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「ギータ2世」ソフトバンク20歳大砲候補。悩んだ先にあった手応えの一撃と、ファーム二桁本塁打

田尻耕太郎スポーツライター
秋季キャンプ中の9日は居残り特打に励んだ

 ソフトバンクは9日より、来季への契約更改をスタートさせた。

 初日のこの日は、秋季キャンプ地の宮崎市内のチーム宿舎で九鬼隆平捕手、水谷瞬外野手、笹川吉康外野手、川原田純平内野手が交渉に臨み、いずれも来季契約書にサインをした。

20歳笹川「去年までなら飛んでいなかった」

 194cmの高身長で大砲候補として期待され、「柳田悠岐2世」の呼び声もある笹川は20万円アップの年俸620万円で更改した。大きな経験を積んだプロ2年目だった。20歳の若鷹はまだ一軍デビューを果たしていないものの、今季の二軍公式戦では前年の6打席から大幅増加の207打席に立った。70試合出場で打率は.195と振るわなかったものの4本塁打を放った。

 今季を振り返って「苦労して悩んだ時期もあった」と素直な思いも口にしたが、「三軍とは違うレベルの投手とも対戦できた」と話したように、7月2日のファーム交流戦・日本ハム戦(鎌ヶ谷)ではかつての沢村賞右腕・金子千尋から右越えの特大本塁打を放った。

 これも自信になる一発だったが、手応えを掴む大放物線を描いたのは9月1日の阪神戦(タマスタ筑後)だった。

「去年から今年の春先までは真っ直ぐ待ちの中で、変化球が来ると泳がされていた。結果を出すためには何か変えなきゃいけないと思って、打撃を見つめなおして、シーズン途中からは真っ直ぐ待ちの変化球に対してもフルスイングが出来るようになった。阪神戦でのホームランは抜けたフォークをバックスクリーン左へ運んだ。去年までなら飛んでいなかったと思います」

二、三軍合わせて12発「一歩前進」

体勢が崩れそうなほどフルスイングできるのが大きな魅力。柳田選手にそっくりな部分でもある
体勢が崩れそうなほどフルスイングできるのが大きな魅力。柳田選手にそっくりな部分でもある

 今季は二軍の4発に加えて、三軍戦では8発を放った。合計で12本塁打。一つの目安である二桁をクリアした。「1年目は三軍で2本塁打だけ。本当にホームランバッターになれるのかなと思っていたけど、今年は一歩前進した」とシーズン終盤に語っていた。

 来季は一軍デビューが目標になるし、その先のレギュラー獲りやレギュラー定着は当然目指すべき道だ。その足掛かりとして「来年は二軍でホームラン王」と口にした。

 宮崎秋季キャンプでは、第二球場のライト奥にある高い防球ネットを越える打球を何本も放っているという。覚醒の気配を見せたギータ2世のロマン砲、来シーズンはかなり楽しみだ。

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九鬼(現状維持)

「今季はとにかく打てなくて、一軍にも上がれなかった。春季キャンプはA組だったのにすぐに落ちて、一年間くすぶったシーズンだった。この秋季キャンプはとにかく打撃を積極的に。課題として浮き彫りになった打撃を必死にやっています。来年は7年目。一年が勝負。やるしかない」

水谷(現状維持)

「(右肩痛で出遅れた)今シーズンは、ほとんど野球をやっていないシーズンになった。悔しいという言葉で片づけられないシーズン。今は課題だらけ。たくさんある中で、(秋季キャンプで)少しでも上達して、来季はその課題が潰れるか小さくなるように今は取り組んでいます」

川原田(10万円アップ)

「今季途中で一軍を経験して、まだまだ自分の実力が足りていないと痛感しました。一軍選手との力の差を確認した意味では、とてもいい経験になった。打撃でも守備でも、すべてにおいて全然通用しない。自分が一軍で通用できるようにと、秋のキャンプに取り組んでいるところです」

※写真はすべて筆者撮影。また、金額については推定

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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