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スマホでaiwa復活、“日本のモノ作り“の過去と未来をつなぐ

高口康太ジャーナリスト、翻訳家

”あの”アイワのスマートフォン、タブレットが発売される。

aiwaはかつて一世を風靡した日本の電機製品ブランド。1966年に日本初となるコンパクトカセットレコーダを発売、1980年代にはヘッドホンステレオ「カセットボーイ」は世界的な大ヒットを記録した。40歳以上の世代には「最初のラジカセがアイワだった」という懐かしさで記憶している人も多いのではないか。21世紀に入るとデジタル化の波に対応できず、aiwaブランドは人々の目から消えていった。

今回、EMS(電子機器受託製造)企業のJENESISがアイワ・ブランドのライセンスを取得し、スマートフォンやタブレットなどの製品をリリースする「aiwaデジタル」シリーズを立ち上げることとなった。

世界のスマートフォン市場を見渡すと、米国のアップル、韓国のサムスン、そして中国のシャオミやOPPOといった巨大メーカーの寡占化が進んでいる。果たして、このタイミングでaiwaブランドでのスマートフォン参入に商機はあるのだろうか。

「逆張りに見えるかもしれないが、スマートフォンという製品ジャンル自体が成熟化し、出荷台数の大きな中国メーカーの存在感が高まっているタイミングは、むしろ我々のような小回りのきく企業にとってはチャンスだ」

藤岡淳一CEO。
藤岡淳一CEO。

JENESISの藤岡淳一代表取締役社長・CEOは言う。日本のスマートフォン市場、特に携帯電話会社以外のチャネルで販売されるオープン市場では、シャオミ、オッポ、モトローラなどの中国メーカーの存在感が高まっている。圧倒的なコストパフォーマンスが武器だが、規模の大きさゆえにローカライズなど日本市場向けの細やかな対応が難しい側面もあるという。

「カタログスペックと価格だけの比較では中国メーカーには太刀打ちできないが、ニッチなニーズに対応したり、修理などのアフターサービスを充実させたり、それ以外のフィールドで訴求していきたい」(藤岡CEO)

今回発表されたaiwaデジタルのスマートフォン「JA2-SMP0601」は割り切った低コスト構成で1万6800円という低価格を打ち出している。高性能スマホを使いこなしたい層にとっては物足りない性能だが、基本的な使い方だけできればいいからともかく安くというニーズを狙ったコンセプトだという。

日本のモノ作りの過去と未来をつなぐ

1976年生まれの藤岡CEOにとってもaiwaは憧れのブランドだったという。aiwaブランドを継承した以上、その「aiwaらしさ」を追求したいと語る。第一弾としては法人需要も見すえた割り切った安さを打ち出したが、今後は日本のモノ作りと過去と未来をつなぐチャレンジを構想している。

過去の継承とは、熟練エンジニアの力を借りての音響の追求だ。音響のチューニングには職人芸的な暗黙知と感覚が必要になる。かつての日本家電黄金期を支えたエンジニアも高齢化している。今がその力を借りられる最後のチャンスという点も、今、参入を決めた理由だと藤岡CEOは言う。

「そうしたエンジニアの方々にお声がけすると、aiwaにならば手を貸さないわけにはいかないとおっしゃっていただける」(藤岡CEO)。

そして未来を見すえた取り組みも発表された。イノベーティブな製品の開発に取り組むハードウェア・スタートアップは日本にも少なくないが、ソフトウェアやサービスでの起業とは異なり、開発から量産までに時間も資金もかかるため、成功の道は果てしなく厳しい。「Hardware is hard」(ハードウェアは厳しい)という言葉まであるほどだ。

JENESISはEMSとしてこれまでハードウェア・スタートアップの製造支援に取り組んでおり、30社以上のスタートアップの製品を世に送り出してきた。aiwaデジタルではさらに一歩踏み込んで、販売まで一緒に取り組む体制を構築する。

第1弾としてはデジタル楽器「インスタコード」の量産機発売、そして紛失防止デバイスのスタートアップ「MAMORIO」(マモリオ)のサービスをaiwaデジタルのスマートフォンに順次採用していくことが発表された。

日本のモノ作りのレガシーを掘り起こしつつ、スタートアップという新たな力を育てる。新生aiwaの目指すビジョンだという。

ジャーナリスト、翻訳家

ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。二度の中国留学を経て、中国を専門とするジャーナリストに。中国の経済、企業、社会、そして在日中国人社会など幅広く取材し、『ニューズウィーク日本版』『週刊東洋経済』『Wedge』など各誌に寄稿している。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。

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