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大混戦!フェブラリーS、JRA重賞1番人気19連敗の中、終止符を打てるか?前日1番人気は白毛ソダシ

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2019年フェブラリーSを優勝したインティ(写真:毎日新聞社/アフロ)

JRA重賞で1番人気は19連敗中

 2月20日、東京競馬場でフェブラリーSが行われる。

 19日現在、JRA重賞において1番人気は19連敗中だ。有馬記念で1番人気のエフフォーリアが優勝して以降、負けに負けまくっている。

 グレード制導入以降だと、2014年の11月のアルテミスS(GIII)から12月のステイヤーズS(GII)まで17連敗という記録があり、現在、ワースト記録を更新中なのだ。

 ちなみにこの時は、最後に1番人気で勝ったのはスワンSのミッキーアイルで、同日の10分後に発走したアルテミスS(GIII)で1番人気のレッツゴードンキは2着に敗れてから連敗が始まっている。優勝は9番人気の横山典弘騎手のココロノアイだった。17連敗目のステイヤーズS(GII)では1番人気のクリールカイザーが負け、優勝したのは3番人気の横山典弘騎手のデスペラード。この流れを破り、1番人気が勝てたのは同日10分後の金鯱賞(GII)でラストインパクトに騎乗した川田将雅騎手だった。

JRA重賞1番連敗記録は19に更新中(表は筆者作成)
JRA重賞1番連敗記録は19に更新中(表は筆者作成)

 今年はクリストフ・ルメール騎手が騎乗した1番人気の馬が7敗している。どうしても人気ジョッキーが乗ればオッズが下がるのは仕方ないが、2着を3回記録しているのを見ると、馬の実力的には勝つチャンスはあったが勝てなかったこともあっただろう。まぁ、3月以降、クラシック戦線が本格化すれば再び頻繁にルメール騎手も1番人気で勝つシーンが見られるようになるはずなので、その前にこの流れを断ち切っておきたいところだろう。

■2021年フェブラリーS 優勝馬カフェファラオ

単勝1倍台は6頭という大混戦

 前日の人気をおさらいしておく。

 JRA発表の前日の1番人気は桜花賞馬のソダシで4.7倍。2番人気はJBCスプリントから直行のレッドルゼルで5.1倍、3番人気が昨年の覇者であるカフェファラオで5.3倍、4番人気がテイエムサウスダンで8.0倍と続いている。ここまでが単勝1桁台で、あとはケイティブレイブを除く馬が2桁台でひしめき合っている。

 当日朝9時のオッズでは、単勝1番人気はレッドルゼルに入れ替わり、2番人気がカフェファラオ、3番人気がソダシと続いている。直前までこの3頭が上位人気になるとみられ、4倍台から6倍で推移していくとみられる。続いては4番人気は前日同様テイエムサウスダンだが、ソリストダンサー、アルクトスも1桁台に変わっている。単勝1桁台が6頭いるあたり、いかにも"混戦"という印象を受ける。

2022年フェブラリーS枠順(筆者作成)
2022年フェブラリーS枠順(筆者作成)

かつて連敗を止めた川田騎手は当日朝1番人気レッドルゼルに騎乗

 かつて、17連敗を止めたのは前出のとおり、川田将雅騎手だった。

 今回のフェブラリーSでは、奇しくも当日朝1番人気のレッドルゼルに騎乗する。レッドルゼルはJBCスプリントからフェブラリーSに直行しているが、これは予定どおりのスケジュールなので問題ないだろう。もともと冬場を得意としており、体調も「すこぶるいい」(安田隆師)と万全の状態である。

 気になる点は、川田将雅騎手がレッドルゼルにとって1600mという距離は「長い」と公言していることだ。わりとはっきりものをいうジョッキーなので、昨年のフェブラリーSも騎乗して4着だったときの体感を実直に話しているのだと察する。

 しかし「何とかこなせるように、頑張って貰えるように乗っていきたい。昨年よりも力をつけた状態なので、やってみないとわからない」と希望的観測も口にしている。とにかく調子はいい。前日の降雨で脚抜きのいいコンディションになりスピードが生かせる可能性もある。ぜひ、期待したい。

■2021年JBCスプリント 優勝馬レッドルゼル

前日1番人気、ソダシは順調だが過度な期待は…

 前日1番人気ソダシは引き続き順調だ。ダートはチャンピオンズS(GI)に続いて2戦目だが、今回は距離が1600mというのがいい。芝とダートの差はあるが、長さは優勝した桜花賞(GI)と同じである。GIウィナーであり古馬との対決で勝った実績もあるソダシだが、彼女にとって今回のダート参戦も"チャレンジ"であることには変わりない。しかし、アイドルホースの宿命か、人気を集めてしまう。もう少し気楽な状況でダートにチャレンジできたらいいのだが、それは難しい注文なのだろう。今回、ダートに変わって2戦目ということで、いい意味での慣れに期待したい。ただし、やはり"見守る"姿勢が重要で、過度な期待はかけずにおきたい。

■2021年桜花賞 優勝馬ソダシ

前年の覇者・カフェファラオは東京ダート1600mの鬼

 昨年のフェブラリーSを勝ったカフェファラオは、この1年間は芝の函館記念(GIII)や公営・船橋のかしわ記念に出走するというチャレンジを続けてきたが、結果は出せずにいる。カフェファラオという馬は陣営の話を総合すると、とにかく自分のリズムで走ることが重要なようだ。リズムの違う芝や小回りの地方競馬を難なくこなす馬もいるが、カフェファラオにとっては高いハードルだったのかもしれない。その点、東京のダート1600mはカフェファラオに最も合っている舞台と言っていい。過去、3戦3勝なのだ。 この中間は馬具の工夫をするなど、再び結果を出すために陣営は試行錯誤している。自分のリズムさえ取り戻せば、カフェファラオはあっさり連覇するのではないだろうか。

義理人情で「勝たせたい」と願う岩田康誠騎乗のテイエムサウスダン

 競馬サークルもかつては「義理と人情、御恩と奉公」に重きが置かれていた。しかし、昨今は良くも悪くも"ビジネスの場"としてシンプルな人付き合いが求められる風潮に変わってきた。

 その点、今のテイエムサウスダンと岩田康誠騎手の繋がりからは熱い義理人情が感じられる。岩田康誠騎手はもともと厩舎と一丸になって馬づくりをするのが好きな方だが、昨今はテイエムサウスダンに熱心に力を注いでいるのが見受けられる。水曜の追い切りはもちろん、マスコミに取り上げられることのない日々の馬づくりにも積極的に参加していると聞く。

 かつてロードカナロアの主戦騎手を務めた岩田康誠騎手だが、その時代から比べるといささか寂しい成績が続いている。本人曰く「落ちぶれていたにも関わらず、(厩舎が)この馬でチャンスを与えてくれた恩があります。GIの勝利をプレゼントしたい」とのこと。開業22年目、解散まであと2年の飯田雄三厩舎にGIを勝ちを、と熱く燃えているのだ。その願いは叶うのか。

 ここ4戦、岩田康誠騎手はレースに調教にテイエムサウスダンの手綱をとり続けながらいろんなことを教えてきた。幸い、昨年暮れから兵庫ゴールドトロフィ(園田・GIII)から年明けの根岸S(東京・GIII)を連勝中だ。

■2022年根岸S 優勝馬テイエムサウスダン

自在性が出た2019年優勝のインティ、武豊騎手の手綱さばきに注目

 筆者は2019年の覇者・インティに注目している。当時は破竹の7連勝でフェブラリーSを制したが、勝利はその時から遠ざかったままだ。体調の不振というよりは、インティは競られると自分のリズムを崩しがちで、2019年のフェブラリーS以降はそういった弱点を突かれ持ち味を生かせなかったのが原因だ。そういう意味では、最近のインティは差す競馬も覚えてきて脚質に幅が出た。折り合いもついており、どんな展開になっても自分のリズムをつくれるようになってきた。8歳になったが、まだまだ元気なインティ。武豊騎手がどのような手綱さばきをみせるか、注目だ。

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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