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【ホークス育成新人File】1位、佐藤宏樹は異例のプロ入り。勝負は23年から

田尻耕太郎スポーツライター
昨年12月の入団発表に臨んだ際の佐藤投手(筆者撮影)

 東京六大学野球リーグの慶應大学から育成ドラフト1位でソフトバンク入りした佐藤宏樹投手。大学日本代表にも選ばれたことのある左腕だが、彼がマウンドに立つ姿を見られるのはまだしばらく先になる。

慶大で1年生からエース級の活躍

 もともとはドラフト上位候補に名が挙がる投手だった。秋田県出身。大舘鳳鳴高校では地方大会で上位に進出し県内では注目されたが、全国的には無名の存在だった。しかし、慶應大学に入学すると1年春からベンチ入りして5試合に登板して防御率1.93と好成績を残し、一躍注目を浴びる投手となった。そして同年秋のリーグ戦では9試合に投げて3勝0敗。なかでも防御率1.03はリーグ1位で早々に主力の仲間入りを果たした。

 しかし、大学2年生以降は左肘の怪我に悩まされ続けた。一旦復帰した3年生春のリーグでは自己最速の151キロをマークしたが、その後はまたリハビリ。4年生となった昨年4月に左肘の神経移行とクリーニング手術を受けたものの投げた後に状態が上がらず、ドラフトを前にした昨年10月に左肘のトミー・ジョン手術を受けた。

「浪人も覚悟をした」

 佐藤はそのように話したが、育成という選択肢も頭の中にはあった。その中でソフトバンクから育成ドラフト1位での指名があった。

ソフトバンクが提示した復帰プラン

 担当スカウトは慶大の先輩で同じ左投手の山本省吾だ。球団が考えているリハビリの過程や復帰までのプランが細かく説明された。なかでもトミー・ジョン手術は術後12カ月から14カ月で実戦復帰できるケースもあるが、万全な状態になるまではさらに時間を要するともいわれる。球団は佐藤に対して「本格的に勝負するのは3年目からでいい」と提示。2年間の猶予期間が設けられた。

 異例のプロ入りだ。それでもソフトバンクは佐藤というピッチャーが欲しかった。一体どれほどの潜在能力を秘めているのか。その答えが出るのはしばらく先になるが、かなり楽しみな左腕であることは間違いない。

 だが、それを認めさせる佐藤が、それだけの潜在能力を持つことの裏付けでもあるのだ。

 また、佐藤自身は「育成だったけど、ソフトバンクだから」と前向きになれた理由も口にした。特に大きいのが境遇の似ている大竹耕太郎の存在だ。

「僕が1年生のとき、大竹さんは早稲田大学の4年生でした。自分も1軍に上がるチャンスがあるという希望を感じさせてくれた」

 直接の面識はないが、入団が決まるとSNSを通じてお祝いのコメントが届いたという。また、慶大の1学年先輩になる柳町達をはじめ、大学日本代表の合宿で寝食も共にした津森宥紀や海野隆司ら身近な先輩の存在も心強い。

佐藤宏樹(さとう・ひろき)

 1999年2月18日生まれ、21歳。秋田県出身。AB型。左投左打。桂城小学校、大舘第一中学校、大舘鳳鳴高校を経て慶應義塾大学から2020年育成ドラフト1位で入団。

 性格は負けず嫌い。長所は誰とでも仲良く出来ること。野球を始めたきっかけは「小学校のグラウンドから家が近く、練習しているのを部屋で見ていて憧れを抱いた」から。

 タイトルで最も欲しいのは沢村賞。座右の銘は「精神一到」。高校の時からきついメニューや困難な状況でも自分のことを信じ、精神を集中させて物事に取り組み乗り越えてきた経験があるから、というのが理由。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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