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ガンバ大阪、激戦を繰り広げた2015年は、天皇杯優勝で幕を閉じる。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

元日、2015年シーズンのラストゲームである天皇杯決勝『浦和レッズVSガンバ大阪』戦を戦ったガンバ大阪はパトリックのゴールで先制すると、1点を返された53分にセットプレーから再びパトリックがゴールネットを揺らし、浦和を突き放す。以降、終盤は猛攻を仕掛けてきた浦和に苦しめられたが、途中出場の選手も含めて、全員が最後まで執念を燃やして守り切り、1−2で勝利。天皇杯連覇を実現した。試合後の表彰台では、今季限りでチームを退団することが決まっている明神智和の背番号『17』のユニフォームを遠藤保仁が着用。背中の背番号を指差し、アピールすると、グラウンドから表彰台を見上げていた明神がガッツポーズで応えるといったシーンも見られた。

試合後のガンバ大阪監督、選手のコメントをお届けする。

●長谷川健太監督

もっと素直にうれしさが込み上げてくるかなと思っていましたが、意外とホッとした感じが強いです。今シーズン振り返ると、国内戦は冨士ゼロックスのレッズ戦からスタートして、今シーズンこうしてまた天皇杯の決勝がレッズ戦で締めくくることができた、と。開幕のゲームと最後のゲームで素晴らしいチーム、レッズに勝って、優勝できたことを本当に選手に感謝したと思いますし、1年間、ガンバ大阪を応援し続けてくれたサポーター、本当に心から感謝したいと思います。

今日のゲームですが、サイドバックの控えがいないことから「右サイドバックに何かあったらどうしようかなあ」と思っていました。左サイドだったら今ちゃんがスムーズにできるだろうけど、右は昨年、1回やらせてあんまりいいイメージがなかったので、そこをどうしようかと考えていました。そしたら、そのとおりに米倉がケガをしてしまって、今野を急きょ右サイドに据えて、井手口をボランチに入れたのですが、本当に今ちゃんが最後まで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。また、急に入った、陽介も、試合の入りは良くなかったけど、時間とともにきちっと仕事をしてくれた。そういう意味では、陽介が今シーズンしっかり成長してくれたことがこの試合の大きなポイントにもなったのかなと思っています。天皇杯の相手はずっと3バックで…3−6−1はペトロヴィッチ監督十八番のシステムですが、川崎、鳥栖、広島と戦ってきたこともあり、相手の特徴とか、どこをケアしないといけないのかはある程度予想していました。ただ、今日は柏木がいないということから、サイドからパワーをもって仕掛けられてきて、最後にズラタンも入れてきてと、危ない場面も何回もありましたが、そういう中で、ケガから戻ってきた内田がしっかりとプレーをしてくれました。この天皇杯は本当に、先発メンバー、ベンチメンバー含めてしっかりと選手がチームのための仕事をしてくれた結果が、最後、こういう形で、優勝で終わることができたんじゃないかと思います。今日は本来なら、ベンチに明神を入れたかったのですが…明神も、その辺のことは、本人なりに理解はしてくれたと思います。またベンチに座りながら試合に出られなかった二川もそうですが、明神やリンスもしっかりとトレーニングを積んでいた。本当に素晴らしいチームで、1年間戦ってこれた。そして最後の最後でタイトルを獲ることができた。みんなに感謝したいと思います。

ー2点目のセットプレーのシーンはチームとしての準備が実った形だったのでしょうか。

そうですね。決勝戦ではセットプレーが非常に大きなポイントになると。ナビスコ、CSと、セットプレーから取りましたけど、逆に相手にも取られて勝つことができなかった。だからこそ、攻守においてポイントになるとは、選手たちに話していました。そういう意味では、中2日と短い期間でしたが、マルキーニョス、シジクレイコーチが中心となって、その準備をしっかりして、それを選手がしっかり理解してくれたことが結果につながったのかなと思います。

ー今シーズン、ナビスコ準優勝、Jリーグ準優勝、ACLベスト4。2位ばかりで終わることと、一つタイトルが獲れたことの違い、意味、価値をどのように感じているか。

全く分からない。だから逆に「負けなくてよかった」という安堵感が強いのかなあと思っています。これで3つとも主要タイトル2位だったら立ち直れないなあと思っていましたし、本当に10個シルバーを集めても金にはならないので、金のメダルを獲れたということは、選手、スタッフが力を合わせて戦った結果だと思います。最後、金正也が空振りしましたが、運にも助けられた部分もあったのではと思います。

ーパトリックについての評価を聞かせてください。

今日も素晴らしいプレーをしてくれたと思います。なかなかCSで使えず、彼もストレスが溜まっていたと思いますが、そういう中で長沢が結果を出していたことで、パトリックのほうは献身性を見せてくれるようになった。これはチームにとって本当に大きな武器になったと思う。広島の試合もそうですけど、非常にプレスバックをして後ろを助けてくれる。今日も守備に、攻撃に、大活躍をしてくれた。パトリックは下手ですけど、ゆっくりうまくなっている。こちらの意図を聞いて、成長し続けてくれている。そういう意味では非常にもう一人のエースが活躍してくれた。

ー先ほど、浦和のサイドの圧力があったと話されていましたが、最初は宇佐美くん左、トップ下に倉田くんでした。逆にすることは考えませんでしたか?また、宇佐美くんを左に置く狙いは?

初めから、逆にすることは全く考えていなかった。うちのサッカーをやろうと思っていたので、相手を受けるつもりはなかった。試合を通して、そうせざるを得ない状況であれば、倉田をサイドに回してということも考えていましたが、初めから貴史を真ん中に置くつもりはまったくなかった。貴史をサイドで使った狙いは、最近はサイドで非常にいいプレーをしてくれていましたからね。広島戦といい、鳥栖戦といい。そのいい流れを変えたくなかったので貴史をサイドで、倉田を中で使いました。

●遠藤保仁

(タイトルを獲って新年をいい形でスタートできましたね)そうですね、いいスタートというか、今シーズン、忙しかったけど、その中で最後タイトルで締めくくれてうれしく思う。(タイトル獲れないまま終われないという、気持ちの強さも感じられました)ACLやナビスコもそうですけど、惜しいところまではいっていましたらからね。それもあって、タイトルを獲りたいという気持ちはあった。だけど、それは相手も一緒なので。今シーズンで、離れる選手やスタッフもいた分、そういう人たちのためにもとは思っていた。今シーズン、最高の結果で終われて良かったと思う。(2点目、セットプレーでのゴールについて)僕自身は何も変えていない。中がうまく対応してくれた。あれもパトがうまくシュートしてくれた。狙いどおりといえば、狙いどおり。ここ最近はセットプレーからも取れていましたしね。今日も自信をもってやっていて、セットプレーも生かしたいと思っていた中でゴールを取れたことは良かったのかなと。

─明神選手がチームを離れます。その惜別の思いもあってのユニフォーム着用でしたか?

ミョウさんは、長い間、ガンバを支えてくれて、いい時も悪い時も、先頭に立って選手たちを引っ張ってきてくれていた選手なので。できれば、今日ベンチに入って、優勝カップをミョウさんに渡せればとは考えていたんですが…ただ、監督もいろいろゲームプランとか考えた上での決断だと思うので、それに対して僕が言うことはない。できれば、最後、一緒にプレーしたかったという気持ちはありますけど、僕はこれまでに長い間、一緒にプレーしてきましたし、コンビを組むことも多かったですから。ユニフォームを着たのは、監督にも、大仁さんにも、妃殿下にも許可を取って着させてもらいました。それだけの選手ですからね。最後、タイトルを獲って笑顔で終われたのが一番なのかなと思います。

●内田達也

連覇をすることができたけど、去年は(入院していて)その場にさえいれなかったんで。今日はここにいれたことが嬉しかったし…その瞬間にピッチに立てていたのがすごく嬉しかった。この1年何もしてこなかったですけど、いい終わり方ができたし、今年のいいスタートができた。(あの時間帯、締めくくろうと?)僕が起用されるイコール、そういう展開だと思っていたので、なんとか2−1のままで終わらせようと思っていた。そのままいけてよかったです。ただ、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間は嬉しいというより「やっと終わった〜」って感じだった。ヒヤヒヤさせられるシーンも続きましたしね。ただ、そういう中でも起用してもらったことで、来年もっと頑張ろうという気持ちになりました。

●藤春廣輝

元日っぽい雰囲気は僕はそこまで感じていなかった。優勝したのに、みんなそんない喜んでいなくて…僕らが獲って当たり前、みたいな空気も流れていたし、実際に試合をしていても負ける気はしなかった。(この終盤戦、体調も崩していましたが、今日は終盤きつかった?)やばかったです(笑)。この2連戦でいうと、今日の方がやばかった。試合中も咳が止まらない感じだったので。飯も食べられていなくて、体重も3キロくらいは落ちてしまっていたし…でもなんとか耐えれました。最後まで自分のところからやられても、最後はヒガシくんがおるから大丈夫、と自分に言い聞かせてやっていました(笑)。(今ちゃんが右に入ったけど)今ちゃんが右に入ったことで、より自分が前にいかないとみたいには思っていたので、バランスとりながらですが行く時はいこうと思っていた。そういう中で左からもいいチャンスが作れたのでよかった。

●金正也

最後…魅せてしまいました(苦笑)。本当は流そうと思っていたんですが,瞬間的に自分の中で揺れてしまって、中途半端になった。結果、オーライでした。(自分が絡んでのタイトル)楽しかったです。中2日の3連戦はたぶん今季初なんで。だいたい中3日か、中3と中2の交互なんで。でもやっぱり、ガンバはすごいと思いました。勝負強いし、みんなタフだし、そんな仲間と一緒にプレーできてありがたいです。(後半特に相手が圧力かけてきましたが)クロス対応だけしっかりすれば大丈夫だと思っていた。それでももし、ピンポイントであわされたらしょうがないくらいの感じでやっていたので…ラッキーでした。クロスにはいってくるときの怖さはありましたけど、それ以外は,ドリブルしてとかではなかったし、そこまで怖さは感じなかった。(仲が良かった明神選手のラストマッチでもありました)ほんまに最後勝って終われてよかった。遠藤さんもさすがやなと…優勝できてよかったです。

●東口順昭

(最後ひやりとしましたね)いやぁ…またうちにスパイがいました(笑)。丹羽ちゃんに続いて(笑)。誰かがいたのはわかっていたんですけど、よく出れたと思います。よく距離をつめれたなという感じでした。体が自然と動きました。瞬間は焦りましたけど、試合が終わったらもう笑い話なんで。(浦和戦は相変わらずベストパフォーマンスが続きますね)毎回同じようにやっているつもりなんですけど…なんなんでしょうね。でも結果が出せたのでよかった。(最後ようやくタイトルに届きました)そうですね。終わりよければ全て良し、じゃないけど、ほんまにいいシーズンだったという思いで締めくくられたのでそれはよかったと思います。

●長沢駿

(ガンバでの初タイトルは)嬉しかったです。試合に出ていない時も、とりあえず勝ってくれ,という思いで見ていました。パトもとってくれてすごい嬉しかったし、自分がでたときもゴールだったりいろんなシーンで貢献したいなと思っていました。本当に結果が全てだと思うので、すごい嬉しい。(表彰台から見た景色は?)上から見たのは初めての体験なのですごい興奮したし,嬉しかった。こ今季はシーズン途中に移籍して、いろいろ考えて…でもようやく吹っ切れたというか、移籍して来て本当に良かったと思えました。(特に天皇杯は自分が力になれたことを実感しているのでは?)そうですね。今日はあまりいいプレーが出来なかったけど、準決勝まではいろいろ力にもなれたのでよかったです。このメンバーでやれて幸せでした。今シーズン限りでいなくなる人もいますけど、最後の最後まで元日まで一緒にやれたことて嬉しかったし、幸せです。(いい新年のスタートに)いい1年のはじまりになった。また来年も自分はもっともっとチームに貢献して点を獲ってみんなで喜び合えたらいいなと思います。

●今野泰幸

(準々決勝の左サイドバックに続き、決勝は途中から右サイドバックを預かりました)途中から、というかほぼスタートからみたいなもんでしたからね(笑)。さすがに焦りました。自分にできることを考えて、あとはみんなに助けてもらいながら、なんとか頑張りましたという感じでした。(現実的には守備をしっかりしようと?)そうですね。もともとオーバーラップしてセンタリングっていうタイプではないので守備でサポートしながら、前にボールつけていければいいなと思っていた。(ようやく辿りついたタイトルでした。いい今シーズンのスタートになった?))今シーズンのスタートというより、去年のシーズンの締めくくりとして一つは絶対にタイトルをとりたいと思っていましたし、このチャンスを逃したくないと思っていたから獲れたので満足しています。やっぱり準優勝じゃ物足りないし、タイトルを獲らないと歴史に名前が残らないですから。これからもタイトルに拘っていきたし、とにかく星を増やし続けたい。

●明神智和

(やっとの粋な計らいに拍手で応えていましたね)いい男ですね。驚きました。なかなか普段、気持ちを出さないヤットなので。やっぱり偉大で、粋なキャプテンです。(ヤットから言葉はかけられました?)いや、ありがとう、というだけです。ヤットだけではなくホントにいい仲間に恵まれました。それだけでも本当に良かったと思う。(最後優勝で締めくくれた)最高の気分というか。今季このために頑張ってきたので、優勝できたのはすごい嬉しいです。(胴上げは?)引退する訳じゃないからって言ったんですけど(笑)…(改めて10年間を振り返ると?)あっという間の10年でしたが、本当にいろんな思い出もいっぱいありますし、簡単には言えない,短くは言えない部分が多いです。でも、本当にいい思い出がいっぱいのこっています。(ここでのキャリアを今後にどう活かしますか?)いままで積み重ねたものや経験とか、っていうのは自分の武器として、やらなくちゃいけないと思っています。新たなチームで、また1から選手として勝負したいと思っているので、また新しい争いもあると思いますが、全力で頑張ります。(最後、ベンチに入れなかったことは)それは1選手として悔しい思いしかないですね。そこに自分がいなかったことを受け入れてはいません。でも、それをまた次のシーズンで晴らすというか、頑張るだけしかないと思っています。(健太さんには試合後何か声を掛けられましたか?)みょうには感謝の言葉しかないという言葉をいただきました。(最後、若い二人がボランを預かりました。彼らにもいろんなものを残したと思いますが)残したかは分からないですが、彼らがみて、少しでも何かを感じ取ってくれていたら嬉しいです。ただ、これからまた試合をすることもあると思うのでお互い切磋琢磨しながら、競争していきたいと思っています。(井手口選手は五輪代表としても注目度の高い選手ですが)あまり周りを気にせず、陽介は陽介らしく堂々とやれば、世界で通用する選手だと思うので頑張ってほしいです。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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