元巨人の怪力モタ「鈴木誠也バット」で確信弾!6戦4発&3盗塁。夢はNPB復帰「12球団どこでも」
プロ野球独立リーグ「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」の火の国サラマンダーズ対福岡北九州フェニックスが、熊本市のリブワーク藤崎台球場で行われた。
タイブレークで火の国サヨナラ勝ち。3連戦を勝ち越す
【4月10日 ヤマエ久野 九州アジアリーグ リブワーク藤崎台球場 849人】
北九州 `0000000400 4
火の国 `3010000001× 5
(延長タイブレーク、1死満塁からスタート。十回は選択打順)
<バッテリー>
【北】湊、本野、力丸、本村、北方、●松本(2敗2セーブ)――ラモン
【火】松江、石本、西島、◯橋詰(1勝0敗)――深草、西
<本塁打>
【北】ラモン1号 【火】モタ4号
<スタメン>
【北】5大河 6妹尾 Dルーカス 2ラモン 3宮本 4神谷 7吉岡 9古賀 8宇土
【火】4中村 9小林 7水本 Dモタ 5高橋 3佐藤 6中野 2深草 8柏木
<戦評>
火の国が延長タイブレークでサヨナラ勝ちした。
序盤から火の国ペースで試合は進んだ。初回に小林の犠飛とモタの4号2ランで幸先よく3点を先制。三回には佐藤が右前適時打を放って4点をリードした。
しかし、北九州も初回途中から登板した2番手の本野がしり上がりに調子を上げていき、5回2/3の好リリーフを見せた。すると八回表、火の国の守備の乱れもついてそれまで好投していた火の国左腕の松江を攻略。2番手・石本も攻め立ててラモンが1号2ランを放って4-4の同点とした。
延長戦は1死満塁からのタイブレーク方式。十回表、球場のボルテージを上げたのが火の国4番手右腕の橋詰だった。この局面で直球とフォークを織り交ぜて、ルーカスとラモンの中軸コンビから連続三振を奪った。
すると十回裏、先頭の水本がライト線へ鋭く弾き返すサヨナラタイムリー。火の国が北九州との3連戦を2勝1敗と勝ち越した。(了)
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「日本の方がチャンスある」NPB復帰を夢見て再来日したモタ
怪力を見せつけた。火の国のイスラエル・モタ外野手が初回、1死二塁で北九州の先発・湊から豪快な一発を放った。モタは打った瞬間に確信。打席の中で見守った打球はもの凄い勢いで、リブワーク藤崎台球場の名物である左中間の巨大クスノキをめがけて飛んでいき、そのまま外野芝生スタンドに突き刺さった。
この日、試合前練習でバットを折っていた。使用していたのは長さ33.5インチのもの。しかし、モタは34インチのバットを求めていた。すると球団の山岸マネジャーが「チーム(所有の)バットの中にあるはず」と言い、チームメイト数名も一緒になって探した。
なぜ鈴木誠也のバットを火の国サラマンダーズが所有していたか
そこで見つかったのが、現シカゴ・カブスの鈴木誠也が広島カープ時代に使用していたバットだった。火の国には昨季、元広島の小窪哲也(現広島コーチ)が在籍。その際に、古巣から火の国のために野球道具を提供してもらっていたという。
「鈴木選手のバットは重くて、チームでは誰も使えなかったんです」(PIGBOSS選手兼内野守備コーチ兼打撃コーチ)
モタもそのバットでロングティーを行うと、すぐに大のお気に入りに。「いつも使っていたバットと材質が違う。メープルだ」と、パワーヒッターに適しておりそれも喜んだ。
「ホームランはいい感触だった。昨日までの2試合で打てなくて悔しかったけど、良い準備をして臨めたと思います」
明るく陽気でチームに溶け込む
3月に火の国デビューをして以来、6試合で4本塁打と圧倒的なパワーを発揮している。また、三回には四球で出塁すると、身長188cm、体重98kgの巨体で全力疾走して二盗を成功させた。じつはここまで3盗塁と足でも魅せている。
明るいお茶目なドミニカンは、巨人で将来を嘱望されていた。米大リーグ・ナショナルズ傘下のマイナーでプレーした経験ももつが、2017年に母国で行われた巨人のトライアウトを受験。この時は不合格となったが、翌2018年に再挑戦して見事日本行きを果たした。
巨人には育成選手で入団したが、当時から打撃の破壊力は抜群と評価されて、さらに2020年の春季キャンプでは原辰徳監督から「MVP」と評されるまで成長。見事に支配下登録を勝ちとった。その会見の際に、両親からのサプライズムービーが流れると大粒の涙を流して周囲の感動も誘ったことで話題になった。
巨人の一軍では、2020年8月22日の広島戦で薮田和樹から2ランを放ち来日初安打、初本塁打、初打点を飾った。9試合で9打数2安打、1本塁打、4打点、1盗塁。しかし、同年限りで巨人を自由契約となり、母国へ戻っていた。
馬原監督が語るNPB復帰への3つのポイント
先述したとおり、かつては米球界で活躍を目指した時期もあったが、モタは再び日本へ帰ってきた。
「僕は日本野球の方が、チャンスが多いと思った」
巨人時代と同様に明るいキャラが火の国でも好評で、チームにはすぐ溶け込んだ。馬原孝浩監督も「彼は本当にマジメ。それが一番安心しました」と笑顔を浮かべる。
また、馬原監督はモタについて「パワーは申し分ない。当たればどこまでも飛んでいきます。あとはNPB復帰のため、それ以外のところの評価基準もしっかりクリアしないといけない」と話す。全力疾走を怠らないこと、最低限の守備力、そして審判へのマナーだ。「本人は意識をしてしっかりやっていますよ。審判への不満も、本当は三振の恥ずかしさから言いたくなるんです。でも、我慢しています」。守備は現在練習中で、基本的にはレフトとファーストとなりそうだ。
モタは再びNPBのトビラをこじ開けることが出来るか。「12球団、どこでも行きます!」。陽気なドミニカンは、この取材の中でも笑顔で精一杯アピールしていた。
※写真はすべて筆者撮影