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”平成のこんにゃく打法”で今宮健太が打撃開眼か――「守備の人」からの脱皮

田尻耕太郎スポーツライター
今季打率はまだ低いが、大いなる巻き返しに期待

後半戦11勝1敗の”独走”ホークスを牽引

5日に早くも優勝マジック「38」を点灯させたホークス。球宴明けの後半戦、11勝1敗、さらに交流戦明けでは25勝5敗と驚異的なペースで貯金を増やしまくるチームを引っ張っているのが今宮健太である。

今宮といえば守備。一方で、打撃ランキングを下から数えれば、今宮の名前はすぐに見つかる。だが、ここ最近のホークスは、今宮のバットが引っ張っているのだ。

8番打者がながら球宴明け打率.333、打点はチーム2位

5日のファイターズ戦(ヤフオクドーム)ではライトへ流し打って4号ホームランを放つなど3打数1安打2打点の活躍。後半戦の打撃成績は打率.333、2本塁打、10打点。打点は柳田悠岐に次いで2番目に多い。

強力打線が自慢のホークスだが、じつは主力選手のバットは湿りがち。以下が球宴明けの成績なのだが…。

内川聖一 .255(47-12)

李大浩  .179(39-7)

松田宣浩 .233(43-10)

中村晃  .163(43-7)

よりによって中軸バッターたちがこの低調ぶりである。本来ならば失速してもおかしくないチーム状況。もちろん投手陣の踏ん張りがあってこそだが、8番を打つ今宮の大健闘はチームを救っている。

新打法は「上半身の力を抜く」

この夏、今宮はバッティングを見直した。以前は引きつけて右方向へ打ち返すことを意識していたが、それでは差し込まれていた。今はミートポイントを前に置く打撃を心がけている。その結果、後半戦の本塁打2本はいずれも右方向への打球。投球に負けないスイングで打球が強くなっている。

また、今宮によれば「上半身の力を抜くこと」を強く意識しているという。「もともと僕は上半身が強い方で、打撃でも守備でも上半身の強さだけでプレーする傾向にありました」。

打撃フォームを改良。「バットを持つ手に力を入れない」ことがポイント。そのために、少し低い位置でぶらぶらとバットを動かすのだ。

バットと体をぶらぶら…といえば

かつてこんな選手がいた。近鉄バファローズで活躍し、近鉄と日本ハムで監督を務めた梨田昌孝氏。現役時代の打撃フォームは特徴的だった。全身の力を抜くように、柔らかく体を動かしながらタイミングを取る。「こんにゃく打法」と呼ばれていた。梨田氏は捕手ながら通算113本塁打の実績を残した。

今宮の場合はここまで極端ではないにせよ、この脱力打法によってこれまでにない打撃の成果を残し始めている。

明豊高校時代には通算62本塁打をマークした強打者だった。打撃にも期待する声は大きい。もちろん“守備職人”の魅力を残しつつ、野球選手としてさらに上のステージへ大きく飛躍するチャンスを迎えている。

※成績は8月5日まで

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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