Yahoo!ニュース

メジャーも興味を示した153キロ右腕西島。ホークスOB指導者への感謝と、ドラフトへの思い

田尻耕太郎スポーツライター
力投する火の国サラマンダーズの西島篤投手(筆者撮影)

 9月23日、プロ野球独立リーグ「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」の公式戦が熊本県の山鹿市民球場で行われ、火の国サラマンダーズと大分B-リングスが対戦した。

 発足1年目の同リーグも終盤。すでに初代王者は火の国に決まっている。

 この日は火の国のホーム最終戦。祝日ということもあり、620人が来場した。同リーグの残り試合はあと2試合。25日、26日に大分ホームで、佐伯中央病院スタジアムで2連戦が行われる。

 また、同リーグには来季から実業家の堀江貴文氏が創立した福岡北九州フェニックスが加盟することが正式決定している。

河添が満塁弾含む6打点

【9月23日 ヤマエ久野 九州アジアリーグ公式戦・30回戦 山鹿市民球場 620人】

大分  ‘000020000 2

火の国 ‘00157000× 13

<バッテリー>

【大】●伊藤、秀島、長瀬、帖佐、江藤――後藤、武部

【火】◯佐野、水野、石本、西島、石森――深草

<本塁打>

【火】河添・満塁、深草・ソロ

<スタメン>

【大】8廣沢 6川上 4新井勝 D白崎 7山下 5奥野 9花岡 3渡邊 2後藤

【火】4高山 3瀬戸口 D吉村 7水本 3高橋 9浦木 5河添 2深草 6橋中

満塁ホームランを放った河添(左)・筆者撮影
満塁ホームランを放った河添(左)・筆者撮影

<戦評>

 火の国が大勝した。中盤に猛攻を見せた。四回は河添の2点タイムリー、深草のスクイズ、瀬戸口の2点三塁打で5得点。五回も無死満塁から河添がレフトへ満塁ホームランを放つと、続く深草も左翼ポール直撃のソロと勢いが止まらない。さらに水本の2点適時打でこの回は一挙7点を奪った。

 投手陣は初先発だった佐野がナックルボールで相手打線を翻ろうして5回1失点。シーズン序盤は制球難に苦しみ、登板機会すらほぼなかった右腕が、終盤戦になり確かな成長を示す投球を続けている。

ファンも参加しての優勝セレモニーが行われた(筆者撮影)
ファンも参加しての優勝セレモニーが行われた(筆者撮影)

 終盤は大差がついた展開だったが、ホーム最終戦ということもあり水野、石本、西島、石森の勝ちパターン継投で熊本のファンを喜ばせた。

 試合後にはリーグ優勝セレモニーも実施された。(了)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

剛腕リリーバーの西島篤「プロへの思いはある」

 火の国サラマンダーズのセットアッパー、西島篤投手は独立リーグプレイヤーとして初めて戦った数か月間を振り返り、「すごく時間が経つのが早かったです」としみじみ振り返った。

「去年までは社会人の熊本ゴールデンラークスでプレーしていました。社会人野球は都市対抗と日本選手権の2つの大会に向けた動きになります。シーズンを通して公式戦が続くのはまた違った毎日でした」

 身長183cm、体重90kgの大型右腕の西島はこの日も八回のマウンドに上がった。三ゴロ、見逃し三振、空振り三振で1回をぴしゃりと抑えた。これが公式戦25試合目の登板。3勝1敗、防御率2.52。25投球回で36三振を奪っており、奪三振率12.96と高い水準を示している。

成長を後押しした馬原ともう一人のホークスOB

「もともと力んで投げるばっかりでコントロールに苦労しましたが、ピッチングGMの馬原(孝浩)さんからアドバイスも頂く中で、上手く力を抜いてバランスよく投げられるようになり、安定するようになりました」

 キャッチボールの延長のような感覚。それでも球速は落ちるどころか伸びた。9月10日の交流戦・高知ファイティングドッグス戦(リブワーク藤崎台)では自己最速の153キロをマークした。

 出身は長崎県。九州文化学園高校から長崎国際大学を経て、社会人入りし現在に至る。大学時代にもホークスOB指導者と巡り合った縁がある。現在も同大学でコーチを務める小椋真介コーチが、自身が4年生になる時に就任した。

「カッコいい人だなと思いました(笑)。手本も示してくれるけど、すごく動けていたし。小椋さんからはマウンドでどれだけ強気になれるかということを教わりました」

 野球はゴールデンラークスの一員だった前年で辞める考えもあったが、「もう一年」と覚悟を決めて独立リーグに身を投じた。「プロへの思いはあります」。自分と同じリリーフ投手にはプロ注目左腕の石森大誠がいる。石森を目当てに足を運んだスカウトの前で好投を続けてきた。その中で米メジャーのスカウトが西島に興味を示していた。

 まずは10月11日のNPBのドラフト会議で名前が挙がるのを待つ。「今はまだ、楽しみな心境ですかね」。野球人生をかけた一年の終わりに朗報は届くだろうか。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

田尻耕太郎の最近の記事