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冬休みもスマホ・ゲームの利用時間コントロールを、一度崩すとなかなか戻らない生活リズムに注意

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:アフロ)

いよいよ冬休み。感染者が増加傾向にあるため、go to トラベルが停止となり、東京都では、「年末年始コロナ特別警報」が出された。今年の年末年始は帰省も難しく、在宅時間が長くなりそうだ。

春の休校時、ネット・ゲームの時間が長くなったことで起きた問題はまだ解決していない。新たな問題を引き起こさないためには、どうすればいいのだろうか。

まだ戻らない一度崩れた子どもの生活リズム

国立成育医療研究センターのグループの「コロナ×こどもアンケート第3回調査」(2020年10月)によると、2020年1月と比べて子どもが1日あたりでテレビやスマホ・ゲームなどを見ている時間が増えたという回答は、中学生では56%、小学校4〜6年では53%に上る。全体では、「増えた(プラス1〜2時間)」「かなり増えた(プラス2時間以上)」は41%となった。

また、2020年1月(コロナの前)と比べて、夜寝る時間は変わったかという質問に対して、中学生は41%、小学校4〜6年生は35%、高校生は37%が遅くなったと回答。全体で見ると、「いまの方が1時間程度遅い」は 15%、「いまの方が2時間程度遅い」「いまの方が2 時間よりもっと遅い」は合わせて 4%、「以前に比べて不規則になった」 は3%だった。

休校で外出自粛が続いたことで、ゲームやインターネットの利用時間が増えたことは多くの調査結果で判明している。気軽に遊びにも出られなかったため、「かわいそうだから」「他にやることがなくて仕方ないから」と、子どものネット・ゲーム利用時間が長くなったり就寝時間が遅くなったりすることを許した家庭は多かった。その事情はよく分かる。

ところが、一度崩れた生活リズムはすぐには戻らないのだ。この調査は休校が開けて3、4ヶ月後の9、10月に実施されたものだ。それだけ時間が経っても、まだ就寝時間は遅くなったままだし、メディアの視聴時間も増えたままとなっているのだ。

筆者は学校再開後、講演先の複数の学校で「(児童・生徒の)インターネットやゲームの利用時間が伸びている。昼夜逆転したり、朝起きられないとか、遅刻や欠席、不登校などの問題が増えている」と聞いている。「昨年より明らかにネットやゲームの問題が増えた」という。

生活リズムが崩れると心身に不調が起きやすくなり、昼夜逆転や遅刻、欠席などにつながりやすくなる。インターネットやゲームなどのメディア視聴時間が長くなりすぎると、この傾向に拍車が掛かる恐れが出てくる。

生活リズムを崩さないことが大切

冬休み明けにそのようなトラブルを避けるためには、どうすればいいのだろうか。一番大切なことは、生活リズムを崩さず、規則正しい生活を送ることだ。

NPO法人「アメリカ睡眠財団」によると、子どもの望ましい睡眠時間は、未就学児(3〜5歳)は10〜13時間、就学児(6〜13歳)は9〜11時間、ティーンエイジャー(14〜17歳)は8〜10時間となっている。

朝に太陽の光を浴びることでメラトニンが分泌され、目覚めが良くなり、快適な睡眠につながるため、起床時間も大切だ。日中は室内に閉じこもる必要はなく、むしろ外で適度な運動をすることで夜の睡眠の質が高まる。ゲームやインターネットばかりにならないよう、適度に公園などで運動させるようにしてほしい。

また、睡眠直前にスマホのブルーライトが目に入ることで体内時計のリズムが崩れ、睡眠の質が下がることがわかっている。睡眠2時間前よりスマホなどは見ないようにするのがおすすめだ。保護者は、子どもが寝る2時間前くらいから意識して声掛けをしてほしい。

ネットやゲームは自由時間に積極的に楽しもう

スマホやゲームの時間が長くなり、それが生活リズムが崩れるきっかけとなっている例はとても多い。では、スマホやゲームの視聴時間を短くするためには、どうすればいいのだろうか。

まず、スマホやゲーム以外のやること、やりたいことをリストアップするといいだろう。そして、毎日のやることとやりたいことを決めていこう。

この機会に読みたかった本を読んだり、習い事の練習、毎日の運動の他、大掃除や、家の手伝いなどもいいのではないか。宿題や受験勉強などを進めるのもいいだろう。時間があるので、この機会に手の混んだ料理を作ったり、プログラミングやプラモデルのような何かを作るのもいい。

続いて、一日におけるスマホやゲームの利用時間の目安を決めておこう。就寝時間と起床時間は普段となるべく変えないようにすること、やりたいことややることをした上で余った時間から計算するといい。スマホを既に所有している子は、スクリーンタイム機能などで現状の利用時間を把握しておくと、自分がどのくらい使いすぎているかがわかるはずだ。

その際、スクリーンタイム機能などを使って利用時間の長さや終了時間を設定すると、利用時間は制限しやすくなる。小学生などの低年齢の子の場合は、保護者が設定して管理するのがおすすめだ。中学生以上などなら、できれば自分で利用時間を決めて、自分で設定して守れるようになるのが目標だ。

自分が決めた一日における自由時間はどのくらいになっただろうか。自分が決めた自由時間に何をするのも自由だ。後ろめたく思うことなく、友だちとオンラインでコミュニケーションしたり、ゲームでボイスチャットをしたりして、楽しく過ごしてほしい。

ニッセイ基礎研究所の「コロナ禍の10代の不安」(2020年7月)によると、子どものたちの不安は、感染だけではない。「運動不足で太ったり不健康になる」(37.6%)、「勉強の遅れによる学力低下」(36.4%)、「友人と会えずに距離ができる」(31.0%)、「生活リズムが戻らない」(28.1%)など、実生活への悪影響への不安や大きい。

スマホやゲームは、逃避行動に使われることも多いと言われている。子どものスマホ視聴やゲームのプレイ時間が長くなっているのは、不安感の裏返しかもしれない。在宅時間が長くなっても生活リズムを崩さず規則正しく生活し、太陽の光を浴びて運動をし、勉強をし、友だちとやり取りすることで、このような不安はなくしていけるのではないか。保護者は、子どもたちが健康的な生活が送れるよう協力していただけると幸いだ。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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