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「美爆音はムリなので美音で」ホークスの地域密着。地元高校との理想的な関係

田尻耕太郎スポーツライター
ホークス攻撃時に熱烈応援(筆者撮影)

高校野球風の応援でホークスを後押し

 プロ野球のスタジアムに高校野球風の応援が鳴り響いた。

 16日、ホークスファーム本拠地のタマホームスタジアム筑後で行われた2軍戦・ソフトバンク対広島に、球場から程近くにある福岡県立八女高校の全校生徒約700名が応援に訪れた。

 試合では同校の生徒が始球式や場内アナウンスを務めるなどし、さらに吹奏楽部27名による応援も実施された。普段のホークスの応援歌に倣うのではなく、高校野球風の応援を披露。「夏祭り」や「紅」、「狙いうち」、「タッチ」などお馴染みのメロディーが球場内に流れると、一般ファンからも自然と手拍子と選手コールが沸き起こっていた。

 先頃のセンバツ甲子園では習志野高校の応援が「美爆音」と称されて話題となった。八女高の吹奏楽部顧問は「ウチは人数が少ないので美爆音まではムリですね(笑)。なので美音を目指しています」と苦笑いをしたが、応援を背にプレーをした選手たちは好評の声を上げた。高卒ルーキーの野村大樹は「早実のときは早大の応援歌に倣ったものが使われていて、J-POPとか高校野球っぽいものがなかったので、すごく新鮮でノリノリで打席に入れました。打てればよかったんですけど…(3打数無安打)」と話した。

 試合も背中を押された若鷹ナインが奮起して4対1で広島カープに勝利した。

ダルビッシュも「これいいな」とかつて絶賛

 この取り組みは今季で3年目を迎えている。初年度はやはりインパクトも大きく、大リーガーのダルビッシュ有が自身のSNSで「これいいな。」と呟いたことで多くのファンに広く知られた。ホークスはファーム本拠地の筑後市をはじめ周辺地域の「筑後七国」(八女市、柳川市、大川市、みやま市、大木町、広川町)とも連携協定を結んでおり、地域発展、密着などの流れの中で地元高校の新入生歓迎行事として全校応援が行われるようになった。16日からは「高校生応援ウィーク」と銘打ち、17日には八女工業高校、19日には山門高校の生徒たちも応援に訪れることになっている。

 当初の地域連携協定の項目の中にはこのような応援の取り組みについては明記がなかった。しかし、初年度のチャレンジが好評で以降も継続的に行われるようになった。高校生にとっても地元にプロ野球球団があるという誇りを感じ、自分たちより少しだけ上の年齢の選手たちが夢に向かって必死にプレーをして、日々練習などで努力をする姿をその目で見られられるのは大いにプラスになる。ホークスにとっては野球ファン離れが深刻化する中で、若い世代にプロ野球の魅力を直接知ってもらえる絶好の機会となっている。地域と球団がともにウィン―ウィンの関係を築けるこの取り組み。今後も長く続くことを願うばかりだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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