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少子化対策の効果?「中国の結婚数が10年ぶりに増加」を図解してみた

高口康太ジャーナリスト、翻訳家
中国・上海市の結婚式(写真:ロイター/アフロ)

下がり続けていた中国の婚姻数、10年ぶりに増加に転じました。

結婚する人が減り続けていた中国で、2023年の婚姻数が768万組となり、10年ぶりに増加に転じた。前年まで続いた厳格な新型コロナウイルス対策が解除されたことに加え、辰(たつ)年の24年に子どもを産むと縁起がいいと考える人が数字を押し上げたことも背景にあるようだ。
中国、10年ぶりに婚姻数増加 「縁起いい」と辰年生まれ望む影響も(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

中国の少子化は世界最悪ペースで進行していますが、その原因は未婚化、晩婚化にあります。結婚した夫婦が子どもを作らないというより、結婚しない人が増えている、結婚年齢が遅い人が増えていることが原因なのです。中国政府も育児休暇をのばしたり、出産一時金を出したりと対策を打ち出してきましたが、たいした効果は見込めないとも言われてきました。

今回の婚姻数増加は果たしてその効果が出たのでしょうか。それともコロナで結婚を遅らせていた人の分が積み増された結果なのか、あるいは記事にあるように辰年特需なのでしょうか。

出所:中国国家統計局、中国民政部の資料をもとに筆者作成。
出所:中国国家統計局、中国民政部の資料をもとに筆者作成。

簡単に答えが出るような話ではありませんが、大づかみでも理解できればと、過去10年の結婚数及び前年からの増減についてグラフを作ってみました。

これだけで何かが言えるわけではありませんが、2020年から2022年にコロナショックがあった傾向は可視化できています。この間に結婚を遅らせていた人が一気に結婚したために増加した可能性は高そう。

ここから増加トレンドに転じる可能性は低いと考えると、晩婚化、未婚化のさらなる対策が導入されそうです。強制的に出産数を制限した「一人っ子政策」を実施するなど、強大な権限を持つ独裁政権だけに、民主主義国では考えられない対策が講じられるのではともささやかれています。

人口学者としても知られる、大手旅行予約サイト・トリップドットコム創業者の(ジェームズ・リャン)氏は義務教育を9年間から7年にの短縮する策を提唱しています。若くして就職すれば、結婚できる余裕が生まれる年齢も早まるという発想。学力低下が気になるところですが、「中国人の学力は世界トップクラスだから問題なし」と主張しています。

もっとストレートに避妊禁止という主張も。香港の不動産企業・中原集団の施永青(シー・ヨンチン)主席は「出生という基本的な責任を果たすまで、例えば二人の子供どもを作るまではコンドームを買えないという規制を検討せよ」と主張しました。

上記は提案レベルですが、実際に実施されている施策として、「仲人への補助金」があります。陝西省安康市嵐皋県では農村の独身青年に結婚相手を紹介した仲人には1組あたり1000元(約2万円)の報奨金を支払う制度が導入されました。現時点では農村の結婚難解消が主眼でごくごく一部の地域で試行されているだけですが、効果があれば拡大される可能性はあるでしょう。

世界的に見ても晩婚化、未婚化への有効な対策は見当たらないだけに、こうした珍発想も含めた対応が模索されることになりそうです。

ジャーナリスト、翻訳家

ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。二度の中国留学を経て、中国を専門とするジャーナリストに。中国の経済、企業、社会、そして在日中国人社会など幅広く取材し、『ニューズウィーク日本版』『週刊東洋経済』『Wedge』など各誌に寄稿している。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。

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