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MVP打法の一歩先へ。ソフトバンク田城が阪神秋山撃ちで支配下アピール

田尻耕太郎スポーツライター
この試合3安打となるタイムリーを放った田城(筆者撮影)

【6月23日 ソフトバンク7-7阪神 久留米】

 再びバットから快音が戻ってきた。ソフトバンクの田城飛翔外野手が24日の阪神戦(久留米)で2号ソロ本塁打を含む3打数3安打。さらに2四球も選び全5打席で出塁した。

 第1打席に中前安打を放って気を良くすると、四回の先頭で迎えた第2打席で阪神秋山から右翼席へアーチを描いた。2年前に一軍で12勝を挙げ、今季はファームでリーグ最多7勝と実績ある好投手からの一発。「2年前のローテ? そうだったんですか?」ととぼけてみせたが、相当な自信になるはずだ。

一時はウエスタンで首位打者も

 試合としてもこの一発で2対6としたホークスは反撃を開始した。五回、第3打席の田城は中前タイムリーを放ち、これで1点差に。最終的に7対7の引き分けに持ち込む流れを作った。

「今日の打撃内容は良かったと思います」

 納得顔を浮かべる。これで4試合連続安打だ。

「あ、それは言っちゃダメですよ。気にしちゃうと止まっちゃう」

 この好調の兆しを見せるまで、6月は大不振に苦しんだ。6月1日~14日の期間は23打数2安打、打率.087しか打てなかった。

 あれだけ打てていたヒットが出なくなった。3・4月度はウエスタン月間MVPを獲得。一時は打率が3割5分を超えてリーグ首位打者に立つほどだった。しかし、二軍とはいえプロは甘くない。ファームでも好打者は研究をされて弱点をしつこく攻められる。田城は初球から積極的に打ちにいくタイプだ。「ミスショットが少なくなった」のが好成績の理由だったが、ならば相手バッテリーは早いカウントから勝負球のように厳しいところを突いてくる。ボール球に手を出して凡退するケースが増えていた。

「4月の好調な頃の打撃に戻すイメージはなかった。元に戻しても、自分に成長はない。意識をするポイントを変えました。新しいことをやっています。中身については言えませんけど。喋ったらまた打てなくなりそうだから(笑)」

3安打以上に価値ある2四球

 田城が喜んだのは3安打以上に、残る2打席で2つのフォアボールを選んだことだった。それまでの6月12試合の出場では1つも選べていなかった。

「課題としては、相手がどんな投手でも打てるように対応力を上げていきたい」

 今、目指すのはもちろん背番号135からの卒業だ。まもなく今季登録期限の7月を迎える。ソフトバンクでそれを叶えるには「一軍で勝負できる選手」になることが条件だ。1打席の中で勝負できる力は身につけた。あとは安定してその力を発揮できるかどうか。ファームで打率3割は一つの目安となるだろう。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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