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<ガンバ大阪U-23>ホームでの大阪ダービーは、中村仁郎のゴールで先制するも逆転負け。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

前回、アウェイの地で戦ったJ3リーグの『大阪ダービー』を4−1で快勝し、迎えたホーム戦。スコアレスで迎えた後半に勝負が持ち込まれる。先制したのはそのアウェイ戦でJ3デビューを飾っていたMF中村仁郎。縦パスに反応してエリア内で相手をかわし右足でゴールを突き刺す。だが、その後、相手の勢いが増すにつれて防戦一方の展開に。83分に相手のシュートがDFにあたってアンラッキーな形で同点ゴールを許すとアディショナルタイムにも直接FKをゴールにおさめられ1−2と逆転負けを喫した。試合後のガンバ大阪U-23監督、選手のコメントをお届けする。

●森下仁志U-23監督

今日も本当にいつも以上のたくさんの方に来ていただいて本当に感謝しています。試合に関しては、ハーフタイムにも選手に言いましたが、1試合を通して、前線のアクションの強さがこのグループの中だと、まだまだ足りないかなと。こういう試合になると1つポイントを作って相手と入れ替わったりとか、1点目はいいボールが入って典型的な形でしたが、ああいうシーンをもっともっと増やしていかないといけないなと。1点取ってから、どうしても1点を守りたい、と。その中でもいい守備からマイボールになって、チャンスになりそうな気配はありましたけど、そこでロストしてしまう。あとは、相手の背後にボールが入りそうな雰囲気のところで、一つ躊躇して横パスになって、相手がまた戻る。やっぱり自分たちがやろうとしているサッカーからすると、そこの質と強さをもっともっと上げていかないといけない。相手はサブにも藤尾翔太くんなり、安藤瑞季くんがいて、前線にオーバーエイジもいて、プラン通りFWの4人で圧をかけてきたと思いますけど、うちは編成上、前線のFWがいないので、今いるメンバーがより強くなるためにもっともっと、プレーする勇気のところから植えつけていかないといけないかなと思います。」

ー先制してから徐々に相手の勢いに押し込まれる時間が増えた。あの時間帯の戦い方をどう評価されますか。

戦い方というか、前線の選手がいればいいですけど、ああいう状況でも、今言ったように耐える力も大事だし、1失点目なんかは勿体なかったし、今言っているのは、今のメンバーの中でもボールが動いている時の準備をもっと上げないといけない。その前のシーンでも左サイドでマイボールになりそうなところで、山口竜弥が足の裏を使って、中途半端なファーストタッチになり、内側にボールを落としてまた守備になるとか、やっぱりボールの失い方がすごくルーズですね。これは山口だけじゃないですけど、自分が少し横に逃げたりとか、自分から動き出さないでリアクションになったり、そういう部分が増えてくるとやっぱり相手も前向きに守備をしてくるので、蹴りかえさないといけなくなってしまう。そのへんで、もっともっと普段の練習からワンプレーの大切さをもっと意識してやらなきゃいけないと改めて思いました。

ー1-0になった後くらいに前線に川崎修平選手を前にあげて、白井陽斗選手をサイドに置かれましたが狙いは?

白井が悪いというよりは、今日は川崎の出来がものすごく悪かったです。とても、とても悪かった。やっぱりもっともっとプロとして…塚元大も、中村仁郎もそうですが、うちのトップチームの前線で生きて行こうと思ったら、やっぱり外国人もいるし、宇佐美貴史や渡邉千真ら、代表クラスの選手もいるわけなので、今ぐらいのひ弱さだとやっぱりなかなか、自分がやりたいポジションでプレーはできないかなと思います。だから白井を少し左サイドにいかせて、川崎を真ん中に据えて少し動くスペースを与えてやって回復させようかと思いましたが、最後まで少しパワーがなかったですね。

ー川崎選手はいつもの良さがないように見えました。コンディションが悪かったのでしょうか。

それは言い訳にしかならないですね。ダービーでコンディションがどうこう言っているようでは話にならない。それこそハーフタイムにもいいましたが、それこそサブに選手がいるのであれば、前線を何人でも交代できるなら、全員が交代だと言いました。そのくらい前線にパワーというか、ボールがない時の準備もそうだし、動き出しもそうだし、センターバック2人とボランチ2人、谷を含めて5人はよくやっていたので、特に前線の4人のパフォーマンスが情けなかったです。

ーなかなか勝てない試合が続いていますが、勝利するために彼らに求めていきたいことを教えてください。

今日も相手が平均年齢でいうと2歳上でしたが、他のチームでいうと10歳上とかは当たり前で、そういう中で自分たちがこうやってやらせてもらっている意義をもう一度みんなで再確認して、一つは育成、トップに上がるという大前提があるとは思うんですが、トップに上がってやっぱり、トップは勝たないといけないし、チームを勝たせるためにゲームの中でどういうことが大切になってくるのか、それはいつも言っているように、公式記録に残らない部分ですよね。一歩足を寄せたり、一歩準備したり、セカンドボールを拾ったり…セカンドボールとかは記録用紙には載らないですが、勝負というのは、そういう記録用紙に残らないところが勝負なので。今日ももしかしたら、1失点目も本当に自分が正対してないと…これは、いつも言っているんですけど、シュートブロックを横に逃げるとああいうことが起こりうる。体の当たる面が角度がつくけれど、正面で自分が構えていたら、お腹なり胸に当たっていたかもしれない。そういう本当に細かいところで負けているので。ルヴァンカップの準決勝でも、札幌の鈴木武蔵選手のシュートが菅沼駿哉の股に入りましたが、ああいうシーンでどっちの足でいくべきか、ということと同じで、そういった記録に残らないところをもっともっと徹底していかないといけない。特に負けている試合…うちの試合はセレッソさんより得失点でいうとめちゃくちゃ多いんですよね。でもこの順位ということは、僅差の試合で負けている証拠なんです。特に2-1というスコアがものすごく多くて、うちは3失点以上はほぼしていない。2-1で負けるか1-1で引き分けるか、ほぼそういう展開なので。やっぱり今いる若いメンバーで、自分たちのサッカーをやりながら、やっぱり90分全部そういう時間というのはできないと思うので。今日みたいな状況でも全員で耐えるなら耐える、カウンターを狙うならカウンターを狙いに行く、と。それを育成とともに勝つための仕事をやっていくしかない。年齢が上がっていくとなかなかそういうことは難しいところもあるし、若いうちからそういう勝負のツボは細かいところにあるんだということを、ただ負けたのではなく、こういう状況になった時こそ、みんなで分析して習慣づけていけたらと思います。

●MF奥野耕平

(失点した後の流れはどうみますか)少し受け身になってしまって、前からいこうとしているFW陣と相手のフレッシュなFWに対して受け身になっているセンターバックとボランチと、前からいくか、引くかという違いが出てしまって、間延びしてしまったし、自分たちのペースに最後まで戻せなかった。(ボランチのところでもう少しコントロールしたかったところもありましたか?)もう少しはっきりとした声かけとかはできればよかったかなと思います。(大阪ダービーの空気感をどう感じましたか)サポーターの皆さんもいい雰囲気を作ってくださって、トップとはまた違いますが、プライドっていう意味ではどのカテゴリーでも負けたらいけないカードだと思うので、そういう意味ではもっと前半からパワーを出していければなと思いました。(守るのかカウンターを狙うのかもはっきりしていなかったですね)こっちは交代枠がいないのに対して、相手は失点した後フレッシュなメンバーがどんどん出て来て、攻撃の形を作られ出してから難しくなってしまいました。個人的にももう少し相手との駆け引きとか、頭を休めてしまった部分もあったので集中してやらなければと思いました。

●MF中村仁郎

ずっと練習していた右足でゴールを決められたのは成長していることだと思うし、でも守備で相手に走らされすぎて全然攻撃ができなかったのが今日は悪かったところだと思います。(どのへんがうまくいっていないと感じましたか?)相手のプレッシャーが強くて少しびびってしまったところもあると思うし、自分から仕掛けられずにゴールにも全然向かって仕掛けられていなかったので、自分が一番得意なプレーが全く出せなかった。(アウェイでの大阪ダービーがデビュー戦に。今回はホームでの大阪ダービーでしたが、また違う雰囲気を感じましたか?)アウェイでは、ガンバがいい状況で入って、自分のプレーを出せばよかったですけど、今日はスタートからで、試合が終わってからも、ファンの人たちから、声をかけてもらって正直びっくりしたところもあって…やっぱり負けたらダメなんだなっていうことを改めて痛感しました。ファンの人は伝統的に、セレッソに対してのライバル心を強く持っているんだなっていうことを改めて感じましたが、僕も昔からずっと一番のライバルだと思ってきただけに、負けたことはすごく悔しかったです。(年齢は関係ないとはいえ、勝てない試合が続いている。試合を戦う中での差を感じることも多いですか?)年齢では言い訳はしたくないんですが、まだフィジカル面が足りないというか、最後まで体力も持たなかったし、もっと練習からそこを意識してやっていかないといけないと思ったし、相手のセレッソの選手は決定力というか、大事なところでしっかり決めてきたので、まだ僕はプロのサッカーに慣れてないところもあるなと改めて感じました。

●GK谷晃生

前半から受け身になってしまっていたなというところはありましたし、その中でもセンターバック、ボランチと集中して守備陣がやれたことが前半をゼロで抑えられたことにつながったのかなと思います。(失点シーンについて)1失点目はDFにあたりましたが、それは局面のところなので、個人個人が修復するしかないですけど、後半ラスト20分くらい、あの時間帯から相手はフレッシュな選手が出て来た中で心理的に受け身になってしまったというか、守りに入ってしまうというか、1点が入っているからこそ、そうなってしまったことがああいう結果になったのかなと思いますし、そういう中で流れを変える作業がチームとしてできなかったことが、この試合の結果につながったのかなと思います。2失点目については、相手のキッカーを褒めるしかないというか。何か自分でも修復できるところはあると思いますけど、今回に関しては素晴らしかったと思います。(1失点目を喫したあとかなり悔しそうでしたね)そうですね。後ろを含めて自分もいいパフォーマンスができていた中だったので踏ん張りきれなかったのは悔しかったです。(大阪ダービー。試合後にはサポーターの皆さんからメッセージも受け取ったと思いますが)サポーターの人たちも、アップの時に掲げていた、結果が全てだっていう横断幕の通りだっておっしゃっていましたが、僕もアカデミーからやっている中でやっぱり負けたらいけない相手だと思いますし、こういうところで結果を出せるかどうかが、大事だなと思いますし、改めて自分たちの力不足を悔しく感じました。(個人的なパフォーマンスの質というか、谷選手らしさが出ていたのかなと思いますが)そうですね。いつまでもここでやっている気はないですし、より高いレベルでやるためには一人でも多くの人に「ここでやるレベルの選手じゃない」と思ってもらわないといけない中で、そういう意味では失点を恐れてプレーするというより、自分の良さを出すことを自分の中でしっかりと考えながら、出ていけるボールには思い切って出るとか、チームに必要なことをプラスになることをやろうと思っています。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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