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ガンバ大阪MF倉田秋が第2回『倉田秋カップ』を開催! 生まれ育った大阪府高槻市にサッカー少年が集結。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
U-12の覇者、フィオーレFCには『くくる』のたこ焼きも贈られた。(筆者撮影)

 倉田秋が生まれ育った場所、大阪府高槻市。3歳でサッカーを始めた彼は小学生になると地元のチーム、のびてゆくFCやFCファルコンに所属し、サッカーの面白さにのめり込んだ。

「子供の頃は、練習以上に他のチームの選手と真剣勝負で戦う『大会』が大好きでした。他のチームの同世代と対戦すれば自分のレベルもわかるから。単に練習より、試合をしている方がいろんなことを試せて楽しかったのもあるけど(笑)」

 そんな思い出から「楽しくボールを蹴るだけのサッカー教室ではなく、真剣勝負の大会を開きたい」と、昨年、30歳を機に自身で企画し、スタートさせたのが『倉田秋カップ』だ。

 第1回目となる昨年は、吹田市立総合運動場にて開催。ガンバ大阪のホームタウンで活動するクラブチームを中心にU-9カテゴリーが6チーム、U-12カテゴリーが6チーム参加してフットサル形式で行われたが、今回は倉田の地元、高槻市で8人制のサッカー大会として開催することに。1月5日、高槻市青少年運動広場には、倉田の古巣、のびてゆくFCやFCファルコンをはじめ、各カテゴリー8チームずつ、約250名のサッカー少年が集結し、熱戦を繰り広げた。

「地元の高槻市で開催するのが夢だったので実現できてよかった。大会を通して、あるいは子供たちとの触れ合いを通して『これを伝えたい』と明確に言葉にできるようなものは何もないけど、少しでもいいから子供たちの記憶に残ればいいなって思います。というのも、僕も小さかった時に一度だけ、ガンバ大阪の練習場にプロサッカー選手の練習を見に行ったことがあったんです。(パトリック)エムボマがいたから……たぶん9歳くらいだったはず。その時に『ここでプレーしたい!』って思ったんですけど、そのことを未だに覚えているように、今日の1日が参加してくれた子供たちにとって、大人になっても忘れないくらいの楽しい時間になったら嬉しいです。…と言いながら、参加してくれた子供たちがほんまに元気すぎて、僕の方がパワーをもらったくらいですけど(笑)。いい1日になりました」

 大会後には観戦に訪れていた父兄の皆さんにも呼びかけて『ファンサッカー』を実施。今回、倉田の思いに賛同し、特別ゲストとして参加したガンバ大阪のDF高尾瑠やサポートスタッフ、父兄やコーチらで結成した『チーム倉田』とU-12の優勝チームとのエキジビションマッチも行われ、グラウンドにいる全員でサッカーを楽しんだ。

 また、締めくくりの表彰式では、各カテゴリーの優勝チーム(U-9/桜井谷東サッカークラブ U-12/フィオーレ大阪吹田FC)の表彰のほか、倉田が選んだ『倉田賞』や高尾による『高尾賞』、また『大会MVP』が発表され、本人が着用したユニフォームやスパイクにその場でサインが書き入れられて手渡された。

「倉田選手は優しくて、シュートが強くてうまかったです。僕の好きなチームは、ガンバかリバプールFC。将来は日本代表のFWになりたいです(U-9MVP/樋口颯亮くん/桜井谷東)」

「倉田選手はうまくて、速かったし、縦の突破がすごいと思いました。今回初めて倉田秋カップに参加したけど、とても楽しかったです。将来は僕もプロのサッカー選手になりたいと思っています(U-12 MVP/城山宗士くん/フィオーレ)」

 そんな風に喜びを口にした子供たちの姿を見て、嬉しそうな表情を浮かべたのは倉田と高尾だ。エキシビジョンマッチでは約30分間、ぶっ通して試合を行ったことから、全プログラムを終えて控え室に戻った際には「疲れた〜!」という声も聞かれたが、寒空の下、元気いっぱいでボールを追いかける子供たちからたくさんのパワーを受け取ったようだ。

「子供たちが小さな体で、必死になってボールを追いかけている姿を見て、サッカーっていいなって思ったし、改めて今シーズンも頑張ろう! という気持ちにさせられた。もともと、現役中にこうした大会をしようと思った理由の1つに、子供たちに『あの人だれ?』って言われないように…僕の名前を知ってもらっているうちにやりたいっていうのもありましたが狙い通り、たくさんの子供たちが喜んでくれてよかったです(笑)。瑠も、オフ中なのに声をかけたら二つ返事で参加してくれて感謝しています(倉田)」

「チームを離れてこうしたイベントに個人で参加するのは初めてでしたが、すごく楽しかったです。ほぼ初蹴りと言ってもいいような状態だったので、自分に不安を感じていましたが(笑)、楽しくサッカーができて、元気をもらえて、新シーズンのいい幕開けになりました(高尾)」

 なお、この『倉田秋カップ』は第1回目の開催時から「1つの『大会』として長く、皆さんに愛されるものにしていきたい」という本人の意向を受け、協賛企業を募り、運営。収益金の一部を動物保護施設『公益財団法人日本アニマルトラスト』に寄付している。これも、愛犬と暮らす倉田らしい『想い』によるものだ。

「『公益財団法人日本アニマルトラスト』さんは大阪府豊能郡能勢町にある動物の孤児院『ハッピーハウス』(https://happyhouse.or.jp)を拠点に行き場をなくした動物のケアや治療などを行い、動物たちに新しい家を見つけるための活動をされています。その存在をインターネットで知った時は、本当に衝撃で、言葉を失うほどでした。世の中には家をなくして悲しい想いをしている動物がたくさんいます。その動物たちが少しでも幸せになるように、また温かい家を見つけられるように願っています」

 企画の1つ1つに倉田自身が『想い』を注ぎ、形にした『倉田秋カップ』。この日、あちこちで目にした子供たちの笑顔は、その『想い』が届いた証でもある。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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