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ホークス有望株の田浦文丸、“武田塾”入門で「軽く投げてもボールが行く」

田尻耕太郎スポーツライター
ユニークなグッズを用いた練習に取り組む田浦。背後で武田が見守る

“三種の神器”を用いてフォーム固め

 普段笑わない19歳が、ニコニコと充実感たっぷりの表情でトレーニングに励んでいた。

 1月10日、ソフトバンクの武田翔太投手が福岡県内で自主トレを公開。「同じことを考え、目指すものも同じ」と昨季から多くの行動を共にする大竹耕太郎投手のほか、ソフトバンクからは松田遼馬投手、田浦文丸投手の姿もあった。

 今季が2年目となる田浦は「昨年のシーズン中から武田さんはよく話しかけてくれていて、その頃から自主トレをしようと決めていた」という。武田は「先輩後輩の垣根をなくして、友達感覚でお互いが思っていることや感じたことをコーチングし合えるのがいい」という方針をとっていることもあり、田浦も臆することなく輪の中で溶け込んでいた。

 昨季から武田と大竹が取り入れている「三種の神器」(武田いわく)である、手づくりの木箱と平均台、そして膝用ギプスを用いて、フォーム固めを行っていくのが球場練習ではメインになっている。捕手方向への無駄のない体重移動や踏み込みなどをその中で身につけていく。

「僕も体を縦に使うので、近い考え方だと思います。武田さんからは『やってみてダメならば変えればいい』と言ってもらえた」

 武田の言葉に勇気をもらい、懸命にチャレンジしている。ギプスを装着してキャッチボールを行ったのはこの日が初めてだったが、「難しいけどやってみます」とまた笑顔で話した。

台湾ウィンターLで防御率0点台

怪我をしたわけではなく、膝が折れて力が横に逃げるのを防ぐために装着している
怪我をしたわけではなく、膝が折れて力が横に逃げるのを防ぐために装着している

 秀岳館高校時代は甲子園の土を踏み、U18―日本代表として戦った国際舞台では13回2/3を投げて29奪三振をマークして注目を集めた。ドラフト5位での入団だったが、コーチ陣から実戦向きと評価が高く、5月には2軍公式戦のマウンドにも上がった。ただ、その後は故障もあり「悔しい一年だった」と振り返る。

 ただ、やはり非凡な左腕だ。昨年末までは台湾ウィンターリーグにウエスタン選抜の一員として参戦し、7試合(1先発)に登板、防御率0.56(0勝1敗)と素晴らしい成績を残して、自信を胸に帰国した。

「武田さんのところで練習して投げてみて、軽く投げてもボールが行くようになった感覚があります。まだフォームがバラバラだけど、きちんと投げた時には自分の狙いから大きく外れることはない。スピードもコントロールも作るのはフォームだと思っています。昨年は決め球のチェンジアップが抜けてしまうこともあった。それを無くしたい」

 宮崎に場所を変えての2次自主トレにも同行する。ソフトバンク若手左腕は大竹を筆頭に、笠谷俊介や古谷優人ら有望株揃いだが、「実戦向き」な田浦が高卒2年目にして頭一つ抜け出しても何ら不思議ではない。どんな姿になって春季キャンプで再会できるのか楽しみだ。

※文中写真は筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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