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千葉ロッテ5位の有吉優樹は阪神安藤タイプ! 元鷹エース直伝の投球術

田尻耕太郎スポーツライター
一番左からロッテ5位の有吉、山内氏、谷川

厳しい環境に耐え、つかんだプロ入りの夢

先の記事でドラフト候補として紹介した九州三菱自動車の有吉優樹投手が、10月20日のドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから5位指名を受けた。九州三菱自動車野球部からのドラフト指名は01年の有銘兼久(近鉄3位)以来15年ぶりだった。

厳しい環境の中で己を高めてきた。ほとんどの社会人チームは午前中から昼過ぎまで仕事をして、午後の多くの時間を練習に充てる。しかも仕事は社内での簡単な事務職などが主だ。しかし、九州三菱自動車の選手たちは午前中の早い時間に練習を行い午後は出社。仕事も自動車の営業で外回りを行う。ほかの社員と大きくは変わらない業務をきっちり行っており、たとえば大会前日も遅い時間まで営業で駆け回ることも珍しくなかった。

プロに入るだけでなく、通用する投球術

苦労は人を成長させるスパイスだ。今年9月の日本選手権・九州最終予選でピッチングを見たが、走者を背負ったピンチの場面になっても表情一つ変えず、打者との間のとり方などの駆け引きでもあくまで優位に立つ姿は、野球人としての底の深さを見たような気がした。

そして先の記事で書いたとおり山内孝徳氏との出会いも大きかった。「プロに入るため。そしてプロでも通用するための練習、考え方などを、計画立ててずっと教えてきた」と山内氏。2年間続いた師弟関係だった。プロで通算100勝をマークし2軍コーチも務めた手腕はやはり大きく、マウンドさばきや配球の読みなど、有吉は社会人の水準以上のものを得ている。

また、今年は下半身の使い方がよくなり、フォームのバランスも格段に良くなった。「内角を強気に攻める」という投球スタイルもフォームが安定したことでコントロールが良くなったからこそ出来るワザだ。がっちりした体型。140キロ台中盤を常時投げるストレートとスライダーなどの持ち球。タイプで言えば阪神タイガースの安藤優也投手だ。大学と社会人を経てのプロ入りという点でも共通点がある。安藤のように先発でも中継ぎでも行けるだろう。

惜しまれる山内コーチ退任。残されたもう一人のプロ注目右腕は…

ところで、九州三菱自動車にはもう一人ドラフト候補がいた。同じく右腕の谷川昌希だ。140キロ台後半を常時投げ込む馬力が魅力。こちらも山内氏の指導の甲斐あって、投球術もメキメキ上達していた。山内氏も「谷川も(指名が)かかるはず。有吉よりも若い分だけ、高く評価するチームもあった」と語っていただけにまさかの指名漏れとなった。

九州三菱自動車では山内氏が契約満了にともない9月末をもってコーチを退任している。チームには谷川をはじめ山内氏の指導で伸び盛りの投手たちが多かっただけに、その点が残念で仕方がない。山内氏本人も無念の表情を浮かべていた。それでも谷川が、今後も夢をあきらめずに、来年の秋へ前進していくことを切に願うばかりだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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