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ホークス育成の尾形崇斗が台湾ウインターLでも奪三振の嵐!満塁登板も無失点

田尻耕太郎スポーツライター
評価はうなぎのぼり(筆者撮影)

 台湾で行われているウインターリーグで日本プロ野球の期待の若手が「紅」「白」に分かれて激突した。NPB紅(福岡ソフトバンク、埼玉西武、東北楽天、オリックス、東京ヤクルト)とNPB白(巨人、阪神、中日、横浜DeNA、千葉ロッテ)が26日、台中インターコンチネンタル球場で対戦した。

【11月26日 ウインターリーグ 台中】

NPB白 000003120 6

NPB紅 01003301× 8

<バッテリー>

【白】阿知羅(D)、コルデロ(DB)、田中優(G)、黒田(G)――石橋(D)、田中貴(G)

【紅】鈴木(E)、金久保(S)、日隈(S)、引地(E)、神戸(B)、尾形(H)――古賀(S)、斉藤(L)

<本塁打>

なし

<戦評>

 意地のぶつかり合いを感じる接戦となった。序盤は投手戦だった。NPB紅組は先発で発表されていた鈴木(E)が試合直前に回避して金久保(S)が緊急先発。それでも2回を無失点に抑えると、2番手の日隈ジュリアス(S)も3回2安打無失点と好投で続いた。一方のNPB白の先発を任された阿知羅(D)は5回4失点ながら自責は1点のみ。五回に味方の連続失策から失点を重ねた。

 中盤以降は点を取り合った。六回表、4点を追うNPB白が伊藤裕(DB)や島田(T)の適時打で3点を返した。だが、NPB紅はすかさずその裏に山野辺(L)が3点適時三塁打を放って突き放す。NPB白はなおも反撃して詰め寄るも、NPB紅は八回裏に宜保(B)が適時三塁打を放って貴重な1点を挙げて何とか逃げ切った。(了)

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尾形崇斗はただの剛腕ではない。考える投手

 八回表、1点差に詰め寄られてなお1アウト満塁の大ピンチ。

 NPB紅の藤本博史監督は勝負手に打って出た。「ピッチャー、尾形」。最終回を任せるつもりだった“守護神”を前倒しで投入した。

 10月の「みやざきフェニックスリーグ」で6試合に登板して、驚異の奪三振率「20.25」を記録し、その後の秋季キャンプでは工藤公康監督も一目置いた右腕。“宝の山”のホークス育成の中でも支配下枠に最も近いところにいるのが、背番号120の尾形崇斗だ。

 打球を前に飛ばされれば凡打でも同点とされる可能性がある。だが、このピンチで登板を告げられた尾形はこのように思ったという。

「よし来たと思いました。ファームの試合だと走者を置いてから投げることが少ない。僕は満塁とか絶体絶命の場面で投げたかったんです」

 何という強心臓だ。

「苦しい場面だったけど、僕はマイナスのことを一切考えていませんでしたから」

 積み上げてきた自信と経験が、心に宿っていた。

「俺の日本シリーズ」で見事抑えた

 ここで迎えた千葉ロッテの松田に対して全球直球勝負。2ボール2ストライクから見事空振り三振を奪ってみせた。2アウトとなって迎えたのは巨人の山下。高卒新人ながらイースタン・リーグで首位打者を獲得した若手である。「高校時代に対戦したことがある。今日一番対戦したかった相手。巨人ですしね」。宮崎秋季キャンプ中の巨人との練習試合を体調不良で登板回避になったことを今でも悔しがる。「俺の日本シリーズと思っていたのに!」。ここは慎重に初球カーブで入って、その後カウントを整える。「三振を取りたかったですけどね」。その思いは叶わなかったが、三ゴロに仕留めて見事ピンチを脱した。

 九回も続投して、1安打を許したが3つのアウトのうち2つを三振で奪った。

 台湾ウインターリーグではこれで計3試合に登板。許した走者はこの日の1安打のみ。3回2/3を投げて11アウト中、8個を三振で記録している。

昔気質、そこがいい

 帯同中の佐久本昌広一軍投手コーチは「褒めてあげてください」とニコニコ顔。「彼は努力を継続する力がある」と長所を挙げた。尾形は自ら「ちょっと昔気質かも」と笑う。「たとえば周りと一緒に走っても、他の人より1mでも長く走ろうといつも考えている。それが何かに繋がると信じています」。いや、そんな男でなければプロ野球では成功しない。

 また、この日はセットポジションの時にクローズスタンスに変えていた。「こっちのマウンドは硬い。以前のやり方だと体重移動がしづらくて。少し重心を上げています」。20歳の背番号3桁選手にしてその対応力。恐れ入るばかりだ。(了)

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リチャード、3安打2打点でヒーロー

インタビューに応じる砂川リチャード(筆者撮影)
インタビューに応じる砂川リチャード(筆者撮影)

 好調でここまで全試合で4番を打つホークス育成の砂川リチャード内野手がこの日も3打数3安打2打点と気を吐いた。これで通算打率は4割6分7厘まで跳ね上がり、打点も5となった。

 この試合ではすべてシングルヒットで期待の長打こそ出なかったが、鋭い打球を連発。「最近打っているのは変化球ばっかり」と照れたが、藤本博史監督は「今年の序盤は変化球でまったく打てなかったんや。成長しているよ」と好評価していた。

 試合後はヒーローインタビューに呼ばれた。(了)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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