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ホークス5位新人、田浦文丸のチェンジアップが“魔球”と呼ばれるワケ=3軍戦で実戦デビュー

田尻耕太郎スポーツライター
プロ入り後初めて実戦に登板した田浦文丸(筆者撮影)

3月25日、福岡ソフトバンクホークスの3軍が練習試合で社会人の鮮ど市場ゴールデンラークスと対戦した。

【3月25日 3軍練習試合 タマスタ筑後】

鮮ど市場   000000000 0

ソフトバンク 41000000× 5

<バッテリー>

【GL】幸松、龍谷――菊池

【H】中村晨、田浦、尾形、川原、渡辺健――張本、樋越

<本塁打>

なし

育成ドラフト1位の尾形も実戦初登板(筆者撮影)
育成ドラフト1位の尾形も実戦初登板(筆者撮影)

<戦評>

ソフトバンクが、前日の福岡大学戦に続いて完封リレーで勝利した。先発の中村晨が5回1安打無失点。無四球と安定感が光った。その後、高卒ルーキーの田浦と尾形が実戦初登板でともに1回無失点。4番手の川原は最速148キロをマーク。最後を締めた渡辺健の球にもキレがあった。

打線は初回に猛攻。1番田城の安打と2番周東の二塁打でチャンスを作ると、3番黒瀬の犠牲フライで先制。さらに相手守備の乱れや7番古澤のタイムリーで4点を挙げた。2回は黒瀬のタイムリー二塁打で追加点。田城は3安打2得点と活躍した。(了)

入来コーチがうなる「誰も真似できない」

田浦はワインドアップ投法。高卒新人にして早くも、下半身が安定している印象(筆者撮影)
田浦はワインドアップ投法。高卒新人にして早くも、下半身が安定している印象(筆者撮影)

 ドラフト5位新人の田浦文丸(秀岳館高校)が入団して初めて実戦で登板した。

 6回から2番手でマウンドへ。試合で投げるのは、高校侍ジャパンの一員として参加した昨年9月の18歳以下ワールドカップ以来だったが、「思ったほど緊張しなかった」とマウンドへ。1回を投げて1安打1四球を許したが、無失点で抑えた。

「力んでしまって無駄なフォアボールを与えてしまったことが反省点です」と試合後の表情は冴えなかったが、投球内容は高卒“デビュー戦”とは思えないほど魅力あるものだった。直球は最速145キロを計測したこと以上に、142、3キロを安定して出せたことが収穫。変化球でも落ち着いてストライクを取っていた。

「実戦向き」と好評価

 ところで、田浦の代名詞といえばチェンジアップだ。それを武器にU18ワールドカップでは全9試合中の6試合でマウンドを託され、海外の強打者たちから次々と三振を奪った。13回2/3を投げて29奪三振。勝負球のチェンジアップは“魔球”と称された。

 入来祐作3軍投手コーチは「彼は実戦向き。やはり変化球でストライクを取れるし、投手としての土台が出来ている」としたうえで、チェンジアップについては「特殊球。他の投手には真似のできない彼だけのボール」と称賛した。ストレートが140キロ台の投手ならば、通常のチェンジアップは130キロ前後というのが相場だ。しかし、田浦のチェンジアップは100キロ台。40キロほどのスピード差があるという。「スローカーブ様なスピード。さすがに打者が我慢できないです」。

チェンジアップを投げないワケとは

 ただ、この初登板で田浦は、そのチェンジアップを1球しか投げなかった。数日前にシート打撃に登板した際にもチェンジアップはほとんど投げていなかった。なぜ、封印しているのか?

「高校よりもプロはストライクゾーンが狭い。自分の中でそれを探っているところなので、あまり投げていません。ただ、僕の武器はチェンジアップ。その球で勝負していきたいと思っています」

 初マウンドを踏み、次なる目標について「3人で抑えること」と淡々と語った左腕。有望な若手サウスポーが多数いるホークスだが、案外早く上のレベルで投げていても不思議ではない投手だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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