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北朝鮮専門ニュースサイト「NKニュース」、26日平壌開催のサッカー日本対北朝鮮戦の取材許可されず

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
2006年FIFAワールドカップアジア最終予選、埼玉スタジアムでの日本対北朝鮮(写真:ロイター/アフロ)

サッカー男子の日本代表が北朝鮮の首都平壌で同国代表と対戦する予定の3月26日のワールドカップ(W杯)アジア2次予選について、北朝鮮サッカー協会はこのほど、北朝鮮関連ニュース専門サイト「NKニュース」の取材申請を不許可とした。日本サッカー協会を通じて、NKニュースに17日に連絡があった。

NKニュースは2010年4月に設立されたアメリカメディアだ。筆者はその設立当時から同ニュースに日本人拉致問題の記事をはじめ、定期的に寄稿している。このため、今回NKニュースの取材依頼もあり、26日に平壌の金日成競技場で行われる日本対北朝鮮戦への取材をNKニュースの代表として日本サッカー協会に申請した。

しかし、日本サッカー協会は17日午後、平壌での現地取材が北朝鮮側から不許可になったメディアに対し、「先程、DPRコリア(朝鮮民主主義人民共和国)より連絡があり、皆さまの入国については『Not approved』(不許可)との連絡がありました。お力になれず申し訳ございませんが、ご理解いただけたらと思います」とのメールを送付した。メール送信先を伏せる「Bcc」での送付となっており、どのメディアが不許可になったのかが外部には分からないようになっていた。

日本サッカー協会広報部は19日、筆者の取材に対し、平壌開催の北朝鮮戦には日本や米国、韓国の報道関係者28人が取材を申請し、うち6人が許可されなかったことを認めた。北朝鮮側は取材不許可の理由を一切明らかにしていないという。

産経新聞社は18日、日本メディアでは産経新聞だけが現地取材を許可されなかったと報じた。

また、韓国の東亜日報も19日、「韓国系メディアと在日同胞記者の取材申請が不許可となった」と報道。「在日同胞3世記者が属する産経新聞を含む韓国系・アメリカ系記者が所属する媒体6人は北朝鮮入国を拒否された」と伝えた。

この6人に筆者も産経新聞記者も韓国メディア記者も含まれていることになる。なお、筆者は生まれてこの方、日本国籍保持者だ。

●2月にロシアメディアが北朝鮮訪問

北朝鮮への外国メディア訪問をめぐっては、2月にロシアメディアがロシアの旅行グループとともに北朝鮮に入国した。

NKニュースによれば、今回、日本メディアを含む海外メディアが平壌での試合を現地取材すれば、2018年9月以来初めてのロシア以外の外国メディアの北朝鮮入国となる。この間には北朝鮮が新型コロナウイルスのパンデミックで国境閉鎖した期間が含まれている。

北朝鮮とNKニュースの過去の主な経緯をめぐっては、北朝鮮の朝鮮中央通信が2019年7月6日、同国で拘束されて後に解放されたオーストラリア人留学生アレック・シグリーさんが、留学生の身分を使って平壌を歩き回って収集、分析した写真や資料を「NKニュース」など「北朝鮮に敵対的なメディア」に渡していたと報道、しかし、本人がスパイ行為を認めて、許しを請うたことから「人道的な寛容」を施し、追放したと説明した。これに対し、シグリーさんは北朝鮮からスパイだと非難されたことについて「明らかなうそ」だと反論、ツイッターで「私がスパイだという疑惑は(どう見ても明らかだが)うそだ。NKニュースに提供した情報はブログなど他のソーシャルメディアでも公開している」と述べた。

防衛省・自衛隊と公安調査庁で約30年にわたり情報戦に従事し、北朝鮮の動向に詳しい安全保障ジャーナリストの吉永ケンジさんは、「NKニュースや日本の保守紙のみならず、過去に平壌での取材経験がある在日韓国人の記者も不許可にされたことから、北朝鮮が昨年12月に打ち出した統一放棄、韓国主敵の政策が背景にあると考えられる。仮に入国・取材が許可されたとしても、自由な行動や現地での交流は全くできないので、西側文化流入の警戒というより、金正恩氏が打ち出した新政策を貫徹されるという意味合いが強いのではないだろうか」と話している。

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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