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新型コロナ感染で米原子力空母の乗組員が死亡、米海軍で初の死者

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
米原子力空母セオドア・ルーズベルト(写真:ロイター/アフロ)

アメリカ海軍は4月13日、原子力空母セオドア・ルーズベルトの乗組員1人が新型コロナウイルスへの感染で死亡した、と発表した。集団感染が発生した同空母ではあるが、死亡が確認されたのは初めて。

また、アメリカ軍準機関紙の星条旗新聞によると、アメリカ海軍全体としてもこれまでに1056人が新型コロナに感染したが、この乗組員が初の死者となった。さらに、アメリカ軍全体の現役軍人の中でも2番目の死者となった。

アメリカ海軍の発表文によると、この乗組員は3月30日に新型コロナウイルス陽性と診断され、下船した。その後、グアム海軍基地で他の4人の同空母の乗組員とともに隔離された。9日にはグアム海軍病院に入院し、集中治療室(ICU)に移されたが、13日に死亡した。

セオドア・ルーズベルトでは新型コロナの集団感染が発生した。星条旗新聞によると、12日現在で、585人が感染した。全乗組員の約4800人のほとんどが検査を受け、3724人が陰性だった。乗組員4021人が同空母からグアムに既に移されている。

アメリカ海軍によると、同空母はスケジュール通りに、3月27日に物資の補給と乗組員の休養のため、グアムに寄港した。

同空母をめぐっては、ブレット・クロージャー艦長が3月30日に艦内での新型コロナ感染拡大を抑制するため、軍上層部に支援を緊急要請した。しかし、外部に情報が漏れたこともあり、責任を問われ、トーマス・モドリー前海軍長官代行によって4月2日に解任された。しかし、そのモドリー氏も空母の乗組員への演説でクロージャー氏を強く非難したことが原因で、8日に辞任した。米海軍作戦部長のマイケル・ギルデイ大将は9日、クロージャー氏の今後について、内部調査の結果が明らかになれば現場に復職する可能性もあると明らかにした。

アメリカ海軍空母11隻(すべて原子力空母)のうち、これまでにセオドア・ルーズベルトのほか、神奈川県の米海軍横須賀基地を拠点とするロナルド・レーガン、カール・ビンソン、ニミッツの計4隻で新型コロナの感染が確認されている。

空母ハリー・トルーマンは中東の第5艦隊と地中海の第6艦隊での任務を終えて、母港の米南部バージニア州ノーフォークの海軍基地に向かっていたが、乗組員への感染を防ぎ、即応態勢を維持するため、大西洋上にとどまる、とアメリカ海軍は13日に発表した。

アメリカ政治ニュースサイト・ポリティコによると、アメリカ軍全体での感染者は13日現在で、2567人に達している。このうち、海軍が最も多い1056人が感染している。

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。ホリプロ所属。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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