Yahoo!ニュース

<ガンバ大阪・定期便66>半田陸が輝けば、ガンバも輝く。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
2試合連続ゴールはサッカー人生初だと振り返った半田陸。 写真提供/ガンバ大阪

 いつも真っ直ぐに自身と向き合いながら、課題や反省を変化につなげてきた半田陸だけに、ルヴァンカップ6節・セレッソ大阪戦後は、奪った得点以上に気になっていることがあるのではないだろうか。そんな思いで、試合後のミックスゾーンでは敢えて、守備についての質問から投げかけてみる。相手の左ウイング、カピシャーバとのマッチアップについて、だ。

 今シーズン、先発出場を続ける中で、再三にわたって右サイドを制圧してきた半田だが、この日は珍しく、カピシャーバへの対応に手こずるシーンが多かった。

「左利きの左ウイングの選手とマッチアップすることがほとんどなかったので、難しさは感じました。もちろん、カピシャーバ選手がすごくいい選手だったというのもありましたけど、クロスを上げられてしまうシーンも多かった。左利きの選手だと(対峙する相手を)交わしてすぐにクロスボールを選択しやすいのもあって、実際に今日はそれで多くやられてしまった感じです。もっと距離を詰めるべきだったと思うし、それ以前に、もっと縦を切る守備だとか、そこまで運ばせないようにするなどの対応は必要だったのかなと思っています。僕はやっぱり、守備の選手なので得点を決めたこと以上に、守備で後手に回ってしまった悔しさがあります」

 それでも直近のJ1リーグ17節・FC東京戦で示した驚異的な走力からのゴールに象徴されるように、半田はいま、ガンバに不可欠な存在として輝きを放ち続けている。J1リーグのステージのスピード感、強度にも慣れ、掴めてきた感覚も多いと話す。

「ガンバというチームや、J1リーグの戦いに慣れたのもあると思うんですけど、1対1の守備のところは日に日に自信を持って向き合えるようになっているし、ビルドアップのところでも相手の剥がし方も含めて自分のリズムみたいなものも見出せるようになってきた。局面でも相手とより近い距離にポジションを取る中で、そこから相手を受けてしまうのではなくて足を伸ばしてボールを奪うとか、状況を逆転させるみたいなことも去年以上にできる回数が増えてきたのかなとも思います。また、チームとしても走ることや球際、セカンドボールを含めた根本的なところでしっかり戦えるようになってきたことで結果につながり出したのかなと。それは秋くん(倉田)の存在がすごく大きいというか。10番を背負って、めちゃめちゃサッカーも巧い秋くんが、あれだけ守備でも走って、スライディングをして、って戦っている姿を見せてくれると、後ろの選手もそれに応えなきゃと思うし、みんなもやらなきゃという気持ちにさせられる。それはチームとして続けていかなければいけないところだと思っています」

 加えて、状況や試合展開を見ながら、その時々で必要なプレーを的確に選択し、実行していけるのも半田の魅力だろう。いや、シーズン序盤は、どちらかというと持ち味である走力や局面を打開する力が思うように発揮できず、チームとしての役割と自身の持ち味をいかにリンクすべきかを模索していた姿を思い出す。新しいチームに移籍したばかり、初めてのJ1リーグ、新しい監督のもとでの新しいサッカーということはもとより、先発に名を連ねた選手では年齢的にも最年少となれば当然だろう。

 だが、チームとして結果が出ない中でポヤトス監督が理想とするサッカーをいい意味で裏切り、持ち味を発揮することに最初にチャレンジしたのも半田だったと記憶している。J1リーグ4節・サンフレッチェ広島戦後に聞いた言葉が印象に残っている。この試合で2試合ぶりに先発を預かった彼は回数こそ多くはなかったものの、それまでの3試合以上に、前線へのチャレンジを果敢に続けた。

「監督の理想とするサッカーとか自分に求められるポジションの役割は頭に入れた上で、どこかでそれを裏切る必要はすごく感じていて。というのも試合によって相手チームの出方、決まり事も変わる中で、言われたことをやっているだけでは相手は崩せないということが明らかになってきたというか…もちろん、全員が最初から崩してしまったら元も子もないので、自由にということでは決してないですけど、どこかで誰かがそういうプレーをしないと相手も怖くないし、それが結果につながるのならダニ(ポヤトス監督)も何も言わないはずなので。っていうか、それをダニのサッカーをこのチームでは一番理解している将太くん(福岡)に言われて気づいたというか。広島戦も前半はうまくいかない時間が多くて、僕も相当フラストレーションが溜まっていたんですけど、その時に控えメンバーだった将太くんが声をかけてくれて。お前の良さはなんだ? と言ってくれたし、試合中もずっと声を掛けてくれた。サイドバックはどうしてもベンチが近い分、監督からの指示もダイレクトに入ってくるんですけど、それは聞きながら、でも、時にはそれをいい意味で聞き流して思うプレーを選択できるようになってきたのも(笑)、将太くんのアドバイスがすごく大きかったです。また、その中で見えてきたものもあったので、あとはそれを3〜4人のユニットで共有しながら連携を深めていけば、得点も増えていくのかなと思っています」

 その時期、日本代表に初選出された事実も彼の背中を押したのかもしれないが、その後も半田はポジティブなチャレンジを続けながら、右サイドバックに定着。仲間のサポートにも助けられ、かつ、半田自身もJ1リーグでの試合経験を力にしながら、不動のポジションを確立していく。

 加えて昨今は、効果的な前線への攻め上がりからフィニッシュに絡むシーンもより多くなってきたとなればーー。しかも、冒頭にも書いた通り、常に現状に甘んじず、自身の課題と向き合い、変化につなげてきた姿を思えば、この先の更なる成長を疑う余地はないだろう。

打点の高いヘッドでシーズン2点目を叩き込んだ。写真提供/ガンバ大阪
打点の高いヘッドでシーズン2点目を叩き込んだ。写真提供/ガンバ大阪

 ちなみに、大阪ダービーの2日前に話を聞いた際は、FC東京戦後に、古巣であるモンテディオ山形のコーチングスタッフや仲間からも連絡をもらい「嬉しかった」と笑顔を見せていた半田。

「これまでも惜しいシュートも何回かあった中で、ずっと点が欲しかったし、やっと獲れてホッとしています。長い距離を走って決めたのも僕らしいゴールだったな、と。今後も…サイドバックなので1試合に一回あるかないかのシュートチャンスですけど、もっと狙いに行きたいし、1つ獲れたことはきっかけになるかもしれない。セレッソ戦でも獲れたらいいですけど、それよりもまず絶対に勝たなければいけない戦いですし、勝つか負けるかでその後のリーグ戦にもすごく影響が出るカードだと思うので内容とか自分の結果より、とにかく勝たなければいけないと思っています」

 その思いを体現したセレッソ戦後、守備の話題に続き、37分のゴールシーンについても話を聞くと「実は2試合連続ゴールを決めたのはサッカー人生で初めて」とした上で、予感はあったと振り返った。

「FC東京戦で獲れたことで(ボールが)来そうな感じはありました。東京戦では流れの中からでしたけど、そういう感覚の時はセットプレーを含めて自分にボールが集まってくるんだな、と。悠樹くん(山本)がいいボールを蹴ってくれたので、自分が逸らしてゴールに入ればいいし、直接入らなくてもフォアの選手が触れれば、ってことを狙っていて、いい感覚でボールを当てられた。ゴールでチームを勝利に導けたのはすごく嬉しいです。何より大阪ダービーに勝ったのはチームにとって大きな意味があるはずだし、リーグ戦の勢いにもつながる勝利になったんじゃないかと思います」

 半田が輝けば、ガンバも輝く。勇気を持ってチャレンジを続けることで見出したそんな方程式は、J1リーグ後半戦もきっと彼を、ガンバを加速させる。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

高村美砂の最近の記事