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マイルCS【傾向とポイント】前日1番人気のソダシ、復活サリオスの取捨は!?今週も大混戦

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2021年桜花賞をレコード勝ちしたソダシ(写真:日刊スポーツ/アフロ)

今年のマイルCSは混戦ムード

 20日、阪神競馬場でマイルチャンピオンシップ(以下、マイルCSと省略/GI)が行なわれる。今年は前売単勝オッズ1桁台が6頭いるように、絶対的な本命馬がいない混戦ムードだ。

 まず、前日の単勝オッズを確認しよう。

 1桁台の6頭はソダシ(4.0倍)、シュネルマイスター(5.3倍)、サリオス(5.9倍)、ソウルラッシュ(7.5倍)、ダノンスコーピオン(8.0倍)、セリフォス(8.5倍)。続く10倍台は2頭でジャスティンカフェ(15.5倍)、ウインカーネリアン(18.0倍)。20倍台も2頭でダノンザキッド(28.8倍)、マテンロウオリオン(28.9倍)となっている。

■2021年 マイルCS(GI) 優勝馬 グランアレグリア

過去10年、単勝オッズ3倍台以上の優勝馬はいないが、今年は?

 今回、何とも悩ましいのはソダシとサリオスの取捨だ。

 まずソダシだが、白毛のアイドルホースであることは言わずもがな。それゆえに出走するたびにルックス由来の期待が高まる傾向にある。もちろん、ソダシは実力がある。しかし、牡馬と互角にマイルGIで勝ち負けになるか、と言われるとその可能性を大いに秘めながらも絶対的ではない不安も拭えない。実際、前日から当日午前まで前売単勝1番人気をキープしてはいるが、その数字は4倍台を前後している。ファンの皆さんもソダシの魅力と危うさのあいだで判断を迷っているのではないか、と察する。

■2021年桜花賞(GI) 優勝馬 ソダシ

 過去のマイルCSの傾向として、1番人気が絶対的であるか否か、で傾向が分かれると見ている。過去10年のマイルCSのうち、単勝オッズが3~4倍台だった馬で連対したのは2012年のグランプリボスの2着のみ。あとは、3~4倍台で1番人気になった年以外の年で優勝しているダノンシャーク、連対したイスラボニータはいるが、勝った馬はいない。対して、2年続けて単勝1倍台で1番人気に支持されたグランアレグリアは堂々2年連続で優勝している。2019年、単勝オッズ2.4倍で1番人気に支持されたダノンプレミアムは2着という結果だった。それ以前のマイルCSは比較的堅い傾向があったことからも、堅いときは堅いが、単勝3倍台以上の1番人気馬は勝っていない、という傾向があると見られる。

 筆者は"ソダシちゃん"というアイドルホースを応援したい気持ちは山ほどある。しかし、マイルCSの軸として推すには正直心もとない。吉田隼人騎手が戦前のインタビューで「古馬になって追いきりをしているうちに、だんだんマイラーからスプリンター寄りになっているかんじ」と話している点もひっかかる。一般的に牝馬の中には年をとると得意距離が短縮していく傾向があるケースを見受ける。マイルなら距離実績のあるソダシだが、主戦が事前にこういった印象を口にしている点がとても気になる。とはいえ、2021年の桜花賞をレコード勝ちした阪神マイルのコース実績もある。実に悩ましい1番人気だ。

■2022年ヴィクトリアマイル(GI) 優勝馬 ソダシ

前走で復活気配のサリオス、鞍上は世界の名手

 そして、サリオス。前走の毎日王冠では見事な復活劇を遂げた。この中間もしっかり調教を積んでいるし、鞍上はかつて朝日杯FSでともに勝利を勝ち取ったライアン・ムーア騎手。得意コースとそうでないコースでの成績が極端な点が気になるが、鞍上がなんとかしてくれるのではないか、という期待を寄せてしまうのは筆者だけではあるまい。先週のエリザベス女王杯では外国人騎手が1着から3着までを独占した。大混戦と評された一戦であったが、隙の無いエスコートに息を呑んだ。そして、一回でも勝った。つまり、復活をしたという事実は大きい。5歳秋、芝のGIを狙う上でギリギリのタイミングでの上昇に、あのGIで先行からの押し切り勝ちを決めたサリオスの姿がもう一度見られるのではないか、と期待してしまう。

■2022年毎日王冠(GII) 優勝馬 サリオス

筆者は伸びしろも含めてダノンスコーピオンを推奨

 そんな大混戦のマイルCSだが、筆者はダノンスコーピオンを推す。正直、この馬はまだまだ成長過程にあり、本領を発揮するのは来年だろう。しかし、まだ十分すぎる伸びしろを持ちながらも、これだけの結果を出しているという点に注目したい。前売オッズが手頃で、人馬にプレッシャーがかからならい程度である、というのも良い。

■2022年 NHKマイルC(GI) 優勝馬 ダノンスコーピオン

 相手はシュネルマイスター。こちらはダノンスコーピオンとは逆に完成度を買いたい。鞍上のクリストフ・ルメール騎手の実績は言わずもがな。前走のスプリンターズSは8ハロンのマイル戦と6ハロンのスプリント戦ではレースの内容自体が大きく異なるため、惨敗は度外視してよい、と考える。

■2022年安田記念(GI) 優勝馬 ソングライン(2着 シュネルマイスター)

 セリフォスは鞍上にレーン騎手を配している。これまでのGIでは勝ち切れないまでも堅実に掲示板を確保しており、きっかけひとつで念願のGI勝ちが叶う位置にある。

■2021年富士S(GII) 優勝馬 セリフォス

 筆者はもう1頭、ダノンザキッドを推したい。安田隆行厩舎のスプリンターやマイル馬の育成実績の高さを考えると、これまでは2000mのホープフルSでのGI勝ちが光るダノンザキッドも、距離短縮が結果につながるのではないか。前走の毎日王冠ではゲートに突進しての外枠発走というアクシデントがあったにもかかわらず3着という結果からも、ダノンザキッドを軽視できない。

■2020年ホープフルS(GI) 優勝馬 ダノンザキッド

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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