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広島カープへトレード移籍の曽根海成。「F球宴」でMVPにも輝いた万能強肩野手

田尻耕太郎スポーツライター
昨年8月30日、2軍戦でサヨナラ本塁打を放った時の曽根内野手(筆者撮影)

スターへの登竜門でMVP

 駆け込みトレードが成立した。

 7月末の補強期限まであと10日となった22日、ソフトバンクと広島の両球団から交換トレードが発表された。ソフトバンクから広島に移るのは曽根海成内野手。そして広島からソフトバンクに移籍するのは美間優槻内野手だ。

 23歳の曽根は、ソフトバンクの「十八番」ともいえる育成出身の有望選手。昨年開幕前に支配下登録されると、フレッシュオールスターではMVPを獲得。後半戦に入ると1軍デビューを果たしてスタメン抜擢も経験した。

今宮に似た身のこなし

今年のキャンプでは捕手練習も。野球センスの高さはピカイチ(筆者撮影)
今年のキャンプでは捕手練習も。野球センスの高さはピカイチ(筆者撮影)

 オフにはチームの先輩である今宮健太に弟子入りし、守備を磨いた。工藤監督からも「身のこなしが似ている」とそのセンスを高く評価されていた。特に強肩が魅力で、今宮も一目置くほどだ。京都国際高校時代は最後の夏を前に「もともとの正捕手が怪我をしたから」と急きょ捕手に指名された。二塁送球がとんでもなく早く、計ってみると1秒7台。プロでもトップクラスの数字を叩きだした。

 今年、ソフトバンクは春季キャンプの頃から捕手に離脱者が相次いだことで、首脳陣は曽根にマスクを被る準備もさせた。実際に3軍戦では捕手として出場もした。ファームとはいえ、プロレベルでも内野手、外野手、捕手も出来るというこの野球センスの高さは大いに武器となる。

曽根「チャンスと受け止めてます」

 広島移籍発表後、曽根はソフトバンクの広報を通じて「トレードを聞いた時は驚きと寂しさがありましたが、強い広島カープでプレーできるのはチャンスだと受け止めています。育成からここまで成長させてくれたホークスファンの皆様、1、2、3軍の監督・コーチ、選手、スタッフの方々には感謝の言葉しかありません。広島で活躍することが一番の恩返しだと思いますので、1軍で活躍できるように頑張ります。5年間、本当にありがとうございました」とコメントした。

 5年目の今季は1軍出場がなく、2軍公式戦も39試合の出場にとどまっていたが、打率.316を残している。課題だった打撃力にも成長の跡をうかがわせている。

 新天地広島も内野手の競争は厳しい。二塁手には不動の菊池がおり、同じ右投げ左打ちの内野手を見ても田中、安部、西川と実力者ぞろい。くわ原や庄司もいる。それでも実力を評価されたからこそ、広島も獲得に乗り出したのは間違いない。“タナキク”コンビを脅かす存在となって、また再会できるのを楽しみにしている。

美間獲得のソフトバンク。チーム力の底上げを

 また、ソフトバンクが獲得した美間は、右のスラッガー候補で主に三塁を守っている。今季1軍でも30試合に出場。打率.139と振るわなかったが、まだこれから伸び盛りを迎える24歳だ。

 ベテラン松田の後継者として期待されるとともに、同じ右打ち内野手の茶谷や黒瀬らのカンフル剤となることも間違いなし。チーム力の底上げが課題のソフトバンクにとって、効果的な補強となったのではなかろうか。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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