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「世界の周東」より速い!?鷹にすごいルーキーが現れた。野村勇「同じくらいは」

田尻耕太郎スポーツライター
ダイヤモンドを駆けまわるスピードスターになれ(筆者撮影)

 球界のスピードスターになれる可能性を秘めた、ワクワクさせてくれる逸材が現れた。

 福岡ソフトバンクホークスのドラフト4位ルーキーの野村勇内野手だ。社会人・NTT西日本から入団した25歳は、即戦力との期待が高く今春キャンプはA組で過ごしている。

 ソフトバンクは22日、今年初の対外試合となる「球春みやざきベースボールゲームズ」で埼玉西武ライオンズと対戦した。野村勇は右前腕の張りの影響でベンチスタートだったが、藤本博史監督は「適性を見極めるため」と代走テストを試合前から予告していた。

代走”デビュー”でいきなり二盗、三盗

「代走で行くぞと言われていたので」と落ち着いていた(筆者撮影)
「代走で行くぞと言われていたので」と落ち着いていた(筆者撮影)

 その場面は六回に訪れた。先頭で中前安打を放った上林の代走で対外試合デビューを果たした。続く柳町の2球目にスタート。「スタートは悪かったけど、送球が逸れてくれて助かった」と苦笑いしたが、相手捕手を慌てさせるスピードも立派な武器だ。二盗を成功させると、さらに1アウト後の海野の打席の初球に三盗もあっさり決めた。もちろんこの日が初見の相手投手だ。にもかかわらず、完全にモーションを盗んでいた。

「三盗はサインでなくて自分の判断でした。ベンチでは『アウトになってもいい。思い切って行ってこい』と言われていたので、気持ちを整理して臨めました」

 藤本監督は野村勇の走力について、このように評している。

「タイムを計ったら佐藤直樹よりも速いよ」

 佐藤直はチームきってのスピード自慢。2020年にはウエスタン・リーグで失敗0での盗塁王に輝いている。

佐藤直、周東より速いとの証言

 さらに、藤本監督は驚きの証言を続けた。

「本多コーチは、周東よりも速いと言っていた」

 周東は言わずと知れた球界トップレベルの脚力の持ち主だ。2020年には50盗塁を決めて盗塁王タイトルを獲得し、そのシーズン終盤に13試合連続盗塁成功の“世界記録”を樹立している。その武器が評価されて侍ジャパンの一員にも選ばれた。

 では、野村勇自身はその賛辞をどのように思っているのか。

「まだ周東さんの走りを実際に見たことがないので分からないですけど、そう言ってもらえるのは嬉しいです」と初々しい笑みを浮かべた。ただ、当然、周東の走塁はテレビで見たことはある。その時の感想は――。

「自分の中では、同じくらいは走れるんじゃないかと思いました。ただ、実際に見たらめちゃくちゃ速いかもしれませんけど(苦笑)」

遅咲きのスピードスター

 興味深いことに「小さな頃は決して足の速い方ではなかった。高校くらいから身長が伸びて筋力がついて速くなったと思うけど、自分の足が武器だと思えるようになったのは大学4年生になってからです」と回想する。

 遅咲きのスピードスターだ。或いはまだ伸びしろを残しているかもしれない。

 プロの世界で鍛錬を積んでさらに体の使い方などを覚えていけば、さらなる素質が開花する可能性もある。夢のような走力で魅了する、そんな未来を楽しみに期待している。

野村勇(のむら・いさみ)

 1996年12月1日生まれ、兵庫県出身。右投右打。身長175cm、体重83kg。B型。神戸市立舞子小学校時代は垂水ファイターズで、舞子中学校時代は神戸須磨クラブでプレー。中学ではジャイアンツカップ出場歴あり。藤井学園寒川高校、拓殖大学を経てNTT西日本へ。都市対抗と日本選手権で8強の実績あり。2021年ドラフト4位で入団。背番号99。

 野球を始めたきっかけは小2の時にクラスメイトに誘われたため。好きな食べ物はラーメン二郎。嫌いな食べ物はグリーンピース。ニックネームは、ドラフト時のプロフィールには「タラコ」と記していたが、キャンプで松田宣浩から「イサミちゃん」と命名されていた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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