観察した上で副キャプテンを決めたい」と話していたポヤトス監督だが、最終的には新加入選手の一人である中谷と、ガンバでのプレーも3シーズン目に突入したアラーノに白羽の矢を立てた。

「シン(中谷)はリーダーシップがあって、ピッチ上でチームに安心感を与えられる選手だと思っています。僕自身、昨年からガンバの近年の流れを変えることを目標の1つにしているからこそ、新加入選手を副キャプテンに据えて新しい風を吹かせたかったという狙いもありました。アラーノに関しては日本でのプレー経験も長いですし、クラブからのリスペクト、チームメイトからのリスペクトを受けている選手じゃないかということも踏まえて選びました(ポヤトス監督)」

 キャプテン・宇佐美も二人の副キャプテンに信頼を寄せる。

「シンはしっかり見たこと、感じたことをしっかり口に出して表現できる選手。逆にアラーノは口に出してというより背中で見せるタイプだと思いますけど、彼なりに近年のガンバに対して感じていることはあるはずだし、それをプレーで表現することをしてくれたら、それはアラーノにとってもチームにとってもよりプラスに働くんじゃないかと思っています。今はまだ役割が決まって間もないので、3人だけで話すことはしていないけど、この先、チームが良くない方向に進みそうになった時こそ、僕一人で動くのではなくしっかりと3人が考えを共有しながら、周りも巻き込んで、軌道修正をするためのアクションを起こしていきたいと思っています(宇佐美)」

新加入選手ながら始動日から存在感を示してきた中谷進之介。特別な思いを胸にプロ14年目に挑む。
新加入選手ながら始動日から存在感を示してきた中谷進之介。特別な思いを胸にプロ14年目に挑む。

 それを受け、中谷も自身が担うべき役割を言葉に変える。前所属の名古屋グランパス時代は対人の強さを武器にした万能型センターバックとして高い評価を得てきた中谷だが、ピッチで示す『リーダーシップ』もまた彼の持ち味だと言えるだろう。ガンバでも始動日から積極的に声を張り上げ、チームを盛り上げる姿が印象に残った。

「オファーをいただいた時からリーダーシップにも期待してもらっていた中で、そこは当たり前にやる必要があると思っていましたが、副キャプテンを任されてより一層、貴史くん(宇佐美)を支えながらチームを引っ張っていける一人になれたらいいなと思っています。特に、このチームに必要だと感じている『喋ること』は意識していきたいし、みんながそこに乗っかってきてくれて自然と声が飛び交うような雰囲気が作れれば理想です(中谷)」

 キャプテンを支える上で、始動からの1ヶ月間を通して宇佐美に対して感じている魅力を踏まえても、だ。

「正直、ガンバにくるまでは、僕の勝手なイメージで宇佐美くんのような天才肌の選手はきっと練習もそんなに好きじゃないのかな、とか、サッカーに対しても真面目じゃないのかなと思っていたんです(笑)。でも、実際は全然そんなことはなく、サッカーが大好きだし、練習にもめちゃめちゃひたむきに向き合うし、あんな天才がその姿を魅せ続けていることにすごく気持ちを動かされた。その姿を見せることこそが、貴史くんの引っ張るということでもあるんじゃないか、とも感じました。そんなふうに宇佐美くんの個性だとか、他の選手のプレーの特徴や思いをチームとして1つにしていくためにも、積極的に声を出していこうと思っています(中谷)」

 もちろん、自分自身もその『声』に説得力を持たせるために、これまで通り真摯にサッカーに向き合うことを自身の軸に据えながら。

「毎日、ひたむきに努力をするとか、やるべきことをやって練習に臨み、100%でサッカーに向き合うということをやり続ける姿があって、初めて自分の声も仲間に届くはずなので。これまで通り、そこに自分自身がしっかりフォーカスしてやっていこうと思っています。また、失点を減らすというミッションを遂行するためには、チームとしていかにコンパクトな陣形を保って試合を進められるかが大事だし、そのためのチーム全体での意思統一は不可欠だと思っています。前の選手は攻撃にいきたいけど、後ろの選手は点を取られたくない、ではなくて、(攻撃に)いくならラインもしっかりあげて全員でいく、いかないなら全員が割り切って下がってリトリートするということをチームとして明確にしながら戦えるか。また、自分たちがボールを持ちながら前進することを、いかに全員が自信を持って表現できるかも大事だと思うので、そのために自分も後ろからしっかりチームをコントロールしていきたいです(中谷)」

 今年の元日には祖父母の住む石川県珠洲市が能登半島地震による甚大な被害を受けたことに心を痛めていた中谷だが、今も変わらず、大阪の地から故郷を慮り、気持ちを寄せている。その思いも含めて、特別なシーズンになりそうだ。

「うちは両親とも珠洲市出身で、祖父母は今も珠洲市に住んでいます。僕自身、サッカーを本格的に始める小学生の頃は夏休みになると必ず兄貴とじいちゃん、ばあちゃん家に泊まりに行っていました。近くの海で遊んだ思い出もめちゃあります。それだけに、本当に心が痛かったというか。命こそ無事でしたが、今もじいちゃん、ばあちゃんは避難所生活が続いていますし、水もまだ通っていないなど、心配なことだらけです。そんなじいちゃん、ばあちゃんに僕ができることといえば、サッカーを頑張っていいニュースを届けることに他ならないと思っているので。じいちゃん、ばあちゃんのためにも、また被災されて苦しんでいる方たちのためにも、少しでも元気になるような明るいニュースを届けられるようにしたいと思っていますし、微力ながら僕自身がこうして発信することで、珠洲市のことを気にかけてもらったり、いろんな方に力を貸していただくきっかけになったら嬉しいです(中谷)」

 新シーズンの目標は、クラブが掲げる『J1リーグ7位以上』は意識しながらも「ユニフォームの星をもう1つ増やすこと」。そのために「チームとしても個人としても、たくさんのトライ&エラーを繰り返すことで、新しいものをどんどん自分に備えながら成長していきたい」と言葉を続けた。

■副キャプテン、ファン・アラーノ。「練習と向き合う姿勢や練習に臨む姿、プレーからも僕の思いを伝えていく」。

 そんな中谷と同様に、アラーノもまたプロキャリアで初めて担う副キャプテンとしての責任を「ガンバが勝つため」の力に変えようとしている。

「僕自身、来日から5シーズン目を迎えることもあり、チームを引っ張る役割を担いたいという気持ちも芽生え始めていたので、テクニカルスタッフやチームメイトが僕を信頼してくれて、副キャプテンを任せていただいたことをすごく嬉しく思っています。ピッチの内外で自分にできることを全て出し切りたいし、キャプテンの貴史だけに責任を背負わせるのではなく、僕もしっかりと責任を感じて、ガンバをよりよい方向に向かわせるためのサポートをしていこうと思っています。貴史には貴史のキャプテン像や引っ張り方があるし、僕やシンにもそれがある中で、お互いのいいところを出し合い、足りないところを補い合いながら仕事をし、それをガンバが勝つための力にしていきたいと思っています(アラーノ)」

昨年チーム最多の7ゴールを挙げ、攻撃を牽引したファン・アラーノ。プロキャリアで初の責任を力に変える。
昨年チーム最多の7ゴールを挙げ、攻撃を牽引したファン・アラーノ。プロキャリアで初の責任を力に変える。

 加入から3シーズン目を迎えたことや、明るく、フレンドリーな人間性も相まって、沖縄キャンプ中も外国籍選手はもちろん日本人選手と片言の日本語でコミュニケーションを図る姿をよく見かけたアラーノ。また、ピッチ外のところでも、目に飛び込んでくる看板のカタカナ文字を繰り返し音読し、その意味を覚えるなど、日本語学習にも意欲を見せる。

「ガンバにきてからは特に日本人選手との距離を縮めるために、またピッチでのプレーに役立てるために、日本語の勉強を続けています。日本に住むブラジル人が作った日本語を学ぶキットのようなものを購入したので、そのDVDをお手本にしながらまずはひらがなとカタカナを覚えている最中です。おかげで、話せる単語は増えてきたけど、それを自分の言葉として伝えるのはまだまだ時間がかかりそうです。耳で聞いた言葉をそのまま話すことはできても、その言葉の意味がすぐに出てこないことも多いですしね。ただ、クラブハウスに来ていろんな日本人選手と話せばそれが自分の学びにもなるし、コミュニケーションにもなるので、できる限り『話す』ことは続けていこうと思っています。一方、サッカーでの戦術的な深い話になれば、まだまだ通訳の力を借りないといけないのも事実なので、練習と向き合う姿勢や練習に臨む姿、プレーからも僕の思いを伝えられるようにしていきたいです(アラーノ)」

 もちろん、それもガンバが勝つために、だ。

「新加入選手が数多く加わってくれた中で、昨年とは全く違う雰囲気が漂っていますし、チーム全体にすごくポジティブな空気を感じます。またダニ(ポヤトス監督)が昨年の良かった部分を継続しながら新たなゲームプランのアイデアを落とし込んでくれている中で、課題とされた守備面でも個人の意識、チームとしての意識をより強めることで少しずつ変化が表れてきています。特に、ダニから繰り返し求められている攻守の切り替え、背後のアクションはより意識して取り組んでいるところですが、新しく加入してくれた選手のクオリティも合わさってとてもいい準備を続けられています。当たり前のことながら、僕たちがリーグの上位で戦うためには、昨年以上の切り替えの速さ、球際の強さ、インテンシティを求められるということを一人一人が感じて、トレーニングに取り組めているのもすごくポジティブな要素です。そうした個人の力をチームとして表現できた時にはよりいい攻撃ができるはずなので、この先も日を追うごとにその部分が鋭さを増していけるようにしていきたいです(アラーノ)」

 そんな3人のリーダーがそれぞれに抱く覚悟に牽引されて戦うガンバの2024シーズン。この先、彼らがチームに宿していくたくさんの熱は、きっと勝利につながる道筋になる。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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