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期限は7月末・・・。残り「1」枠を勝ちとるホークス育成選手は現れるか!?

田尻耕太郎スポーツライター
甲子園の春夏連覇左腕の島袋も現在は背番号3桁(筆者撮影)

育成選手は現在24名が在籍

 苦闘の前半戦が終わった。

 優勝候補の最右翼と目された福岡ソフトバンクホークスだったが、投打に故障者が続出し、さらには主力の不振などもあり球宴前までは76試合を戦い終えて39勝37敗。オリックスと並ぶ3位ターンとなんとかAクラスを確保はしたが、首位西武とのゲーム差はじわりと開き「6.5」での折り返しとなった。

 後半戦の巻き返しへ、戦力の整備を。今月6日には前マリナーズの左腕、アリエル・ミランダ投手の獲得へ基本合意に達したことを球団は発表した。

 この補強でソフトバンクの支配下登録選手は69名となった。上限まであと1枠。登録期限は7月31日までとなっている。

 せっかくの登録枠を活用しない手はないだろう。3軍制を導入しているソフトバンクには現在24名の育成選手がいる。背番号3桁から這い上がるべく日々鍛錬を積む若鷹のハングリー魂が、沈滞ムードも漂うチームの起爆剤となるかもしれない。

 現実的に候補と挙がる選手は2軍でプレーしている選手になる。

 今シーズン、2軍公式戦に出場した育成選手の成績、寸評を以下にまとめた。

【投手】

123伊藤祐介 9試合2勝1敗 4.50

16投球回で23奪三振は魅力。東浜巨と同期入団のドラフト2位左腕で潜在能力は確かだ。しかし、11四球は課題。

133大竹耕太郎 19試合 7勝0敗1セーブ 1.90

熊本・済々黌で甲子園に出場し、早稲田大学でも活躍したルーキー。上級生時は不振だったが、プロ入り後の体力強化などでボールの強さを取り戻した。7勝はウエスタン最多で、しかも無敗。6月度のファーム月間MVPにも輝いた。47.1回を投げて8四死球の制球力は魅力。一方で26奪三振。打たせて取るタイプの投手だ。

120尾形崇斗 4試合 1勝0敗 0・00

育成ドラフト1位の高卒新人。キャンプ時からキャッチボールを見た千賀滉大投手らが潜在能力の高さを評価していた。練習に対する意識も高い。6投球回で被安打2。

122川原弘之 16試合 2勝1敗1セーブ 2.60

故障に苦しんだ左腕がマウンドに帰ってきた。少し腕を下げてかつてほどの球速はないが、それでも140キロ後半はマーク。制球難に苦しむことも少なくなってきた。

143島袋洋奨 5試合 1勝0敗 4.91

極度の制球難に苦しんだのは過去の話。しかし、前半戦は故障もあって満足なアピールは出来ず、5月24日を最後に公式戦登板はなく3軍が主戦場となっている。

136中村晨 2試合 0勝1敗 5.40

3年目の長身右腕。7月4日の2軍戦では初先発マウンドに立つなど成長著しいが、即戦力よりこれからの将来性に期待。

129野澤佑斗 23試合 2勝1敗1-セーブ 2.49

育成枠の中では実績ナンバーワン。昨季は42試合に登板して防御率1.02を残した。本人いわく「汚い真っ直ぐ」のクセ球が武器。しかし、25.1回で20四死球(死球5)と制球力には課題が残る。

134長谷川宙輝 11試合 1勝2敗 5.71

今春のキャンプでA組に昇格し、1軍オープン戦にも登板した有望株。150キロ級の直球を武器とする左腕で能力の高さは光るが、勝負球の精度に課題あり。スケールの大きな投手に育て上げるにはもう少し時間が必要か。

137渡辺健史 11試合 1勝0敗 2.70

着実に力をつけている3年目左腕。入来3軍投手コーチはチェンジアップの良さを高く評価している。23.1回で5奪三振。打たせて取るタイプの軟投派。

140渡邉雄大 7試合 0勝0敗1セーブ 2.70 6.2回 9三振

9月に27歳になるオールドルーキー。横手左腕という特徴を生かしてシーズン序盤はリリーフで活躍も、その後リハビリ組へ行ったのが勿体ない。6.2回で9奪三振の奪三振率は魅力。

【野手】

144コラス 10試合 .240(25-6)1本塁打 4打点 0盗塁 出塁率.240

キューバから来日2年目の大砲候補。入団時は二刀流で「キューバの大谷」とも評されたが、今季は野手一本で勝負をしている。打球の飛距離はとてつもない。

124幸山一大 7試合 .167(6-1)0本塁打 0打点 0盗塁 出塁率.375

大谷翔平に顔がそっくりな身長190cmの大型外野手。長打力でアピールしたい選手。2軍公式戦で結果が欲しい。

121周東佑京 60試合 .257(148-38)0本塁打 12打点 14盗塁 出塁率.302

平凡な内野ゴロを驚きの俊足で安打にして、大いに話題となった。大学時代にはリーグ戦70試合強(本人談)で通算40盗塁を決めた。内外野を守れる守備力も魅力たっぷり。

135田城飛翔 1試合 .000(0-0) 0本塁打 0打点 0盗塁

八戸学院光星高校から入団して2年目の左打ち外野手。特に打撃には高いセンスを感じる。3軍戦では1番を打つことが多い。

最多勝の大竹、完成度の川原、実績の野澤

 育成24選手中14名が今季ここまで2軍戦に出場した。

 成績で真っ先に目を引くのが大卒新人左腕の大竹耕太郎だ。ただ、彼は先発タイプ。メジャーやマイナーで先発経験豊富な左腕のミランダを補強したことで、やや可能性が低くなってしまったか。

 1軍チーム事情を考えれば、ブルペン陣強化は大きなテーマだ。特に左腕はモイネロの登板過多もあって不足している。川原弘之の存在は注目したい。肩や肘の故障に泣かされてきたが、今季はリハビリ組に一度も行くことなく登板を続けている。佐久本昌広2軍投手コーチは「投げること以外のフィールディングや牽制など、もともと1軍に上がった投手だからそのあたりもしっかり出来ている」と評価をしていた。

 変則左腕では渡邉雄大も面白い存在だが、4月7日を最後に公式戦登板がないのは苦しいところだ。スケール感の大きさでは長谷川宙輝も楽しみだが、1軍即戦力というよりはしっかり経験を積んだ方が大きく伸びるのではなかろうか。

 右腕ならば野澤佑斗が実績は抜群。いつ支配下枠に上がってもおかしくない成績を残し続けている。

 野手ならば周東佑京が一番手だ。球界きってのスピードスターになれる素材。内外野を守れるユーティティプレーヤーとして、首脳陣からも重宝がられる選手だ。チャンスはあるだろう。

 今季のタイムリミットは7月末。残り1枠に誰も滑り込めない可能性だってある。現実は厳しい。それでも、ファーム施設の筑後で彼らの必死な思いや執念を見ながらずっとそばで取材をしてきた。苦しむソフトバンクに確かな刺激を与えるはずと大いに期待している。

 はたして、誰のもとに「朗報」は届くのか、それとも…。日々、注目したい。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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