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リベンジポルノ相談件数最多!SNSのみの友人・知人にも裸写真を送信、転送してしまう若者たち

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
気軽に裸の写真を撮影、送ってしまう若者は多い(写真:アフロ)

警察庁発表の「令和元年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」によると、私事性的画像に係る事案、つまりリベンジポルノに係る事案に関する相談件数が1479件と最多となった。いわゆる自画撮り被害だ。スマホが普及し、SNS利用が当たり前となったことで、このような被害が増えているのだ。被害のほとんどは女性で、加害者・被害者ともに20代が最多となっているが、10代の被害も多い。

恋人だけでなく、ネットのみの知人・友人に送っている例も多い
恋人だけでなく、ネットのみの知人・友人に送っている例も多い
被害者も加害者も20代が最多だが10代の被害も多い
被害者も加害者も20代が最多だが10代の被害も多い

加害者との関係は「(元を含む)交際相手」が61.7%と最多。恋人同士の証として裸の写真を送り合う話はよく聞く。しかし、「知人・友人(ネット関係のみ)」(12.3%)、「知人・友人(それ以外)」(10.4%)など、ネットのみの友達などにも多く送ってしまっていることがわかる。

なお相談内容は、「画像を公表すると脅された」「撮影された画像を所持されている」「画像を送りつけられた」「画像を公表された」などだ。

送ってしまった裸の画像は、公表されたり、脅しに使われることが多い
送ってしまった裸の画像は、公表されたり、脅しに使われることが多い

恋人以外にも送信、転送も多い若者たち

交際経験のある20〜60代男女を対象としたFumumu編集部の調査(2018年3月)によると、付き合っていた人に裸の画像を送ったことがあるかという質問に対して、若ければ若いほど送った経験があった。最多の20代は、男性の25.5%、女性の15.8%が「はい」と回答していた。恋人に請われてお願いを聞いてしまうことは多く、恋人に撮影されるケースも少なくない。しかし、別れた後はこのような写真がリベンジポルノに悪用されることがある。

Kaspersky Labの調査(2018年2月)によると、10人に1人(12%)が、交際相手と別れた後で「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」という。その傾向は男性に強く、「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」と答えたのは女性が7%だったのに対し、男性は17%に上った。恋愛している間は良くても、別れ方によっては非常にリスクが高まるというわけだ。

また、Forbesによると、米国では10代の若者の15%が性的なメッセージや画像を送信したことがあり、受信したことがある人は27%に上る。また、10代の若者の12%が送信者の許可なく転送したことがあり、8%が自分の送信したものを転送されたことがあるという。送信するだけでも問題なのだが、若者は気軽に転送するため、問題をさらに大きくしてしまっているのだ。

そもそも撮らない、送らないことが大切

若者たちは恋人から頼まれると断れずに送ったり、撮影を許可したりしてしまいがちだ。今の若者達は嫌われることを強く恐れている。ネットのみの友人・知人でも、頼まれると断りづらく、つい言うことを聞いてしまうことが少なくないのだ。

事例として多いのは、SNSで知り合った相手と親しくなり、性的な写真を送った後、脅迫される例だ。相手をブロックしたりしても、写真は相手のもとに残っており、転送されたり、インターネット上で公開されてしまうリスクが残る。顔が写っている写真の場合、公開されて知人に見られる恐怖はとても大きくなる。

ある女子高生は、SNSで同級生の男の子と親しくなった。請われて学生証の写真を送ってしまった後、「この写真、ばらまいていい?」と脅されるようになった。さらに、「ばらまかれたくなかったら、裸が見たいな」と言われてしまった。悩みに悩んだ挙げ句、保護者に相談して、脅迫だからとブロックして裸の写真こそ送らずに済んだが、学生証の写真が悪用されることを恐れているという。「相手も顔写真を公開していたから信用してしまった。今思い返すと年齢も嘘かもしれない」。

またある女子中学生は、友人とLINEで盛り上がっていたところ、途中で相手の保護者が出てきたという。なぜか下着のサイズの話になり、裸の写真を送ってしまったそうだ。不安になって改めて友人に連絡をとったところ、アカウントが乗っ取られていたことがわかったという。最初のメッセージから乗っ取り犯のものだったというわけだ。

一度送ってしまうと、画像を転送されたりインターネット上に公開されるリスクがある。たとえ信頼できる相手にでも、そもそも裸の写真は撮らない・送らないことが大切だ。周囲の子どもたちにもしっかりとリスクと対策を伝えてほしい。

もし画像を送ってしまいインターネット上に公開されてしまった場合でも、画像を削除してもらえる可能性がある。諦めずにセーファーインターネット協会運営のセーフラインなどに相談してみてほしい。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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