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38,561人のうち28,450人が女性ファン! 「タカガールデー」に込められたもう一つのメッセージ

田尻耕太郎スポーツライター

ピンク一色に染まったドーム

巷では「カープ女子」という言葉をよく耳にするようになったが、5月11日のヤフオクドームはホークス女子ならぬ「タカガールデー」で大いに盛り上がった。当日のソフトバンク×西武の女性来場者全員に「ピンクユニフォーム」が配布され、超満員となったヤフオクドームのスタンドはピンク一色に染まった。当日の入場者数は定員いっぱいの38,561人だったが、そのうち女性ファンが28,450人というから驚きの数字である。

当日は「女性が喜ぶイベント」をテーマに、始球式にモデルの益若つばささんが登場して、試合後にはグラウンドでトークショー(限定チケット購入者のみ)も行うなど大盛況。名物のジェット風船や勝利の花火もピンク一色とする力の入れようだった。

ピンクで染まったヤフオクドーム
ピンクで染まったヤフオクドーム
当日の試合で使われたベースとネクストバッターズサークル
当日の試合で使われたベースとネクストバッターズサークル

「ピンクリボン運動」に関心を

そして、一塁から三塁までのベースをはじめ、ネクストバッターズサークルやマウンドのチームマーク、スコアボードもピンク色に変えられた。ただ、これらには女性ファンに喜んでもらう目的とは別に、もう一つの大切なメッセージが含まれていたのだ。

ベースやネクストバッターズサークルにはリボンの模様が描かれている。ソフトバンクでは、この時期の女性向けイベント時に合わせて、乳がんの撲滅、検診の早期受診を啓発する「ピンクリボン運動」にちなんだ取り組みを行っているのだ。

試合開始の2時間前にはスタンド入口のコンコースで、鳥越裕介コーチ、内川聖一選手、中田賢一投手の3名がピンクリボン運動のチラシをファンに直接手渡しした。鳥越コーチは2年連続での参加。じつは、鳥越コーチは2008年に夫人を乳がんのために亡くしている。普段は明るいキャラクターと大きな声でムードメーカーとなる鳥越コーチも、この日はいつもと違った表情を見せていた。

「毎年、涙が出そうになる。チラシを手渡しすることで、目を通してくれるはずだと思っています。いつ、自分の周りに起きるか分からないこと。(病気になった)本人もきついけど、周りもきついですから」と神妙な顔つきで話した。昨年も「1人でも多くの人に助かってほしい。あんな思いをするのは、俺だけでいい」と語っていた。

社会的メッセージを発信するのもプロ野球の使命だし、一度に数万人規模を動員することが出来るスポーツの力でもある。また、この記事を通して、1人でも多くの方が関心を持っていただければ、筆者としても嬉しく思う。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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