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営業利益86%減、転換に挑むアリババ

高口康太ジャーナリスト、翻訳家
アリババグループ・北京オフィス(写真:ロイター/アフロ)

中国EC最大手アリババグループは2月25日、2022年会計年度第3四半期(2021年10~12月)の決算を発表しました。

ECのGMV(総流通額)は中国国内が+7%、海外(非中国)が+18%という結果になりました。全般的に立派な数字に見えますし、アマゾン、マイクロソフトに次ぐ世界3位のアリババ・クラウドの売上も20%成長となれば立派なものに思えますが、ローンチ以来伸び率は最低になった(前期が33%増、前年同期が50%)とのことで、伸び率鈍化を懸念する声も上がっています。米政府がアリババ・クラウドを規制するとの噂もあり、先行きには不安要素もありますが、とはいえ、中国市場で約40%のシェアを握るトップ企業の座はそう簡単には揺るがなそうです。

アリババグループ事業別売上。出所:アリババグループ四半期報告。
アリババグループ事業別売上。出所:アリババグループ四半期報告。

株価下落の理由

なんだかもう、景気のいい数字ばかりが並んでいるようですが、この四半期決算発表後にアリババは株価を下げています。2020年10月のピークから下がり続けているところで泣きっ面に蜂で、最盛期の3分の1近くになってしまいました。

営業利益が前年同期比86%減というのが投資家の失望につながりました。その要因となったのは中国市場における顧客管理売上がマイナス1%と前年割れにつながったためとみられます。

アリババグループ事業別売上細目。出所:アリババグループ四半期報告。
アリババグループ事業別売上細目。出所:アリババグループ四半期報告。

タオバオやTモールなど、アリババの主力ECモールは第三者が出店し、アリババは管理費や広告費を徴収するというビジネスモデルです。この本丸の売上がマイナスとは何が起きているのか、というわけです。

昨年4月にアリババは独占禁止法違反で約3000億円もの行政制裁金が科されましたが、加えてさまざまな業務改善を行いました。管理費の引き下げもその一つです。また、コロナ流行に伴う中国市場の冷え込みによって、広告出稿も減速したことも響いた可能性があります。

10億人の中国消費者、3億人の海外消費者

とまあ、ケチをつけるような話ばかりを書いてきましたが、悪い話ばかりではありません。

アリババグループが売上以上にこだわっている数字がAAC(年間アクティブユーザー、過去1年に1度以上ネットショッピングを利用したユーザー数)です。中国市場で前年比1億2400万人増の9億7900万人に。アリババグループは今年3月までに中国市場で10億人突破を目標としていますが、この達成も間近とのことです。

また、海外市場で8100万人増の3億1000万人に達し、ついに3億の大台に乗せてきました。しかも伸び幅がえぐい。日本でも中華コスメや激安アパレルなどを、アリエキスプレスで買っている人はかなり増えているようです。

アリババグループ年間アクティブユーザー。出所:アリババグループ四半期報告。
アリババグループ年間アクティブユーザー。出所:アリババグループ四半期報告。

ARPU引き上げ、切り札は……

アリババグループのダニエル・チャンCEOは10億人を達成したら、さすがにもうユーザーは伸ばせないので、次はARPU(1人当たりユーザー売上)を伸ばすと話しています。

そのための切り札はなんでしょうか?

今、中国で噂されているのは直営事業の強化です。前述の通り、アリババは第三者企業が出店するモールビジネスが主力なのですが、アリババ自身が在庫を持って売っていく直営ビジネスを強化するというのです。在庫リスクを抱えることになりますが、最終販売価格に占めるアリババの取り分はより高いものとなります。

すでに猫享という直販ECサービスをローンチする見通しが伝えられています。これが各ブランドがメインとしてきたTモールと競合する可能性が濃厚。

「Tモールを公式サイトがわりに使いましょう」の時代から大きな転換です。日本企業も中国でのネット検閲の影響から独自サイト開設が難しく、とりあえずアリババに乗っかっておく企業が多かった中、アリババ内に直営という強力なライバルが出現する状況は結構大変です。

アリババの社是は「让天下没有难做的生意」。公式日本語訳は「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる」ですが、もっと原語に近いニュアンスで訳せば、「世界からきっつい商売をなくす」。零細ショップなど、個人事業者レベルのビジネスをもサポートすることを使命としてきましたが、直営ビジネス強化となれば大きく企業としての方向性を変えることになります。もしそうなれば、「中国進出?とりあえずアリババ」だった日本企業にとっても、大きな衝撃です。

噂で終わるのか、時代の流れに沿って大変革に乗り出すのか。

ともあれ、アリババ自身も、そして中国ニューエコノミーも今、大きな転換期を迎えています。

ジャーナリスト、翻訳家

ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。二度の中国留学を経て、中国を専門とするジャーナリストに。中国の経済、企業、社会、そして在日中国人社会など幅広く取材し、『ニューズウィーク日本版』『週刊東洋経済』『Wedge』など各誌に寄稿している。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。

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