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一軍より明確、二軍の「格差」。総年俸13億円スタメンに挑んだ250万円投手の結末は!?

田尻耕太郎スポーツライター
タマスタ筑後でこの2人で一緒に打撃練習をするとは・・・

杉山が12奪三振の力投で3勝目

 9月1日、福岡ソフトバンクホークス二軍は、タマホームスタジアム筑後で行われたウエスタン・リーグ公式戦でオリックス・バファローズ二軍と対戦した。

【9月1日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 620人】

オリックス  000000020 2

ソフトバンク 30100000× 4

<バッテリー>

【B】●東(0勝1敗)、左澤、鈴木、東明――フェリペ

【H】高橋純、◯杉山(3勝3敗)、S渡邉雄(2勝2セーブ)――海野

<本塁打>

【B】白崎2号

<スタメン>

【B】8西浦 6紅林 4太田 D白崎 3勝俣 7西村 5大下 9根本 2フェリペ

【H】4三森 3内川 7バレンティン Dデスパイネ 9柳町 8釜元 5リチャード 2海野 6古澤

新背番号で登板した渡邉雄
新背番号で登板した渡邉雄

<戦評>

 ウエスタン首位快走のソフトバンクが6連勝を飾った。これで2位とのゲーム差を4に引き離した。

 初回、1死一塁から3番・バレンティンが左中間適時二塁打で先制。さらに4番・デスパイネも中前適時打、7番・リチャードは1死満塁から犠飛を放ち早くも3点を挙げた。三回には9番・古澤の右前適時打で追加点を奪った。

 先発した高橋純は1回無失点。2番手の杉山が二回から八回途中まで投げて、最後に2ランを浴びるも12奪三振と力投し3勝目をマークした。3番手では前日に支配下登録されたばかりの渡邉雄が「背番号48」のユニフォームでマウンドに上がり、1回1/3をパーフェクト、3奪三振と会心のピッチングを披露した。(了)

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2番内川、3番バレ、4番デスパ

 試合前、ソフトバンクのスタメン発表。大きな声を出せないスタンドのファンは目を丸くして驚いていた。

 2番・内川聖一、3番・バレンティン、4番・デスパイネ。

 まさかこんな重量打線がウエスタン・リーグで実現するとは、少なくとも今年の春頃は想像していなかった。

 推定年俸は内川が2.5億で、後ろの2人がそれぞれ5億円とされている。また、他の6人のスタメン選手も合わせた合計は13億50万円となった。

オリックス育成右腕は期待の星

 一方でこの日のオリックス先発は背番号128の東晃平だった。神戸弘陵高校から2017年育成ドラフト2位で入団して今季が3年目の右腕だ。昨年はファームでチーム最多の96イニングを投げて規定投球回をクリアしている。育成枠とはいえ期待の若手投手だ。

 ただ、背番号3桁というのが現実。推定年俸は250万円である。

 プロ野球の場合、一軍選手には1600万円の年俸が保証されている(※)。しかし、ファームとなればプロ野球選手としての最低保証があるのみだ。

520倍が生まれる「二軍」の事情

 二軍とは、育成の場でもあるが、一軍に近い選手の調整の場でもある。

 そのため、ときに今回のような顔合わせが実現する。オリックス東は自身年俸の520倍のソフトバンク打線に立ち向かったのだった。

 初回、物怖じしたわけではないだろうが、いきなり3点を奪われた。2番・内川を四球で歩かせると、3番・バレンティンに左中間フェンスの上部直撃の適時二塁打を打たれた。さらに4番・デスパイネにも中前適時打を浴びた。

 ソフトバンクの重量打線が火を噴いたわけだが、二塁打の場面で内川は一塁から激走してホームイン。強烈打球を放ったバレンティンも次打者のヒットで、二塁から懸命に走ってホーム生還をした。名前も実績もある彼らがファームの試合でもしっかり全力プレーを見せていた。プロの鑑である。

いつか一軍で

 そして、オリックス東は初回にもう1点を失ったが、投げている球自体には光るものがあった。140キロ台中盤の直球には伸びがあり、落ちるボールもよかった。二回には内川に左前打を浴びた後でも、バレンティンとデスパイネに堂々立ち向かって連続三振を奪った。3回途中で降板するまでに4与四球と制球面の課題をクリアしていけば、表舞台で活躍できるだけの力を十分に感じさせてくれた。

 選手年俸の話題は下世話だったかもしれないが、漫画「グラゼニ」が人気を博すようにプロ野球ファンが興味を惹く要素であることは間違いない。同漫画の主人公である凡田夏之介は自身より年俸の低い選手には上から目線で勝負できるが、高給料が相手だとビビってしまうという描写があった。

 プロ野球界においてなくもない話だが、少なくともこの日の東は堂々と勝負を挑んでいた。彼らの対決を、次回は是非一軍で見たいものだ。

※年間150日以上一軍に在籍した場合。それに満たない選手は、一軍登録時に日割り計算で差額が支給される

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高橋純が復帰登板

先発して1回無失点
先発して1回無失点

 高橋純平がマウンドに戻ってきた。

 6月6日以来となった久しぶりのマウンドで、喜びをかみしめるように右腕を振り抜いた。1回で球数は12球。先頭打者に二塁打を許し、その後四球も与えて1死一、三塁のピンチでは低め直球で併殺打を奪い無失点で切り抜けた。

 高橋純は3月のオープン戦の頃に右肩不調を訴えてリハビリへ。6月6日のファーム練習試合で復帰して1回無失点に抑えたが、その後も右腕の不調がありリハビリ組のままだった。

 登板を終えた高橋純は「投げられたことがまず良かった。違和感もないし、スライダーが縦に変化をしていたのは低めに投げようとしているときの証拠」と納得顔だった。

(文中写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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