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「ポスト熱男」が全治半年の手術から復帰!ホークス増田珠「いつかお立ち台で感謝を」

田尻耕太郎スポーツライター
今月実戦復帰した増田珠内野手

150キロ左腕・大関が粘りの6回2失点

 8月20日、福岡ソフトバンクホークス三軍は、社会人のホンダ熊本とタマホームスタジアム筑後で練習試合を行った。

【8月20日 練習試合 タマスタ筑後 無観客】

ホンダ熊本  000011310 6

ソフトバンク 011000003 5

<投手リレー>

【ホ】島袋、菊江、横川

【H】大関、小澤、田浦

<本塁打>

なし

<スタメン>

【ホ】9山本卓 4北村 5和田 D佐藤 3石井 8宮川 2丸山 7山本力 6正林

【H】7佐藤 5増田 D内川 3黒瀬 9大本 6小林 8中村宜 2石塚 4伊藤

先発した大関
先発した大関

<戦評>

 ソフトバンクは二回に伊藤の左越え適時二塁打で先制。三回には小林の遊撃内野安打がタイムリーとなり、高卒ルーキーたちの活躍でリードを奪った。

 先発した左腕の大関はヒットで再三走者を許すものの、全体的にはコントロールも良く、ストレートの最速は150キロを計測するなど安定していた。

 しかし、タイミングを合わせやすいのか六回までに10安打を浴び、疲れも出てきた中盤に踏ん張れず2点を失って追いつかれた。

 その後、七回から登板した2番手・小澤が2回で4失点と苦しんで勝ち越しを許した。3番手・田浦は走者を出しながらもなんとか無失点に抑えたが、3投手で計15被安打と物足りない結果だった。

 打線は九回裏に清水の適時打などで3点を奪い1点差まで詰め寄ったが、反撃はあと一歩及ばなかった。(了)

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10カ月ぶりの安打「楽しさを感じて」

増田珠内野手
増田珠内野手

 野球ができる喜びを胸に、増田珠が元気いっぱいにグラウンドで躍動した。

「試合の中の緊張感も味わいながら、楽しさを感じてプレーしました」

 今季がプロ3年目の右打ち内野手。強豪の横浜高校時代から強打者として名を馳せた。昨季はウエスタン・リーグでほぼレギュラー格として経験を積んだ。

 111試合出場で打率.278、7本塁打、53打点。打点と長打率(.422)でリーグ2位、出塁率.342は同3位と高水準の成績を残し、昨年9月28日のオリックス戦(京セラドーム)で一軍デビュー。順調にステップを上がっているように見えた。

 しかし、シーズン後の秋季教育リーグ(みやざきフェニックスリーグ)の期間中に右手首に痛みを覚えた。もともと高校2年生の春に手術歴のある古傷だが、その際に埋め込んでいたボルトが折れていたという。途中離脱し、オフに入ると手術を受けた。全治6カ月という診断だった。

「リハビリのあいだ、嫌な夢を見たこともありました。不安や心配はあった。だけど、気持ちが落ちたり、滅入ったりすることはなかった」

 そこは自分を褒めてあげたいと、ニカっと笑った。増田はとにかく明るい。今の若手の中では一番声が出ている。それだけでも将来を期待したくなる存在だ。

長谷川からアドバイス

 また、復帰までの時間を無駄にしなかった。

「長谷川(勇也)さんにアドバイスをもらいました。『馬力を上げろ』と。それまでの僕のトレーニングは、どこか自分にリミッターをかけている部分がありました。だけど、長谷川さんから若い頃から重量をどんどん上げてやっていたと聞きました。だからリラックスして打席に立っていても、ものすごい打球を打つことができる。なので、僕も限界の上へというつもりで、今までよりも重たいものを上げるトレーニングをしています。スクワットは150キロ、レッグプレスは360キロくらいまで上げられるようになりました。レッグプレスはそれまで200キロくらいで止めていました。あの頃の倍の400キロまで行けるかなと思っています」

 もちろん以前ほどの回数はこなせないが、一回のトレーニングへの集中力も増す。量より質だ。そして、そこに慣れてくれば自然と量も増える。そうやって成長を果たしていく。

熱男ならぬ「増男~!」

 先日、8月13日の三軍練習試合の西部ガス戦で実戦復帰。途中出場して1打席に立ったが凡退に終わっていた。この日は「2番三塁」でスタメン出場して、2打数2安打をマークした。

「去年の10月23日以来のヒットです」

 フェニックスリーグでヤクルトと対戦した試合だった。約10カ月ぶりに感じた手応え。その日付をパッと口に出来るほど、増田は飢えていた。

「昨年一軍を経験させてもらって、より一層上でやりたい気持ちは強くなりました。今年中に一軍に上がるという思いは当然持っています。そのためにもまずは三軍で打って二軍に行って、そこでも結果を残さないといけません」

 入団当初から同じ右打者、同じ内野手、そして同じ元気者の松田宣浩に憧れている。「熱男~!」ならぬ「増男~!」のパフォーマンスを一軍で決めるのが夢だ。

「それにグラウンドに帰ってこられたのもトレーナーさんや病院の方々やたくさんの人の支えがあったから。なかなか1人1人に御礼が言えないので、お立ち台の上で感謝の気持ちを伝えたい」

 新たな夢を叶えるためにも、増田はもう立ち止まれない。

※写真はいずれも筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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