Yahoo!ニュース

ソフトバンクで激化する先発争い。二保旭12年目の開花宣言か、松本裕樹の剛腕か

田尻耕太郎スポーツライター
12年目での初の開幕ローテ入りを目指す二保(筆者、2020年2月撮影)

二保が21日、松本が22日先発へ

 ソフトバンクの先発ローテ争いが次段階に突入する。

 キャンプ後は同日に登板してしのぎを削り合ってきた二保旭投手と松本裕樹投手が別日で先発をすることになった。二保は今日21日のロッテ戦(PayPayドーム)、松本は明日22日の同カードになる予定だ。

 ペナント開幕が延期となり、ソフトバンクの開幕ローテーション自体も現時点ではやや不透明な状況だが、もともとこの両投手が最後の1枠を争っていた。3月9日、PayPayドームで行われた4イニング制の紅白戦にお互い先発で投げ合った。結果は松本が4回1安打無失点に対して、二保は“あと1人”までノーヒットノーランの快投を演じながらリチャードにバックスクリーンへの特大本塁打を浴びて4回1安打1失点となった。

 ただ3月14日の広島とのオープン戦では今度は二保が3回を40球でまとめて1安打無失点。一方の松本は3回で70球を費やして3安打1失点とやや苦しんだ。ただ、松本はこの試合で自己最速を更新する152キロを叩き出した。また、この日は松本が先発、二保が2番手で4回から登板をしていた。

 工藤監督は「ともに遜色ない」とコメント。そのうえで「次は同じ条件で」と両投手の先発起用を示唆していた。

独学で習得したツーシームをどう生かすか

 21日に投げる二保は70~80球をめどに先発する。

 二保の持ち味はゴロを打たせてアウトを積み重ねる投球だ。直球系は独学で習得したツーシームが中心だ。「1巡目や2巡目は相手バッターも球の軌道が分からないから戸惑うと思う。3巡目以降、それが分かった中でどのように配球を組み立てていくか」と課題を口にした。ただ、フォーシームの直球も140キロ台後半をマークしており、力でねじ伏せる投球スタイルでも戦える力は充分兼ね備えている。

「去年はキャンプから先発と中継ぎの両構えで調整をしてきた。今年は先発一本のつもりで、2月のキャンプでもしっかり球数を投げるなどしてきました。調整はしやすい。昨シーズンはショートスターターの役割が多かった。でも、先発でやるからには9回完投を目指すのが自然。6回3失点(自責点)以内のクオリティ・スタートという考え方もありますが、僕はそれで満足したくない。先発を任されるならば長い回を投げることを目指していきたい」

8年前のファームで11勝0敗の実績

 今から8年前の2012年シーズン。二保はウエスタン・リーグのエース格として先発ローテを任された経験を持つ。17試合に登板して11勝0敗、防御率1.44の好成績で最多勝に輝いた。この年、ソフトバンクのファームでもう一人、柱として先発していたのが千賀滉大だった。千賀は21試合7勝3敗、防御率1.33。千賀は防御率、二保は勝利数と二人でタイトルを分け合った。

 確かな潜在能力はここに証明されている。

 プロ12年目を迎えた育成ドラフト出身の右腕が開花宣言へ。21日のロッテ戦も、まずは結果にこだわりマウンドに上がる。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

田尻耕太郎の最近の記事