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新たな武田伝説!「ついさっき」ひらめいた新球で、中日の左打者はうめき声

田尻耕太郎スポーツライター
タマスタ筑後の二軍戦に登板した武田翔太投手(筆者撮影)

スチュワートJr.も好投

 6月24日、福岡ソフトバンクホークス二軍は、タマホームスタジアム筑後で行われたウエスタン・リーグ公式戦で中日ドラゴンズ二軍と対戦した。

【6月24日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 無観客】

中日     010000000 1

ソフトバンク 02003000× 5

<バッテリー>

【D】●松葉(0勝1敗)、小熊、佐藤――A・マルティネス

【H】◯スチュワート(1勝0敗)、S武田(1セーブ)――海野

<本塁打>

【D】A・マルティネス1号

<スタメン>

【D】D藤井 6溝脇 4根尾 5石川昂 2A・マルティネス 7石岡 3石垣 9伊藤康 8滝野

【H】8真砂 6川瀬 9中村晃 D内川 5野村 3リチャード 4古澤 2海野 7谷川原

<戦評>

 ソフトバンクが快勝した。先制された直後の二回、古澤が同点打を放ち、海野の併殺打の間に逆転に成功。五回には川瀬の適時打と中村晃の2点二塁打で追加点を挙げた。また、4番で出場した内川は2試合連続のマルチ安打。右方向へ内川らしい安打を放ち、唯一凡退した打席も一直と状態の良さをうかがわせた。

 先発のスチュワートJr.は5回4安打1失点。現在試投しているスライダーも効果的だった。2番手で武田が登板して4回無安打無失点の快投でセーブを挙げた。

 中日先発の松葉は140キロ台をコンスタントにマーク。記録はタイムリーを浴びての5失点だったが、いずれの要所でも味方の拙守に泣いた形だった。(了)

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4回を準完全の快投

 昨秋の右肘手術後2度目の登板となった武田翔太投手が快投を見せた。

 六回から2番手で登板。最初のイニングこそボール球が目立ち1つのフォアボールを与えたが、結果的に許した走者はその1人のみだった。4回を投げて61球、打者13人、無安打、無失点の“準完全”ピッチングだった。

 当初は25日に登板する予定だったが、雨天が予想されたために一日早まった。それでも登板イニングは変更なし。右肘手術明けで現在もリハビリ組扱いだが、ほぼ問題ないことをうかがわせた。

 また、武田伝説が一つ増えた登板だった。この日は縦にクッと落ちるスライダーを何球も投げていた。あまり見たことのない球種だった。

「ついさっきの、登板前のブルペンで投げてみたら良かったので、試合でも使ってみました」

 マウンドに上がるほんの少し前の出来事だ。スライダーにカーブのような要素を加えて投げたらどうなるだろうと思い、なんとなく投げてみると「お、使えるな」と手ごたえを感じた。試合でも左打者の膝元におもしろいように決まった。データにない球だ。中日の打者はうめき声を上げて空振りしていた。

19歳デビュー戦でもいきなり新球

 とんでもなく器用な男だ。2012年7月、プロデビュー戦でも同じようなことがあった。誰もが緊張する舞台のはずなのに武田は飄々と投げて、日本ハム打線を無失点に封じ込めた。そして、稲葉篤紀へ投げた勝負球はチェンジアップ。それはプロに入って1球も投げたことのない球種だった。ど真ん中の緩いボールで見逃し三振。19歳ルーキーが名球会バッターを呆然とさせたあのシーンは伝説だ。

 やはり武田は、規格外の右腕だ。

 現在は復活途上。前回の術後実戦初登板は「まだ30点でもいい」と思い投げた。この日は「50点」を目安にしたが、「結果的には70点くらいの投球ができました」と笑顔を浮かべた。

 底知れぬ右腕。一軍マウンドへ戻る準備を着実に整えている。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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